ユーザーの利便性向上と加盟店の販促サポートを追求

(株)ぐるなび

「レストランの名サポーター」として、日本最大級の飲食店情報検索サイトを運営する(株)ぐるなび。ケータイでの検索サービスは、端末の進化と歩を同じくして、 開発を進めてきた。2005年1月には、ケータイの高機能化と活用可能性を見据え、提供コンテンツを刷新。ユーザーと加盟店双方とのリレーション強化に注力している。

端末の機能向上と歩調をあわせコンテンツを充実、利便性を追求

 「レストランの名サポーター」として、日本最大級の飲食店情報検索サイトを運営する(株)ぐるなび。市場規模が25兆~26兆円と言われる飲食産業において、ユーザーと飲食店双方のニーズを満たすビジネスモデルは多くの支持を得、追随他社を常にリードしている。現在の掲載店舗は、全国4万3,000店。本社を含め全国に9つの営業所を配置し、加盟店の維持・拡大に努めている。
 1996年に運営を開始した同社のWebサイトは、現在、月間で約3億8,000万PV(閲覧回数)に達する。ケータイサイトでの検索はPCで提供するサービスの付加サービスといった位置付けで、1999年、iモードのサービス開始と同時期に立ち上げた。当初は、Webサイトと比べて情報量が少なかったのでアクセス数は少なかった。アクセス数が急増しだしたのは、2001年7月にiモードの「iエリア」サービスを開始したころから。「この近くのお店を」とエリアで絞り込む探し方がケータイの特性と合致し、アクセスがほぼ倍増した。また2004年末にはフリーワード検索を開始、トップぺージに希望のキーワードを入れれば該当の店舗が多数表示されるようになった。検索の階層を浅くしたことで全体的に見られる店舗数が増えた結果、アクセス数が大幅に伸びた。
 出先で使われるというシチュエーションを考えると『いまここ』で使えなければならない。このニーズに応えるサービスを、という発想ではあるものの、ユーザーサイドの利便性を追求する場合、ケータイ端末の機能と通信料という足枷が常に存在する。より使いやすいサイト開発は、端末の進化に歩調を合わせざるを得なかったと日野氏は言う。
 例えば、キャリアによっては内部が複雑な機種があり、開発に手間や費用がかかるために、サービスを提供できずにいたケースがある。また、通信料がユーザー負担である点を考慮すると、情報量の多さが逆効果になってしまう。
 それらのジレンマが高機能ケータイの登場で解消されつつある。2005年1月のリニューアルでは、端末のハイスペック化(容量増加)に伴う情報の質や量の充実を図った。「それまでは、いかにパケット代を押さえ、古い端末でも表示できる容量にするかを第一に考え、例えば黒一色の文字情報のみ、というようにかなり表現上の制限をかけるかたちでサービスを提供していました。最近は、さすがにほとんどの方がハイスペックな端末でアクセスしてきているので、今回のリニューアルでは、画面の見せ方を工夫しています。色のポイントをつけることでより見やすく探しやすい画面にし、同時に、駐車場があるかないか、使えるクレジットカードは何か、また店舗側のPRなどの情報を充実させています。また、引き続き、ケータイ専用の割引クーポンサービスを開始しました」(日野氏)
 今までは、PC主体で展開するサービスをいかにケータイに落とし込むかが課題だった。常々言われていたのは、ケータイ画面では、店名や住所といった少ない情報だけでなかなか店の比較検討ができないということだ。そこで同社では、画面で店内の様子やメニューがわかるように、情報量を充実。現在は、NTTドコモの504シリーズ以降使われているQVGAの液晶で、クリアな画像による情報提供も可能になった。
 ケータイからのアクセス状況は、都市部より郊外、地方で活発な傾向がある。都市部では、PCによる利用が多く、ケータイの利用は少ない。それでも加盟店側に、徐々にではあるが、ケータイから検索して来店する客の割合が増えている、という認識が広がりつつある。

加盟店を2段階の料金設定で会員化 販促サポートによりリレーション強化を図る

 同社では、今後予測される高機能ケータイの普及、パケット代の低額化、そしてユーザーの利用頻度増大や加盟店の満足度向上という意味でも、ケータイのサービス開発へ投資し、コンテンツのさらなる充実を図る。
 こうした投資は、自らの広告告知媒体としての価値や加盟店との関係に少なからぬ変化をもたらす。
 同社では、2004年10月から加盟店に会員制サービスを導入した。これまで月1万円だった加盟金額を改訂し、加盟店を加盟金額により年間60万円の「正会員」と12万円の「ビギナー会員」の2段階に分け、ビギナー会員にはアクセス数の上限を月3,000PVと設定した。正会員になれば、特集コーナーなどで取り上げられる機会が増え、集客効果が期待できる。一方で加盟店にとっては、これまでの5倍の料金負担に充分に見合う集客につながるかどうかが懸案事項となっていた。
 同社では、こうした加盟店に対し、プラスαの紹介の切り口を豊富に用意してこれに応えている。具体的には、レストラン・ウェディングや2次会のパーティ用、接待需要を狙う高級店に対しては秘書の方限定の会員制サービス「ぐるなび こちら秘書室!」、加えて月約40本の特集企画など、加盟店がPRしたいタイミングでいつでも参加できるよう、コーナーの充実を図っている。
 同社ではまた、加盟店の販促活動をさらに強化。用途に合わせ、オプション料金で会員のケータイにアプローチするサポート体制を用意している。例えば、「月形半平太メール」。これは、登録した住所の雨降り始め予測時刻の2、3時間前にメールで配信するサービスだ。雨の日に割引きになるクーポンなど、お得な情報もつけたメールを効果的に配信し、集客に一役買うというものだ。

ケータイならではのパーソナルな関係構築が課題

 同社では、パーソナライズ機能を充実させ、個々のユーザーに適した情報を配信していくサービスを模索中だ。
 2001年11月にスタートしたWebサイト版サービスの「myぐるなび」は、ユーザーが自分の行ったお店の評価や検索店舗の情報などを蓄積し、個人のデータを持てるサービス。自宅や勤務先、よく行く場所などを登録すると、その周辺の飲食店が検索できる。サービス拡充と足並みを揃えて、ケータイ独自のユーザーも育っている。「ケータイのサービスは、個人にまで落とし込むことが課題」と日野氏が語るように、ケータイユーザーに対して、独自性の高い最適なタイミングでのサービスをさらに充実させ、利用機会を高める環境を整備することで、加盟店の販促を強力にサポートしていく構えだ。

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ケータイ版ぐるなびのサイト。見やすい画面でさまざまな角度から検索しやすいつくりになっている


月刊『アイ・エム・プレス』2005年3月号の記事