新鮮な魚介類を、電話1本で宅配 味の特急便日本海便り日本海鮮魚センター

(株)ニッカイ

来店客と継続的なコミュニケーションを

 日本海の名勝、佐渡弥彦米山国定公園に指定されている新潟県柏崎市の海岸沿いに、鮮魚センター、レストラン、ミュージアム、マリングッズのショップ、ホテルからなる観光パーク、「日本海フィッシャーマンズケープ」がある。この施設のひとつ、(株)ニッカイが経営する「日本海鮮魚センター」では、商品の宅配伝票をもとに顧客データベースを構築。1989 年からこの顧客に通販カタログを送付して、来店客の継続利用を促進している。
 同センターのコンセプトは、買い物の楽しさの提供。バラエティ豊かな品揃えが自慢である。取り扱っているのは、新鮮さと美味しさ、また、添加物が少ないことなどを基準に、同センターが厳選した優良品ばかりだ。
 カタログに掲載されているのは同センターの主力商品である海産物、海産加工物と、店頭では取扱額のあまり多くない新潟産の米、そば、漬け物などの農産物や日本酒。海産物とそれ以外のアイテム数の割合は約 7:3、売り上げでみると約 8:2 といったところだ。季節に合わせ、旬の商品をピックアップしているが、たとえば年間を通じて同センターの売れ筋商品である蟹やイカは、毎号登場する。売れ筋の価格帯は 5,000 円前後である。
 カタログは年 5 回の発行。一番の稼ぎ時は、ギフトとして、また正月用の食材として需要が増える年末である。この時期に発行するカタログは、天地 21cm× 幅 20.9cm で 24 ページ。 通常は 16 ページであるから、1.5 倍のボリュームだ。発行部数も通常が約 5 万〜 10 万部であるのに対し、14 万部を作成して購買頻度のやや低い顧客にも送付している。
 通販顧客は圧倒的に個人が多いが、法人も 1 割弱ある。「社員旅行で来店した中小企業のオーナーが、その後ギフトに利用するケースが多いようだ」(通販事業部 部長 小杉和明氏)と同社ではみている。
 年間をならすとギフトの割合は約 30%と、自家消費の割合が高い。カタログが届くたびに必ず注文するという顧客も少なくない。ギフトでは 5,000 円前後の品物を 5 点まとめて注文するというのが、平均的な顧客の購買スタイルだ。
 店頭同様、カタログ掲載商品にも新潟以外で水揚げされた魚介類が含まれている。すべてが新潟産のものと思い込んでいた顧客から「新潟の魚だと思って買ったのに…」という不満の声が寄せられることがある。「顧客が持っている“産直”に対する良いイメージを大切にしながら、カタログへの記載方法を工夫するなどして、新潟産の魚介類の美味しさと、世界の海の旬の味覚が電話 1 本で手に入るという利点の両方を、誤解なく利用者に伝えていきたい」と小杉氏は語る。

日本海沿いに立地した日本海鮮魚センター

日本海沿いに立地した日本海鮮魚センター

カタログ味の特急便 日本海便りと、DM に同封されている申込用紙

カタログ味の特急便 日本海便りと、DM に同封されている申込用紙

新鮮さをそのままお届け

 注文は電話、FAX、カタログ同送の注文専用ハガキや注文票で受け付けている。電話での注文受付は年中無休で午前 9 時から午後 6 時まで、通常は 5 回線、ギフトシーズンには 10 回線を当てる。
 同センターは優良顧客 1,000 〜 2,000 人に向けて、アウトバウンド・テレマーケティングも展開している。カタログを送付後、到着のタイミングを見計らってスタッフが電話をかけ、今回のおすすめ商品の案内などを行うのだ。これは顧客ニーズの収集にも大いに役立っている。
 商品の配送には主に「クール宅急便」を利用。希望によって「ゆうパック」を利用することもできる。魚介類は新鮮さが命。確実に受け取ってもらうために、届け日を顧客が指定するのが基本である。急ぎの場合なら、受注当日に発送し、翌日届けることも可能だ。支払い方法は郵便振替、銀行振込、代金引換のいずれかを選択できる。
 同センターでは、特に定期的な広告展開はしていない。旅行雑誌や一般紙のグルメ特集に、不定期に広告を出稿する程度。新聞、雑誌のパブリシティで取り上げられることも多いが、観光施設としての紹介がほとんどで、通信販売がクローズアップされるチャンスは少ない。 通販の新規顧客開拓に最も大きな力を発揮しているのは、来店客へのカタログ送付と、顧客の口コミである。
 来店客は 20 代の若者が大きな割合を占めているが、通販の中心顧客は 40 代以上のファミリー層。中元や歳暮で商品を贈られた人が、次には自分で注文してくるケースも多く、 通販顧客は来店客の枠を超えて広がっている。顧客の地域分布でみると、関東が最も多いが、北は北海道から南は沖縄まで幅広い。
 現在、データベースに登録されている顧客は約 41 万人。この中には顧客が指定した贈答先も含まれているので、実際の購入客は約 20 万人。さらに、購入頻度の高いコアとなる顧客は約 8 万人だという。
 同センターでは RFM 分析結果や、贈答先の件数、居住地域などによって緻密なセグメントを行い、送付するカタログの種類、送付のタイミングを変える など、顧客に合わせたきめ細かな対応を実施している。スリーピング顧客にも年 1 回は必ずカタログを送付し、コミュニケーションが途切れないようにフォローする。
 また 3 年前から「鮮魚会員」を組織し、毎日の水揚げ状況やお買い得品を FAX で案内するサービスを行っており、好評を得ている。現在この会員数は約200 人だ。
 現在、 通販の売り上げは年間約 9 億円で、まだ店頭販売にはおよばない。しかし、観光が伸び悩み、来店客増を望むのが難しい現状の中で、通販が果たしている役割は額面以上に大きいに違いない。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年1月号の記事