1997年11月、インターネットによる航空券の予約サービスがスタート。それ以来、ネットでの予約取扱高は右肩上がりで急成長している。現在では、ネットからの予約・購入が全体の40%を超えるほどだ。また今年12月1日、羽田空港新ターミナル移転を機に「スマートeサービス」を開始。これにより、インターネット上のサービスがさらに充実する。
ネットからの予約・購入が全体の40%を超える
全日本空輸(株)がWebサイト「ANA SKY WEB」を立ち上げたのは、1995年10月。インターネットによる航空券の予約サービスをスタートさせたのが、1997年11月になる。ちなみに競合会社である、(株)日本航空はWebサイトを立ち上げたのが1995年6月、予約サービスは1996年7月だった。
そして、全日空が携帯電話による予約サービスを開始したのは、NTTドコモがiモードのサービスをスタートさせた1999年。公式コンテンツ・プロバイダーとして参画して以来、アクセス数はトップを維持している。
Webサイトを立ち上げた当時は、各航空路線の運賃やキャンペーンなどの情報をはじめ、壁紙などのエンタテインメント関連のコンテンツが中心だった。その後、インターネットが爆発的に普及したことに伴い、同社はネットによる航空券の予約サービスに踏み切った。
予約サービスをスタートさせた当初は、月間1,000万円の予約取扱高だった。それから2000年までは毎年目標値が1ケタずつ上がっていったという。同社営業推進本部チャネル企画部eコマースグループ主席部員の大崎知之氏は、「最初は、新しいもの好きの方が多かったかもしれませんが、企業や個人の方々へインターネットが普及するのと同じようなカーブで、インターネットを介した取扱高も伸びていきました」と説明する。2001年度のインターネットによる取扱高は、国内線・国際線を合計して約800億円。2002年度の取扱高は1,300億円強、2003年度は1,800億円に上り、前年比で約4割伸びたという。そして、インターネットを介して航空券を予約し、購入するケースが全体の40%を超えるまでになっている。
マイレージクラブ会員を基盤にネットサービスを展開
同社の成功の要因は4つある。第一に、航空券のインターネット販売の適性である。つまり、物販と違い商品の事前見聞が不要であること。第二は、24時間変化する予約状況をリアルタイムに把握できること。第三は、リアルなサポート体制が整備されていること。例えば、予約はインターネットで行い、変更は予約センターで行うことができる。つまり、ネットとリアルのミックスでお客様へのサポートができることがメリットになっている。第四は、インターネット販売に着手したときには、すでに社内のインフラが整っていたこと。ひとつは、お客様からの在庫確認に耐えうる24時間の予約システムを構築していたこと。もうひとつは、現在1,000万人強の会員数を誇るマイレージクラブを組織していたこと。会員組織の基盤のうえに予約サービスを展開することができたのである。
これらに加えて、インターネット専用の運賃やインターネットからの購入に対するボーナス・マイルの付与といった経済的なメリットがあることで、インターネット予約が急増したと見ている。
ネット専用運賃は、2002年7月から「Web割」を導入して以来、現在は「ネットチケットレス割」を行っている。2004年12月1日~2005年3月31日までの搭乗分の航空券をインターネットで予約・購入すると、運賃の約3%割引のサービスを受けられる。また、マイレージクラブ会員であることが前提だが、インターネット予約で1往復100マイル(1区間50マイル)、チケットレスサービスによる支払いで1往復200マイル(1区間100マイル)が通常のフライトマイルに加えて加算されるサービスも行われている。
次に、インターネット予約の場合の発券までの流れを見てみよう。まずは、予約後瞬時に指定のメールアドレスに確認のメールが届く。これは航空券の変更やキャンセルを行った際も同様だ。料金の支払方法には、クレジットカードのほか、コンビニ払い(コンビニエンスストアにあるマルチメディア端末で払込票を発行、またはパソコンか携帯電話で決済番号を取得後、レジにて現金で支払う)、銀行口座や郵貯口座からの引き落としなど、さまざまなチケットレスサービスが用意されており、航空券は搭乗当日に空港で受け取るだけとなっている。
また、インターネットで予約した後、旅行代理店で航空券を購入したり、発券カウンターで購入するなど、オンラインとオフラインのミックスによる予約・購入の仕組みがある。こうした多様なサービスが利用客に受け入れられ、2年前にはインターネット予約が電話予約と逆転。今や航空券の予約・購入はインターネットが主流になってきているのである。
「スマートeサービス」の開始で携帯電話からチェックインが可能に
現在、同社のインターネットを介した航空券の予約・購入の中心顧客層は、大都市圏在住の30~40代の男性、かつマイレージクラブ会員。ビジネス目的の利用がほとんどだという。中には、100回以上利用している会員などもいるほどだ。
また同社のWebサイトのトップページビューは、1日平均60万~70万件で、そのうち空席確認が40万~50万件に上る。購買につながる割合は、10%程度とのことだ。
最近はパソコンからの予約だけでなく、携帯電話からの予約も増えてきていることから、同社では携帯電話向けのサービスに力を入れている。かつては物理的な制約から、航空券の予約のほか、運賃や出発時間など限定的な情報しか入れていなかったが、この10月、携帯サイトのリニューアルを機に、パソコンでできることはほとんど携帯電話でもできるようにした。例えば、パソコンではできていた座席選びを、携帯電話の画面上に「シートマップ」を表示することで可能にした。
また、携帯電話のメールアドレスを登録している乗客には、出発時間の変更が生じたときにメールで案内するサービスも行っている。
さらに今年12月1日、羽田空港新ターミナル移転を機に「スマートeサービス」を開始する。これは、これまで空港で行っていた搭乗手続きを、好きなときにパソコン・携帯電話からできるサービスだ。指定のメールアドレスに搭乗便の運行状況などの最新情報を配信。また、IC内臓携帯電話、または携帯画面の2次元バーコードを自動チェックイン機にかざすだけで、画面操作なしで瞬時に搭乗券を受け取ることもできる。
同社では、インターネットでの予約取扱高が伸びる中で、ビジネスはもちろんのこと、旅行目的の方々への情報提供にも注力していく。航空券の購入だけでなく、コミュニケーション・チャネルとしての役割が重要になるなど、多岐にわたるサービスが求められているようだ。
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