「コエドブルワリー」の愛称で知られるビールを製造している(株)協同商事。ドイツビールの製造にこだわり続けた結果、現在ではドイツ大使館御用達のビールを製造。多くの顧客の支持を集めている。あえて「楽天」のような大手ショッピングモールには加盟せず、「食」にこだわる消費者が集まるモールに加盟。オフィシャル・サイトの開設からまだ2年余りだが、すでに8割以上がリピーターだ。その背景を探ってみた。
ドイツ大使館御用達のビールを製造
1997年4月に「小江戸ブルワリー」を開設して以来、「コエドブルワリー」の愛称で知られるビールを製造している(株)協同商事(埼玉県川越市)。
同社のビールは、ドイツビールをモデルにしている。同社代表取締役副社長の朝霧重治氏は、「日本とは気候も違いますが、ドイツ人たちは大きなビールジョッキを抱えながら木陰で2時間近く、歓談しながらゆっくりとビールを飲んでいます。そいう文化を日本の人たちに紹介したかったのです」と、ドイツビール導入の経緯を語る。今日、食生活などを中心に注目されている「スロー・フード」「スロー・ライフ」という考え方に当時から着目していたそうだ。
同社が製造しているのは、地ビールではなく、ドイツビールであり、その専門メーカーとしての位置付けにあることを、お客様に説明している。原料となる麦芽やホップをドイツやオーストリアから直輸入。中規模の製造設備もドイツから直輸入している。
工場の規模は「準量産」という位置付け。「銀河高原ビール」と全国にある地ビールメーカーの中間に位置する。工場はビール職人が手作りで管理できる規模だが、瓶詰めや缶詰めラインは機械でも充填できる。
中でも、「ミッターバウアー・伝説のビール職人」は、ドイツ大使館御用達になっているほどだ。
同社がWebにオンライン・ショップを開設したのは2002年7月からと、まだ新しい。きっかけはお客様のニーズであった。これまで同社の商品は、三越の通販や地元川越のスーパーなどでしか販売していなかった。「販売努力が足りないところもあり、まだまだお客様にとって身近な商品とは言えない」(朝霧氏)ため、多くの顧客からぜひともインターネット通販を始めて欲しいという要望が寄せられたのだ。そこで同社は、ビール好きで毎日飲んでいる人のために、ケースごと購入した場合は送料を無料にするなど、近隣のスーパーなどでビール1本を買うのと変わらない条件を打ち出している。現在、同社のWebサイトを訪れて、ビールを購入する顧客のほとんどはリピーターとのことだ。
ショッピングモールも圧倒的な集客力を誇る「楽天」ではなく、こだわりの食をラインナップしている「うまいもんドットコム」(http://www.umai-mon.com/)に、2003年11月から加盟している。「食に対するこだわりの強いお客様に来店していただけることが、当社にとっても魅力的です」と、同サイトに加盟した理由を説明する。
顧客のほとんどがリピーターに
同社の取扱商品には、「ミッターバウアー・伝説のビール職人」「スーパー発泡酒No.2」「大麦エキス発泡酒元祖」「地ビールNo.1」の主力4製品を中心に、「ディンケル」「ヴァイツエン」「サツマイラガー」「グリーンティーラガー」「リンゴミュニッヒ」がある。
同社ではWebで購入した顧客のリストを蓄積しているが、「休眠顧客は少ない」(朝霧氏)というように、顧客のほとんどがリピーターである。リピーターの割合は約8割とのこと。「知り合いからいただいて美味しかったから」とWebを訪れたり、「ミッターバウアー・伝説のビール職人」「スーパー発泡酒No.2」「大麦エキス発泡酒元祖」「地ビールNo.1」の4種類が入っている「お試しセット」(缶24本、各6本)を購入し、その中から好きなビールを1種類選んで再購入するといったケースが多い。
国内において発泡酒が主流になりつつある今日、同社のビールは高額商品と言える。例えば、キリンビールの「一番絞り」(350ml)が198円で売られているのに対して、同社の「ミッターバウアー・伝説のビール職人」は210円。しかし大手国産ビールと比べて、約10%高い価格は「お客様の許容範囲であり、理想的な価格」(朝霧氏)だと同社は考えている。お客様が無理なく購入でき、同社ブランドの指名買いにつながる値段だと見ているのだ。
現在、三越などの通販や地元スーパーなど小売店への卸の販売比率のほうがまだまだ大きいが、ネットの売上高は着実に伸びており、その中でも決済方法の選択肢が多い「うまいもんドットコム」のサイトからの購入が、自社サイトを上回りつつあるという。
コエドブルワリーのwebサイトhttp://www.acity2001.co.jp/koedobrewery/
Webサイトは未開拓層の「きっかけ作り」の場
朝霧氏は、「コエドブルワリーのビールを飲んだことがある人と飲んだことがない人を比較した場合、飲んだことがない人のほうが圧倒的に多い」と語る。そして、Webサイトでインターネット通販を始めたことは、新規顧客開拓の「きっかけ作りになっている」(朝霧氏)と評価。さらに、その中からかなりの購入者がリピーターになっていることにも着目している。
店頭で試飲会などを行えば、販売量は確かに増える。しかし店舗では通常、ポスターを貼ったりのぼりを立てることはできず、商品そのものと値札でアピールすることができるだけ。同社は、制約が多い店頭販売に限界を感じていた。
その点、インターネットは情報提供に関してはほぼ無制限。「インターネットは情報を伝えるものとして、われわれにとって欠かせない」と朝霧氏が語るように、中小メーカーにとって、情報提供メディアとしてのインターネットの存在は大きい。そればかりでなく、情報を収集することもできる。例えば、WebサイトにBBSを設けることで、「美味しかった」「感動した」などの消費者の生の声を直に聞くことができるわけだ。
8割以上がリピーターという熱烈な顧客の支持を受けている同社ではあるが、まったく課題がないわけではない。「もっとWebサイトの情報量を増やしていくことでしょうか。まだ、どうしても疎かになりがちなのですが、サイトはこまめに運営・管理していくことが大切だと思います」と反省する。
同社はそもそも有機野菜の販売からスタートした会社。その利点を生かし、野菜のセットとビール、料理のレシピなどを一緒に販売するなど、新しい商品提案を行っていきたいと考えている。
「スロー・ビール」「スロー・ライフ」を提唱する同社。ドイツビールの専門メーカーとして、食にこだわる生活者をターゲットに、着実に購買層を増やしていくことだろう。
「大麦エキス発泡酒元祖」(350ml、1缶130円)