決済、見積り、販売など取引手続きを支援するアプリケーションを満載
(株)日立製作所の「TWX-21」は、企業がネットワーク上で資材を調達できる、会員制の電子商取引所である。今年スタートのB to B Eコマースが多い中、これは97年10月から他に先駆けてオープン。ネットワークが単なる通信メディアではなく、ビジネス・メディアに変わりつつある点に注目し、取り引きの「場」を提供することを目的として構築された。
これは、取引業務上必要な手続きを全てネット上で行うための、様々な業務アプリケーションを備えていることが大きな特徴。例えば同社が87年から提供しているEDI(電子データ交換) サポートをはじめ、決済支援、見積り支援、販売支援、SCM (サプライ・チェーン・マネジメント)などのアプリケーションをラインナップ。「Trade Winds on Extranet-21 (21世紀のエクストラネット上に吹く貿易風)」という名前の由来通り、会員企業は日立製作所のエクストラネット上で、つまりはパソコンの画面上で、資材調達に伴う全ての業務手続きをスピーディに処理できるのだ。
現時点(2000年5月末)の会員企業は、受発注の全てをオンライン上で行う3,400社、オンラインとFAXで行う3,600社の合計7,000社を数える。業種は製造業が57%、却売業が29%、サービス業が8%、建設業が5%と、もっぱらメーカ一系が中心。企業規模では資本金1億円未満、従業員100人以下の、いわゆる中小企業が約半数を占める。従来のEDIサポートでは、利用企業は大企業が中心だったが、TWX-21で、ユーザーの間口が一気に広がった。
4日かかった発注手続きが、たったの半日に 受発注業務コストも大幅に削減
TWX-21最大のメリットは、やはりビジネス効率の向上だ。各企業が単独で資材調達のオンライン・システムを開拓すると、オンライン上に相手企業との取引システムを構築し、稼働させるまでには最低でもl年はかかる。TWX-21では、会員企業のひとつであるブラザー工業(株)を例に採れば、導入決定から開始まで、ほんの3ヶ月で済んでいる。費用も約1,000万円、取引先も2万円程度の月額使用料とパソコンだけで導入できた。
しかし本領を発揮するのは、やはり受発注作業だ。ブラザー工業(株)では、従来は発注作業が紙ベースだったため、発注書類の印刷、仕分け、部長による押印など、実際の発注までに4日間もかかっていたが、TWX-21を採用してからは全てが電子承認となったため、半日ほどに短縮された。取引先企業の受注業務にも貢献し、資材の納期遅延率が大幅に減少したという。コスト的にもペーパーレス化などにより2,000万円を削減できた。
取引の範囲を大きく広げられることもメリットだ。世界中に約20カ所の製造・販売拠点をもつ、スピーカーなど音響機器のOEMメーカ一、フォスター電機(株)もTWX-21を利用。日本、アジア、欧州、北米などの販売拠点が、得意先からの見込み情報・受注を入力すると、アジア、北米などの工場が納期を回答し、見込み情報が部品調達・生産・出荷指示などに連携する仕組みとなっている。つまりリアルタイムで得意先の情報や、回答納期、出荷状況を確認できるわけだ。従来は得意先の見込み情報に基づき、販売拠点のリスクで確定発注し、製造拠点では確定受注として生産していたために、過剰在庫などの原因となっていた。しかしTWX-21の採用後は、短納期に対応するとともに、より精度の高い生産計画を立てることが可能となり、コスト削減やリードタイム短縮、cs向上に結びついた。
もちろんこれらの事例には、複数企業間で支払い・請求データを多角相殺(ネッティング計算)し、振込依頼データを金融機関に伝送するネッティング支援や、発注企業と受注企業との間で見積もりの依頼や回答、交換ができる見積もり支援など、前述の業務アプリケーションが大いに役立っていることは言うまでもない。
会員はTWXー21上で自社ビジネスの展開も可能
これらの他にも、TWX-21上に電子店舗を開設し、電子カタログ情報を発信する「企業間モール販売支援」、すでに取引のある特約店や代理店の在庫情報の参照、発注登録、納期の回答など、一連の受注手配処理を行う「受注手配業務支援」も用意され、会員企業はお互いの情報を検索・確認することが可能。もちろんTWX-21を介してしかデータ交換はできないなどセキュリティ面も万全だ。さらに会員企業自らが、TWX-21のアプリケーションを利用して、他の会員を対象にサービス事業を展開できる「基盤提供サービス」まで揃える。会員のニーズを先読みした、実に懐の深いサービス展開だが、メリット追究はまだまだ終わらない。
そのひとつが提携事業。例えば日本興業銀行との提携による「CMSサービス」では、グループ・ファイナンスや資金運用代行などにより効率的なキャッシュ・マネジメントを実現する、日本興業銀行「ITss」システムを提供する。これにより、多数のグループ関連子会社をもつ親会社は余剰資金というメリットを手に入れることができる。また建設会社の(株)アークメディアと提携したのが「施工者選定支援サービス」。これまで複数の施行業者から合い見積もりを取ると、業者別に見積もり書のフォーマットが異なるため、比較するのに多大な時間と手聞がかかっていた。しかしこれは見積もり書はもちろん、積算書も全て統一フォーマットで、しかも画面上で扱えるため大幅な効率向上、コスト削減が可能だ。
ASP (アプリケーション・サービス・プロパイダ)事業も見逃せない。これはインターネットを通じて、必要な時に必要なアプリケーションを低コスト(レンタル方式)で入手できるASPサービス。目立では「Apinetland (アピネットランド)」で、NotesASPサービスを始めとした中小規模企業向けのサービスを提供している。また日立製作所の研究所で蓄積してきた技術ノウハウを活用し、製造業者に技術情報を有償で提供する「i-engineering(アイ-エンジニアリング)」もラインナップしている。まさに、業務効率アップを図るためのものなら何でも揃っているといった体制だ。
「TWX-21」のホームページ画面(URL : http://www_twx-21.hitachi.ne.jp/)
あらゆるユーザーのスキル・レベルを考慮し、専門のインハウス・コールセンターを設置
しかしこれだけ提供サービス、会員企業の業種が広範囲に渡ると、システムの利用法もある程度は複雑にならざるを得ない。加えて、どの企業にも高度なコンピュータ・スキルを備えた人材がいるとは限らない。その点でTWX-21はカスタマー・サポートもポイントとなってくるが、同社ではその一環として、TWX-21専門のインハウス・コールセンターを設置。電話を中心に、日々、会員の疑問にきめ細かく対応している。
また最近はハイタッチなコミュニケーションが重視されている点も鑑み、全国各地区で「会員の集い」を適宜実施しはじめるなど、コミュニティ的なカスタマーサポートを心がけている。
「Eコマースのメリットは、時間、距離を超えて取り引きできること。そして従来なら得られなかった情報も手に入ることです。しかし、大切なのは効率ばかりではありません。昔からの商習慣、Face to Faceの関係まで壊してはいけないのです」と企業間EC本部 EC開発部部長 中島洋氏は語る。機能などのハード面と、信頼関係などのソフト面の両立こそが、今後のEコマースの発展を支えるポイントかもしれない。
日本のB to B Eコマースのパイオニアとして、今や国内最大の規模を誇るTWX-21。今後もデータウェアサービスの提供など、サービスの拡大を計りつつ、グローパル、かつきめ細かな事業を展開していく。