音声認識システムにより業務効率化を推進

ソニー(株)

95%の音声認識率

 ソニー(株)は1946年設立。今や同社は世界のトップ企業のひとつとして揺るぎない地歩を確立した。近年はインターネット関連のネットワーク・ビジネスを積極的に展開。e-コマースの先進的企業として抜き差しならない存在となっている。また同社は2月1日、同社関連の販売会社、ソニーマーケティングと折半出資で「ソニースタイルドットコム・ジャパン」を設立。同日に立ち上げたサイトを通じて、パソコンやAV(音響・映像)機器などのネット直販事業にも乗り出している。
 2000年3月期の売上高(連結)は6兆5,000億円、経常利益は2,200億円(同)に達すると予想される。マルチメディア総合研究所の調べによると、1999年の国内パソコンの出荷実績では、ソニーは全体の4.7%と6位。また、同研究所が行った東京、大阪、名古屋の日本3大電気街での1999年のパソコン販売状況の調査によると、ソニーは15.4%と、NECに次ぎ2位。同社は出荷台数の絞り込みによって品薄状態を作ることで価格維持を図っており、シェア以上に人気は高いと言われる。
 同社は、VAIOのカスタマー・サポート・センターとして「VAIOカスタマーリンク」を1997年7月に開設。運営は同社インフォメーションテクノロジーカンパニーが担当し、VAIOの使い方のサポート、修理対応(直接に集荷・配送)、そしてインターネットを通じたテクニカル・サポートを行っている。
 VAIOカスタマーリンクでは以前、サポート対象製品をデスクトップパソコンやノートパソコンなど6種類に分け、顧客が電話機のボタン入力でカテゴリーを選ぶ仕組みを採っていた。このやり方ではオペレータに各製品カテゴリー内の全機種についての知識が必要となるが、最近、新製品の発売間隔が短くなってきたことから、カテゴリー内の全機種にわたる知識の修得に時間を要する。
 そこで同社は1999年10月、オムロンと米ニュアンス・コミュニケーションズ社が共同開発したアプリケーション・ソフトを基に音声認識システムを導入。顧客が自動音声による案内に従い、サポート対象製品の型名を発音すると、音声認識システムによって特定され、その製品に精通した専門のオペレータへ転送する仕組みにした。
 こうして顧客のサポート対象機種の選択肢を機種別にし、コールを各機種専門のオペレータに割り振ることで、顧客の問い合わせに即答できるようになった。
 VAIOカスタマーリンクにおける具体的なオペレーションの流れは次の通りだ。
 まず電話をかけると、質問内容の種類(技術的な質問か修理依頼か)を電話機のボタン入力で選択するよう自動音声が案内。ここで修理依頼を選ぶと、①新規の修理依頼、②依頼済み、③修理完了予定日などの確認──の3項目から選ぶよう案内される。
 技術的な質問、または新規の修理依頼については、顧客登録が済んでいる場合は、発信者番号通知やカスタマーID、登録情報から製品型名を特定し、製品型名の確認を「はい/いいえ」の発声で答えるよう自動音声で指示。ここで製品型名が特定できなかったり未登録の場合は、製品型名を言ってもらい、音声認識で特定することになる。
 音声認識率は約95%。実用レベルとしては問題はないが、発音の仕方や回線状態などが原因で音声認識に2度失敗したときは、営業時間内の場合はオペレータへ自動的に転送することでフォローしている。

前向きなウェブ対応

 同センターのオペレータは約200名。電話受付は平日10〜20時、土日・祝日は10〜17時。シフト制で交替勤務をしている。着信1件当たりの通話時間は平均10分以内。音声認識システムの導入により、1件当たりの処理時間は20〜30%減少したという。
 VAIOカスタマーリンクの電話番号は、製品に同梱された案内文書や取扱説明書の裏表紙、または製品の「システムのプロパティ」の「サポート情報」で告知している。
 受付の混雑状況はVAIOのウェブサイトで把握することができる。一般受付と修理受付ごとに曜日別30分単位の混雑状況を「つながりやすい時間帯」「やや混みあっている時間帯」「混み合う時間帯」の3種類に分けて表示。顧客にコールの分散化を促すことで、待ち時間の縮小と応対業務の効率化を図っている。
 一般に、修理完了予定日が製品の状態や修理作業の進み具合によって早まったり遅くなったりするため、いらだちを覚える顧客も少なくない。そこで同社では、VAIOカスタマーリンクへ直接修理依頼した顧客を対象に、修理受付番号と電話番号を言えば、修理の進み具合によって修理品の預かり予定日や修理完了予定日、修理完了日を自動音声で回答するサービスも実施。顧客を心理面からもサポートしている。
 また、VAIOの登録カスタマーを対象に「VAIOカスタマーリンクテクニカルWebサポート」を実施。サイトのページ上の規定の受付フォーマットに問い合わせ内容、電話番号、電話回答のほしい時間帯などの必要事項を入力・送信すると、指定した時間帯に担当者が電話で回答する。電子メールによる受け取り配信はすでに行っており、回答についても検討中である。

高い応対スキルを維持

 インテリジェント・ルーティングについては、オペレータの応答スキルによる着信の振り分けは行っていない。
 顧客情報は、VAIOのオンラインサインアップとハガキの2つを通じて収集、顧客データベース(DB)に登録している。
 たとえばDBは、「VAIO Congress」などのイベント案内や、「VAIO NEWS LETTER」の郵送などで活用している。また、顧客の所有機種や嗜好に合わせた情報に素速くアクセスできる「MY VAIO ホームページ」や、顧客とのコミュニケーションのための電子メールニュース「VAIO E-news」などにより、顧客の利便性の向上を図っている。
 このほかウェブサイト上のサービスとして、OSのアップグレードや有償のオプション・サービスなどの連絡も行っている。
 オペレータの教育については、トーク・スキルに関する勉強会を定期的に開くとともに、新製品が発売されるごとにハードウェアとソフトウェアについての新しい知識の修得に向けた研修を行っている。また、VAIOはAV製品との接続を基本的な設計理念としていることから、AV製品の勉強会も実施している。
 同社ではコールセンターでのCRMの実践を通じて「SONYブランドの誇りと責任を推進し、さらなる高揚を目指したい」(太刀川卓・インフォメーションテクノロジーカンパニー VAIOカスタマーリンク統括部長)としている。


月刊『アイ・エム・プレス』2000年4月号の記事