ステップアップ・プログラムで顧客を鼓舞

住商オットー(株)

同社カタログのみで入手可能なブランド商品で差別化をはかる

 住友商事(株)と世界最大の通信販売グループである独・オットー・フェルザンド社の合弁会社として1986年9月に設立された住商オットー(株)。
 同社では「FOR YOU」、「〈APART・TOGETHER〉」といったファッション・カタログや、ホームグッズ・カタログ「HOME COLLECTION」など、年間を通じてライフシーンを彩る数多くのカタログを発行している。世界のオットー・グループ各社と共同企画するインターナショナル・ファッション、世界の有名デザイナーがデザインした同社カタログでのみ入手が可能なオリジナルのブランド商品などを武器に、同業他社との差別化をはかっている。また通信販売における重要ポイントである、受注から配送までのリードタイムの短縮にも万全を期しており、独自の需要予測システムを使うことで在庫状況を的確にコントロールすると同時に、コンピュータを駆使した迅速な物流システムを構築している。
 新規顧客開発にあたっては、専用カタログ「FOR YOU DIGEST」(年2回発行、総ページ数300ページを数える「FOR YOU」から68ページ分を抜粋したカタログ)、雑誌広告、新聞折込ちらしを中心に、一部書店ルートやホームページなどを活用している。
 同社では“日本女性の感性に響く、世界のトレンドをリアルタイムで届ける”ことをモットーにしており、30〜50代の女性が主な購買層である。

オットー・ステップアップ・プログラム

 同社の顧客サービスのポイントになっているのが、「オットー・ステップアップ・プログラム」。
 このプログラムは、優良顧客のみを対象にしたサービスではないが、前シーズン(1年を1〜6月と7〜12月の2シーズンに分割)の購入合計金額に応じて、次のシーズンのカタログ掲載商品がすべて割引になるシステムだ(図表1)。

オットー・ステップアップ・プログラム

 半年間のシーズン中の買上額が2万円以上ならば2%が、5万円以上ならば4%が次のシーズン中の買物の際に割り引かれる。さらに半年間の買上額が10万円以上の顧客を「ゴールド」、15万円以上の顧客を「プラチナ」に分け、それぞれのサービス内容に差をつけている。ゴールドとプラチナの会員には、優良顧客専用の注文受付フリーダイヤル・ナンバーと顧客番号が記載されたメンバーズ・カードが発行される。ゴールド会員は次のシーズン中の買物がすべて6%の割引になり、プラチナ会員は8%の割引になる。優良顧客専用の注文受付フリーダイヤルでは、注文受付のほか、在庫状況やお届け予定などの問い合わせに年中無休で対応している(午前9時〜午後9時)。
 またゴールドとプラチナの会員には、1シーズンを通して利用できる割り引きクーポン券が送付されるほか、あらかじめ誕生日を知らせておけば、誕生月にはプレゼントが送られる(ゴールド会員は1種類、プラチナ会員は数種の中から選択が可能)。

徹底した受注オペレータの教育・指導

 通販の場合、優良顧客の分類に関してはさまざまなケースがあり、一概にこの金額以上だから、購入頻度がこれくらいだから、また最終購入日がいつだからといった基準でははかれないという。その時々の政策により角度も基準も違うので、どこからが「優良顧客」なのかという線引きは難しいということだ。
 仮に半年間の買上額が10万円以上のゴールド会員・プラチナ会員を優良顧客とみなした場合、その割合は全顧客のおよそ1%、売上高は2ケタに届くか届かないかだという。これが「2対8(ニッパチ)の法則」に合致するかどうかは定かではないが、同社では前述のようにさまざまな基準で顧客を分類しており、別の基準から考えれば、この法則にほぼ合致する場合もあるということだ。
 同社では前述のように半年を1単位として事業を展開しており、これを基準にカタログの配布を検討している。しかし、カタログの配布をはじめ、何らかのコンタクトを取るにあたっては、最終購入日から5年以内の顧客を目安にしているということだ。
 顧客流出の兆候としては、購入金額の低下や、最終購入日からの一定期間の経過などが挙げられる。同社にとって顧客のランクを維持することは必須であり、加えてさらなるランクアップを促すことが命題である。
 顧客とのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが取れない通販において、顧客と直接接触するカスタマーサービスセンターは非常に重要な位置付けである。その対応が顧客の維持・ランクアップにも大きく関わるのは言うまでもない。そこで同社では受注オペレータの教育・指導を徹底しており、受注のみならず問い合わせやクレームにも的確で万全な対応ができる体制を整えている。

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「ゴールド会員」向けのパンフレット

双方にとっての“ステップアップ”

 前述のステップアップ・プログラムは、文字どおり“ステップアップ”のプログラムである。購入金額が上がれば、さらにサービスの充実したランクにステップアップすることができ、逆に購入金額が下がれば、ランクが下がる。
 ゴールドとプラチナに明らかなサービスの違いがあることは公然であり、パンフレット にも上のランクで受けられるサービスが紹介されている。ランクが上がれば、顧客はさらに充実した特典が受けられ、企業側の利益も上がるという、正に双方にとってのステップアップ・プログラムと言えよう。
 今後の課題は、「いかに独自性を打ち出していくか」。一般に取り扱い商品の差別化、価格面での差別化、サービスの差別化が取りざたされているが、同社では価格競争に踊らされるのではなく、商品のデザインや企画力の面での他社との差別化を考えている。シーズンを先取りするラインアップなども同社独自のものであるが、さらに今後もラインアップ拡充を図っていくということだ。
 また、おのおののランクにおけるサービスについても、より合理的で充実したものに進化させていきたいとしている。さらに、これからは20〜30代の若い層にアピールすることで、顧客の平均年齢を下げていく意向だ。
 通販において、顧客とのコミュニケーションは何よりも大切な部分であるが、同社ではあらゆる側面でのコミュニケーションを改善していきたいということだ。その最たるものがカタログの送付である。どの顧客にどういった頻度で送付するか、またカタログ自体をいかにわかりやすく充実したものにしていくかなどが重要になってくるが、そのためには顧客情報をいかにうまく活用していくかが鍵になる。そこで同社ではアクティブな顧客情報のさらなる有効活用を検討している。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年6月号の記事