日本のCRに先鞭

ジャスコ(株)

 日本の CR の先駆けとなったのが、ジャスコ(株)と花王(株)の取り組みである。アメリカのCRをウォルマートとP&Gがリードしたように、日本のそれも、日用雑貨における ECR からはじまったのである。
 両社が新しい取引形態をスタートさせたのは 1993 年 10 月。それまでジャスコ(株)では、集計した POS データに基づき、担当者が独自の EOS コードを用いて発注作業を行っていたが、花王製品に関してこの EOS コードの使用を取りやめ、JAN コードによる両社共通の商品マスターを構築。売り上げ、納品から、売り掛け・買い掛けデータまでを一括処理する仕組みを作り上げた。商品マスターのメンテナンスは花王(株)が担当する VMI(Vendor Managed Inventory)の形態である。
 ジャスコ(株)の本部では、店舗から上がってくる POS データを、1 日単位で花王(株)に EDI 送信。花王(株)ではこのデータと販売予測指数(変動係数)に基づいて適正な納品数量を算出、花王販社経由で各店に届ける。販売予測指数は、ジャスコ(株)が地域特性、過去の売上実績、プロモーション計画などの条件をかけ合わせて店舗ごと、週ごとに設定、あらかじめ花王(株)のホストコンピュータに登録しておく。
 当初はまず首都圏の大型店舗、北戸田店と駒岡店の 2 店でスタート、現在は全国約 250 店舗のうち206 店舗でこのシステムを稼働させている。
 このシステム導入によって不要になったものは、発注作業にかかる手間と時間ばかりではない。納品情報は前日に EDI で届けられるので、検品レスが実現。また、年間に 30 万枚以上発行していた発注・納品伝票、請求・支払伝票が一切要らなくなった。これによって削減できたコストは、年間約 1 億円に上るという。また、標準化された JAN コードを用いるため、ジャスコ(株)の EOS コードを花王(株)の自社コードに変換する必要がなくなり、ピッキングなどに関わるミスやトラブルが大幅に減少した。欠品がなくなり、顧客サービスの向上、売上拡大が実現したことは言うまでもない。
 両社はこれまで別々に持っていた棚割りシステムを連動させ、新「プラノグラム」を開発。花王以外の製品も含めたトイレタリーの棚割り作業の合理化にも取り組んでいる。
 またジャスコ(株)は、1995 年 7 月、ワコール(株)と組んで、インナーウェアのジャンルでも CR への取り組みをスタートさせている。
 ワコール(株)のウィングブランド事業本部が取り扱う商品、約 2,500 アイテムのうち、約 1,900 アイテムについて両社共通の商品マスターを構築。ジャスコがワコールに POS データを提供し、各店、アイテム別に定めた店頭在庫基準に合わせてワコールが商品を自動補充する仕組みだ。埼玉県、岐阜県などの地域ごとの代表店舗、8 店舗でスタート。今年度中には 50 店舗への導入を完了させる予定だ。
 これによって店頭の欠品率が大幅に減少、販売機会のロスを最小限にとどめることが可能になっており、今後はお客様へのサービス向上や、価格面でもメリットを出していきたいとしている。
 ジャスコ(株)では今後、カテゴリーごとに CR の具現化を図っていくという。取引先と連携をとりながら、最善のシステムを作り上げていきたい考えだ。

ジャスコと花王

月刊『アイ・エム・プレス』1997年6月号の記事