インバウンドに重きを置いてセンターを刷新

東京三菱銀行

優良な見込客をインバウンドでキャッチ

 1996 年 4 月 1 日、国際業務に関する高いノウハウを有する東京銀行と、国内業務に強い三菱銀行の合併によって誕生した日本最大の都銀、東京三菱銀行。同行では同年 6 月、それまで東京都渋谷区初台にあったダイレクト・マーケティングセンターを新宿区に移転。システムを刷新すると同時に、スタッフを増員して再スタートさせた。
 旧三菱銀行では 1989 年に都銀初の試みとしてダイレクト・マーケティングセンターを開設。スタート当初から全営業店を対象に業務を行ってきた。当初、センターの業務は年金受取口座の指定のお願いコールを主体に、各種キャンペーンのお知らせや新商品のご案内など、アウトバウンドが中心であった。しかしアウトバウンドでは日中の在宅率の低さが最大の課題。年金受給者などのいわゆるシルバー層の場合は有効通話率が 70%以上に達するとはいうものの、アプリケーション開発には自ずと限界がある。その点インバウンドは、成約につながる可能性の高い優良見込客が、自らアクセスしてくれるという意味で非常に効率的だ。金利自由化をはじめとする各種規制緩和などを受けて、商品そのもので他行との差別化を図ることが可能になったという背景もあり、同行ではマスメディア広告やダイレクトメールで個性的な商品を告知し、それに対する問い合わせをインバウンドで受け付ける体制を強化したのである。
 インバウンドの受付時間帯は平日の午前 9 時から午後 6 時までと、土曜日の午前 9 時から午後 5 時まで。東京と大阪にテレマーケッターと行員合わせて約 150 人が待機し、コール数が増える広告出稿直後などにはスタッフを増員するなどして応対に当たっている。
 同行では 1996 年 11 月、半年据え置き後は引き出し自由、最長 5 年まで預けられる新型定期預金「スーパー No.1」を発売した。全国紙や『週刊新潮』『週刊朝日』などの週刊誌、『レタスクラブ』などの女性誌、『あるじゃん』『日経マネー』などのマネー誌に広告を掲載、問い合わせ、資料請求を募っているが、反応はすこぶる良い。このレスポンスは 0120-508639 の「東京三菱銀行スーパーダイヤル」で受け付けている。
 以前は商品によって、あるいはキャンペーンの強弱によって、告知する問い合わせ窓口をフリーダイヤルと一般加入回線で使い分けていたが、センター再構築を機にフリーダイヤルに統一した。

「電話完結型」を模索

 ダイレクトマーケティングを導入している金融機関は数多いが、それらは①営業店サポート型と②本部主導型の 2 つに大別できる。同行が目指しているのはどちらかと言えば後者に近い。支店に依存して受け付けた内容を引き継ぐのではなく、本部主導で、あたかもあるひとつの支店で対応しているかのようにその場で顧客の要望に応えることをモットーとしている。成約に捺印が必要な金融商品にあっても、もはやメール・オーダーは当たり前。顧客がわざわざ来店しなくても、申し込みができるものも多い。距離の制約を超えて、支店でカバーできない顧客に対してアプローチしようというスタンスだ。告知のみ、問い合わせの受け付けのみを行って「あとは店頭で」ではお客様にフラストレーションが募る。顧客満足獲得のはじめの一歩は、スピーディな対応なのだ。
 しかしもちろん、各支店の顧客からの問い合わせなどは、迅速に担当支店につなぐ。重要と判断したものについては、書面だけでなく、電話や FAX も活用している。
 ダイレクト・マーケティングセンター拡充の目的は、単なる業務の合理化ではないと同行は強調する。ひとりひとりの顧客の声を、確実に営業活動や商品開発に反映させること、それこそが銀行の生き残り策であるという認識が同行にはある。「効果は短期間で見えるものではないかもしれませんが、お客様のさまざまなニーズを敏感にとらえ、それに的確にお応えするよう努力しています」と同行は言う。

顧客の選択肢は幅広く

 店舗、電話、FAX、パソコン通信、インターネット …。同行の顧客対応窓口は数多い。さらに渋谷支店では、無人でローンの申込受付や住宅ローンのシミュレーション、商品照会などが行える相談端末機、「パーソナル・カウンター」をテスト中。チャネルは銀行側が決めるものではなく、お客様自身が選ぶものとの考えから、同行はできるだけ間口を広く、数多く設定している。
 「お客様の要望はさまざま。ひとつのチャネルがほかのチャネルを完全に淘汰することはない。かたちは変わるかもしれないが、どのチャネルも残っていくはず」(同行)。よりたくさんの顧客を獲得するために、入口は広いほど良いのである。
 ひとつでも多くの情報を収集し、いちはやく商品やサービスに反映させることで、他行に一歩先んじる。これを実現するシステムが、今着々と整備されつつある。

A-9

フリーダイヤル番号が明記された、人気商品、「スーパー No.1」のパンフレット


月刊『アイ・エム・プレス』1997年2月号の記事