コンタクトセンターはビジネスセンター

NTTコミュニケーションズ(株)

通信で圧倒的なシェアを誇るNTTコミュニケーションズ(株)はこの4月、法人向けアウトバウンド専門のセンターであるVCNビジネスセンターを東京・後楽園に移転した。新しいロケーションで、どのような戦略を展開していくのだろうか。

どう法人顧客をケアしていくかを再考

 国内有数の通信会社であるNTTコミュニケーションズ(株)は国内電話サービス、国際電話サービス、インターネット接続、企業・ISP向けネットワーク、プラットフォーム構築、グローバルサービス等、さまざまな商品の販売、サービスの提供を行っている。
 今回取材したビジネスユーザ事業部は、同社の中で、法人(ビジネスユーザー)向けネットワーク・サービスの販売フロントの役割を担っている。
 同事業部が有する法人向けアウトバウンド・センター、VCN(バリュー・チェーン・ネットワーク)ビジネスセンターは、2000年2月に開設された。
 同センター発足のきっかけは、NTTの再編後、どう法人顧客をケアしていくかを再考したことによる。顧客は、それまではひとつの窓口に諸問題、サービスについての問い合わせをすることができたが、再編により問い合わせ先の窓口が不明確になってしまった。これに伴い、同社側としても、顧客ニーズの把握が難しくなるという問題を抱えた。
 そのような状況下、顧客ニーズを的確にとらえ、効率的な営業を実現する目的で設立されたのが、同センターなのだ。

VCNビジネスセンター

 同センターは2002年5月現在、およそ80名のスタッフで構成されている。同センターのミッションは以下の2つである。
 ひとつ目は、支店等のチャネルの支援機能。具体的には、ビジネスユーザーの総合コンタクト窓口となることで、リード情報の発掘・醸成と、フィールド部隊への引き継ぎを行うこと、支店、プロダクト主管の施策に連動したキャンペーンの実施などが挙げられる。
 もうひとつは、独立した販売チャネルとしての機能。この機能においては、ビジネスユーザー層のうち、首都圏ユーザーをアカウント。エージェント(オペレータ)、代理店を利用した効率的な販売活動を実践する。また、ビジネスユーザー層の拡大に向けて、積極的なネットワーク・サービスの拡販を行いながら、より密接なOne to Oneのリレーション構築を図る。
 立ち上げ当初、同センターの活動は、顧客のキーパーソン検索プログラム(FCP)の実施から始まった。
 これは簡単に言えば、顧客の中から、ネットワーク・サービスの見込客になりうるキーパーソンをアウトバウンドによって探し出すというもの。FCPの開始当初は、まだセンター立ち上げ後間もないということもあり、社員、エージェントとも手探りの状況であった。しかし、徐々にビジネスセンターとしてのアイデンティティーが確立してくるにつれ、その活動の幅は広がってきた。
 2000年7月からは、フィールド部隊と連携したハイブリッド営業手法のトライアルが開始された。これは同センターのエージェントが顧客へのアウトバウンドにより、顧客のニーズを聞き出し、それをフィールド部隊に引き継ぐというもの。ここでは、エージェントがかなりの部分まで顧客と話を詰めているため、引き継ぎ後の案件の成約率は極めて高かったという。
 同センターでは、フィールド部隊との連携に際して、自社開発の顧客データベース管理システム「VCIF(ヴァリアブル・カスタマー・インフォメーション・ファイル)」を導入している。これには顧客の基本情報、コンタクト履歴などが入力されており、地方のフィールド部隊を含めたビジネスユーザ事業部の関係者が自由にアクセスすることができる。これによりスムーズな顧客とのやりとりを実現しているわけだ。

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VCNビジネスセンター

ハイブリッド・ビジネス・プロジェクト

 2001年には、周知のように通信業界でいわゆる「マイライン戦争」が勃発した。ふたを開けてみれば同社の優勢は圧倒的なものであったが、この時期から同社ではマイライン・ユーザーの獲得プロジェクトと並行して、もうひとつのプロジェクトを開始した。それが、マイラインの次に注目されるであろうIP(インターネット・プロトコル)に特化した「ハイブリッド・ビジネス・プロジェクト」である。
 同プロジェクト下において、VCNビジネスセンターには2つのチームが作られた。継続して行われていたDMによるセールス・キャンペーンによって、IP商品の販売機会を創出する「OM(オポチュニティ・マネジメント)チーム」と、One to OneによるCRM活動の実践を行う「Rep(レプレゼンタティブ)チーム」である。
 同プロジェクトは2001年4月から同年12月まで続けられ、大きな成果を上げた(図表:ただしこの事例は、フィールド部隊には引き継がれずに、同センター自体で受注にこぎ着けた)。現在もこの延長線上の業務が実施されている。

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イコール・パートナーの拡充を図る

 以上のように、同センターは、営業支援、あるいは営業を積極的に推し進めており、まさにビジネスセンターとして機能している。
 今後の課題として、同社ビジネスユーザ事業部 営業推進部 VCNビジネスセンター所長である大木誠氏は、フィールド部隊との連携、および同センターが“イコール・パートナー”と呼ぶIP代理店との協業を挙げている。
 現在、同社では全国に支店・代理店網を構築しているが、日進月歩のIPの世界でムラのないサービスを提供したり、広い地域をカバーする代理店は限られており、案件を確実に引き継げるイコール・パートナーを増やすことが急務になっている。
 また、同センター内での課題としては、エージェントの育成、モチベーションの向上が挙げられる。
 こういった課題の解決に向けて、サービスごとの商品勉強会、顧客への提案力向上研修を行ったり、さまざまな賞を用意して優秀なエージェントを表彰するなどして、モチベーションの向上を図っている。


月刊『アイ・エム・プレス』2002年7月号の記事