商品とともに信頼できる情報を

(株)バイス

商品と併せてソフトを提供

 “ベビーネンネ”のブランド名でベビー用品を製造・販売するキングベビー(株)(本社:大阪府箕面市)から、ベビー用品専門店「ワイズマミィ」と、育児に関する研究を行う「育児文化研究所」の 2 部門を引き継ぎ、 1996 年 5 月にスタートしたのが(株)バイスである。現在、店舗および研究所を、東京都港区、大阪府箕面市、名古屋市、仙台市の 4 カ所に構える。
 ワイズマミィの取扱商品は約 200 アイテム。そのうちおむつカバー、肌着、アウターウェア、マタニティ用インナーウェア、ベビー寝具など“ベビーネンネ”の製品が約 60%、残りの 40%は他社製のアウターウェアや輸入雑貨などだ。

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ワイズマミィの資料請求者に送る“ベビーネンネ”のカタログ

 「赤ちゃんのために本当に良いものを」と考えて作られた商品は、使い方やメンテナンスに細やかな気配りが必要。そこでワイズマミィでは、来店したお客様に対して、十分に時間をかけて、詳しく商品についての説明をする。この“指導販売”によって、納得してから商品をお買い求めいただくのが同店のポリシーだ。1 店舗当たりの購入客は月に延べ約 600 人。最多価格帯は 2,000 〜 3,000 円台と決して高くはないが、まとめ買いが多いため、平均客単価は 2 万 2,000 〜 2 万 5,000 円であるという。
 また同社では、顧客の便宜を図って通信販売も実施している。店舗ではまず必要最低限の品物をお買い上げいただき、「足りなくなったらお電話ください」と電話での追加注文を勧めている。同一商品、サイズ違いの商品などの購入には、通信販売を利用する顧客が多く、1 日平均約 10 件の申し込みがあるという。
 「商品と併せてソフトを提供する」(代表取締役 谷口洋氏)姿勢は、販売方法だけでなくセミナーというかたちでも具現化されている。同社の理念は、顧客に「良いマタニティライフ、良いお産、良い育児を実践してもらうこと」(谷口洋氏)。さまざまな情報があふれている中で、迷うことなく、プラス志向で出産・育児に取り組んでいくための、信頼できる情報、正しい知識の提供がその目的だ。
 ワイズマミィでは、顧客のために毎月数回、無料のマタニティセミナーを開催。赤ちゃんの脳とからだの成長や母乳についての知識、おむつのあて方や着替えのしかたを約 2 時間かけて指導する。定員は会場によって 20 〜 30 人で、参加には電話予約が必要だ。

Happy Heartful World

 育児文化研究所では、これとは別に有料のセミナー「マタニティスクール」を開催している。1 日約 2 時間 30 分、全 4 日間のコースで、「赤ちゃんの脳・心・からだの発達と胎教」「温めて安産・産前産後の過ごし方アドバイス」「ベビー衣料の着せ方・選び方実習」「母乳指導・心とからだ」のそれぞれについて、各分野の専門家が指導する。受講料は 1 万 2,000 円。店舗ごとに年 3 〜 12 回、毎回 40 〜 120 人を集めて実施し、総受講者は年に 7,000 人以上を数える。

雑誌広告で新規顧客を開拓

 新規顧客開拓のために同社が活用しているのは、現在のところ雑誌広告のみ。『たまごクラブ』と『バルーン』の 2 誌に毎月、ワイズマミィと育児文化研究所の両方を紹介する広告を見開きで出稿している。広告にはワイズマミィと育児文化研究所、それぞれに資料請求券を付けて資料請求者を募り、ワイズマミィへの資料請求者には店舗の案内と商品カタログを、育児文化研究所の場合はセミナー案内のパンフレットと日程表を送っている。2 誌を合わせて月に 100 件程度のレスポンスがあるという。資料請求券を 2 つに分けているのは「セミナーを受講したら商品を購入しなければならないのではないか、などといった誤解を避けるため」(谷口氏)。実際には同時に両方の資料請求をする人も多い。
 出産までは仕事を続ける女性も多く、日中の在宅率が低いという理由などから、資料請求者に対するアウトバウンド・テレマーケティングは行っていないが、送付する資料には“いつでも気軽にお問い合わせください”という旨のメッセージを添え、インバウンドを促進している。
 資料請求者のうち、実際に商品購入、またはセミナー受講に至るのは約 30%。ワイズマミィと育児文化研究所の顧客は相当数が重複しているが、最初の接点がどちらであったかをみると、およそ 5:5 の割合になっているという。

顧客サークル「楽しい育児クラブ」

 同社ではワイズマミィの顧客やセミナーの卒業者を対象に、「楽しい育児クラブ」を組織している。会員数は月によって変動があるが、4,300 〜 4,500 人といったところ。会員データベースは大阪で一括管理している。
 会費は月 2,000 円。会員は①育児に関する知識や、会員限定販売商品の紹介、会員から寄せられた手紙などを掲載して 2 〜 3 カ月に一度発行する B4 判 4 ページの『育児文化ニュース』の送付、②平日の午前 9 時 30 分から午後 4 時 30 分まで、電話で育児相談に応じる「育児相談室」の利用、③ワイズマミィ店頭でのキングベビー(株)製品の 10%割引の特典が受けられる。また会員には、毎月 1 回、「マタニティスクール」の案内を送っている。
 同社では、現在のところ店舗を増やす計画はないという。同社の事業コンセプト、取扱商品や育児についての十分な知識を持ったスタッフが、顧客ひとりひとりに満足、納得のいく情報・商品を提供していくには、現在の規模を維持していったほうが良いと考えているためだ。店頭、電話、ダイレクトメールによる 1:1 のコミュニケーションによって「少ないお客様を大切にしていく」(谷口氏)ことが、顧客ひとりひとりのロイヤリティの向上を実現している。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年5月号の記事