延べ 100 人以上が試食・討論
首都圏に約 480 人、京阪神地区に約 180 人の主婦モニター、DO さんを組織する(株)ドゥ・ハウスでは、 1994 年、新潟県新潟市に本社を構え、米菓店「いろり庵」の展開を行っている米菓メーカー、(株)みながわ製菓と組み、新事業としておかきの直販事業を開始した。
(株)みながわ製菓では、自社店舗、一般の卸ルートのそれぞれの販売チャネルに合わせ、まったくタイプの違う米菓を製造しているが、作り手の熱意を食べる人にダイレクトに届けたいという想いから、さらにもうひとつのチャネルとして、通信販売に興味を持っていた。しかし一番の課題は、顧客の開拓。そこで(株)ドゥ・ハウスがマーケティングを担当し、同社が展開するサンプリングサービス「クチコミセンター」を活用してプロモーション活動を展開することになったのだ。
DO さんは商品開発の段階から、新事業にかかわった。(株)ドゥ・ハウスではおかき好きの DO さん 20 人を選抜、約半年間に 3 回、商品開発チームとともに試食会に参加させた。そこで味、パッケージ、価格などについての意見を収集、これを反映させて「えびかりぽり」「青のりかりぽり」「のり巻かりぽり」「そふとかりぽり」の 4 種類のおかきをつくり上げた。
本場米どころ、新潟では、さくっと軽い歯ごたえが好まれているのに対し、特に首都圏では硬いせんべいが高級品として珍重されている。試食会では「やわらかすぎるのではないか」という声も聞かれたが、あえて越後の伝統を生かし、軽いおかきの良さを PR することに決定。
原料は新潟産の高級餅米「黄金餅」。注文を受けた翌日に熟練職人が手焼きし、「ゆうパック」で 3 日のうちに全国に配送。マスプロダクトでは実現できない注文生産が最大の“売り”だ。
価格帯は 34 枚入りが 2,450 円、50 枚入りが 3,600 〜 3,700 円。結果的に DO さんの意見より、幾分高めの設定になった。
申込ハガキが付いたパンフレット
「お試しセット」の内容。特に「おまけかりぽり」が付いている
50 人の DO さんが5,000 人のモニターを獲得
1995 年 2 月、いよいよ商品の販売が開始された。
(株)ドゥ・ハウスでは、首都圏に住む、おかき好きの DO さん 50 人に、モニター募集を告知するリーフレット5部が入った1,000円相当の「お試しセット」を、それぞれ 10 セット配布した。DO さんは 1 セットを自分用に、残りの 9 セットをおかき好きの友人・知人に配る。さらにそれを受け取った人が、友人・知人におかきをわけ、モニター募集のリーフレットを配るという寸法。
モニターになった人は「お試しセット」を受け取ることができるが、その登録方法はきわめて簡単。指定のフリーコール番号に電話をかけ、音声ガイダンスにしたがって、①リーフレットに付いているモニターナンバー、②リーフレットに掲載されているおかきに関するアンケート 2 問の回答、③電話番号と郵便番号をプッシュボタンで入力し、最後に音声で④住所、氏名を録音するだけ。リーフレットには 5,000 人になり次第、モニター募集を締め切る旨を明記し、レスポンスを促進した。その結果、約 2 カ月後にモニターは 5,000 人に到達。徐々に商品の注文に結び付いていった。
電話(フリーダイヤル)、FAX、専用ハガキで入る注文は、(株)ドゥ・ハウス内にある「TOKYO 事務局」で受け付け。1 日分の注文を取りまとめて、まず(株)みながわ製菓に FAX した後、宅配便で届ける。商品は(株)みながわ製菓から、郵便振替用紙は「TOKYO事務局」から、それぞれ注文者に送られる仕組みだ。
大切なのは「顧客の声を聞き続ける」こと
現在、おかき庵のコアとなる顧客は約 200 人。口当たりがソフトなので、特に年輩の方に評判が良いという。
これらの顧客には、中元、歳暮のギフトシーズンにダイレクトメールを送付。需要を喚起している。以前にギフト利用のあった顧客には、過去の届け先リストを打ち出して送り、品物を選んで記入するだけでリピートオーダーができるように配慮している。
また、受注の都度、お礼と確認を兼ねて、必ず一度、電話でコンタクトをとるようにしている。そのほか、最後の注文から 3 カ月を経た顧客には、平日の午前 10 時から午後 4 時の間に、DO さんがご機嫌うかがいの電話をかけている。顧客の中には年輩者が多いため、日中でもヒット率は意外に高い。留守の場合は 3 回かけ直し、それでも本人と話ができない時には、事務局のスタッフが夜間に電話をする。
電話では、極力セールス色を出さずにコミュニケーションに徹する。ある時は顧客から「あのおかきはやわらかすぎて物足りないわ」などと 10 分間にわたって延々とクレームを聞かされた後、「今、注文できるの? それならお願いするわ」と言われたこともあったという。
また、年 2 回「お声をきかせてください」キャンペーンを実施。切手を貼った返信用ハガキを同封し、顧客の要望を募っている。このレスポンス率は約4%。「子どもに食べさせるには値段が高すぎる」「味が良くて気に入っている」「一番好きなのは“えびかりぽり”」などの意見が寄せられる。アンケートに協力してくれた顧客には、次回の注文に使える 500 円の割引券を送っている。
ただ、取扱商品数が少ないため、コミュニケーションの切り口がつかみにくいことも事実。(株)ドゥ・ハウスでは、コミュニケーションの機会を増やし、質問の内容に工夫を凝らすなどして、顧客の声の収集に力を入れたい考えだ。この一環として、年内には同社のホームページに「おかき庵」のコーナーを出店する予定である。
顧客から寄せられた声をもとに、おかき庵では商品のリニューアルも計画しているという。
「iMi」で産直事業をスタート
(株)ドゥ・ハウスはパソコン通信やインターネットを活用した企業と生活者の対話システム、情報生協「iMi(いみ)」を展開しているが、この中でも産直事業を実施中。
「iMi」のダイレクトセリングサービスを利用した「旬と巧の情報クイック便」がそれで、現在は茨城県北浦の有機野菜生産者集団、COA が商品を提供している。「烏骨鶏の卵」「本物のハム」といった興味を引かれるネーミングの商品が紹介されており、オンラインでの注文が可能。約 8,000 人の「iMi」会員のうち、関東 1 都 3 県の居住者で、興味のあるジャンルとして「グルメ」「家事」「料理」のいずれかを挙げた約 2,000 人に E-mail を送っているが、現在のところレスポンス率は約 1%。中には食品にまつわる思い出話を E-mail で返してくる人もいる。
同社では「旬と巧の情報クイック便」の参加企業を募集中。メニューが増えることによって、注目度が高まり、レスポンス率もより向上していくに違いない。
最先端技術を駆使した“産直”の新しいかたちが、市民権を得つつある。