データ・コミュニケーションに特化して独自の地位を構築

ブラック・ボックス・ジャパン(株) 

オリジナル製品を世界77カ国で販売

 BLACK BOXは1977年にアメリカ・ピッツバーグで誕生した、データ・コミュニケーションおよびコンピュータ周辺機器専門の通販企業。現在、世界13カ国に支社を置き、77カ国で通信販売を展開している。98年3月期のワールドワイドの総売上高は、2億7,982万1,000ドルで、前年比約21%増。オフィスのコンピュータ化の進展にともない、順調に業績を伸ばし続けている。
 ブラック・ボックス・ジャパン(株)の設立は1988年。年数回の頻度で『ブラック ボックス カタログ』を発行しており、現在配布されているものは第23号。A4判、480ページ以上におよぶカタログには、“繋ぐ”をキーワードとした、各種機器間を接続する8,000種類に上るツールが、「LAN」「モデム」「コンバータ」「スイッチ」など13カテゴリーに分かれて掲載されている。これらは顧客のニーズに基づき、アメリカで開発された製品群で、基本的に全世界共通のモデルである。さらに特殊な製品については、1個から特注に応じる。
 ちなみに同社は、アメリカの認定機関RABより国際品質規格「ISO 9002」の認証を取得している。これは生産工程や品質保証システムの管理が徹底されている企業に与えられるもので、日本の通販企業としてははじめての取得となった。

BLACK BOXのホームページ(http://www.blackbox.com.)

BLACK BOXのホームページ(http://www.blackbox.com.)

無料テクニカルサポートが充実

 同社のターゲットは、コンピュータを使用しているあらゆる企業。カタログは、それらの企業の情報システム担当者や、中長期にわたるシステムへの投資の決定権を握るマネジャーに宛てて送付される。ほかに、インターネットのホームページや、カタログ巻末に「新規購読者紹介」用のハガキを綴じ込んで、請求を募っている。優良顧客に対しては、カタログ送付後、アウトバウンド・テレマーケティングでより詳しい情報提供や利用促進を図る。
 業務に当たって同社が特に力を入れているのは、対面販売以上に充実した“サービス”。製品やカタログに関する問い合わせを受け付ける「なんでも相談ダイヤル」はもちろん、数十人の技術担当者による「無料テクニカルサポート」を設けて、購入前後の相談にきめ細かく対応している。インターネットのホームページにも、システム構築に関するQ&Aが掲載されている。さらには「購入したが、接続できない」といったトラブルを防止するために、最長2週間の「検証用機器無料貸し出しサービス」を実施。これらを通じて、十分に検討、納得してから、安心して商品を購入していただくのが同社の方針だ。
 注文は、FAXは24時間、電話は平日の午前9時から午後8時までの受け付け。午後5時30分までの受注分は、即日出荷する。ただし初回の注文は、登録が必要なため、FAXのみの受け付けとなる。ホームページ上でも一部製品の紹介を行っているが、セキュリティの問題などのためここでの受注は行わず、オーダーフォームを出力して、FAXで注文してもらうシステムを採っている。
 登録資格は、法人であること。かつ、与信をクリアすることが必要だ。支払いは銀行振込、クレジットカード、銀行からの自動引き落としが利用できる。3万円以上の購入の場合は送料は無料、それ以外は一律1,000円の負担となる。製品によっては、別途料金がかかるが、同社の社員による設置サービスも併せて提供している。同社ではこの設置サービスを、電話による問い合わせ受付とともに、ニーズを収集するための重要な顧客接点と考えている。
 さらに購入後のサービスとして、同社では5年間という長期の製品保証を実施している。データスイッチなど、一部の製品に関しては無期限保証のものもある。また、電話およびFAXはすべて東京1カ所で受け付けているが、カスタマーサービスに関してはアクセスポイントを大阪と福岡にも設置し、通話料金の負担減を図っている。

約8,000アイテムを掲載した『ブラックボックスカタログ』。データ・コミュニケーションに特化した、ほかにはないカタログとなっている

約8,000アイテムを掲載した『ブラックボックスカタログ』。
データ・コミュニケーションに特化した、ほかにはないカタログとなっている


業務を特化して満足度を追求

 これまで見てきたように、同社の強みは製品の信頼度に加えて、充実したサービスにある。企業にとって、同社の顧客となることは、データ・コミュニケーションの外部ブレーンを得ることにも等しいと言えるだろう。親密なコミュニケーションを継続することによって、同社にとっては、顧客がシステム拡張・変更を行うごとに確実な取り引きに結び付けられるというメリットが生まれているわけだ。
 コンピュータ技術は日進月歩の勢いで進歩している。オフィスのコンピュータ化もこれと足並みを揃えて急速に進展している。データ・コミュニケーションの分野で実績を培ってきた同社が、これを基盤として守備範囲を拡張し、顧客当たりの取扱高を増やすことも十分可能と考えられるが、同社にその意志はまったくない。業務を特化し、限られた分野のNO.1であり続けることによって、競争優位性を維持する構えである。
 奇しくも同社の理念は“接続性の追求”。ネットワーク関連製品で専門性を極める同社は、これによって顧客とのネットワークまでも、より強固にしようとしているのである。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年6月号の記事