全店「OFF PRICE」のショッピングモール
東武東上線で池袋から約 25 分のふじみ野駅から徒歩4分。 1万8,596平方メートルの広々とした敷地内に、米国西海岸のショッピングセンターを思わせる 2 階建て のオープンモール「リズム」がある。メーカーが作り過ぎて売れ残った商品やキズ物などを格安の価格で提供し、米国で人気の業態、アウトレットショップを手本に、「高品質、適正価格」を指向。メーカー直営だけでなく、並行輸入や流通系の店舗も含め、ドラッグストアなど一部を除いて全37店舗のうちほとんどが“OFF PRICE 商品”を提供している。佐藤工業グループの(株)ディアライフが事業主体となり、リズム開発(株)が管理・運営を担当して、1993年11月12日にオープンした。
商品は婦人・紳士衣料を中心に、雑貨や食品も充実している。商圏は半径6km圏内をコアに、成増、所沢、大宮、鶴ヶ島を結ぶ半径15km圏内までが射程距離に含まれる。車で訪れる来場者のために800台収容の駐車場が用意されているが、激安ブームにのりマスコミにたびたび取り上げられたオープン当初には、6駅先の朝震まで車の列ができたという。
集客のための広告は、新聞折り込みチラシが主体。季節ごと、また、アニバーサリーやクリスマス、年末年始に、年8回程度配布する。これとリクルートが発行している『生活情報誌360』などのタウン誌を併用して、来場促進を行っている。
来場者はファッションに関心の高い20~30代と、価格に敏感な40~50代が中心だ。休日を利用して月 1 ~2 回、家族連れで、車でやって来るというのが、平均的な来場者像である。同じ敷地内に高層マンションがあるため、食品などを求めに毎日のように訪れる客も多い。土・日曜日の来場者数は平均l万2,000~1万3,000人。年間約250万人が訪れ、そのうち購入者は約 190万人であるという。
それぞれに個性的な 37店舗が軒を連ねるアウトレットモール「リズム」
リピートを促進する「リズムカード」
「リズム」では、ポイントカード「リズムカード」を発行している。現金、クレジットカードにかかわらず、 100円(食品売場は 200 円)の買い物ごとに 1点のポイントが加算され、500ポイント貯まると 500円のお買物券と交換できるという仕組み。通常の3倍のポイントがつくキャンペーンや、すでに貯まった 500ポイントがくじ引きで最大1万円になるイベントも、それぞれ年1 回実施している。
「リズムカード」は、日本信販(株)のΣカードシステムを採用している。テナントの売り上げを管理するレジ・システムを開発する過程で、日本信販(株)の提案を受け決定した。 各レジに「リズムカード」を差し込んで、精算を行うと、通常のレシートと現在のポイント数を示したレシートが発行されると同時に、自動的にポイント数がリズム開発(株)のホストコンピュータに登録される。
高校生以上なら誰でも会員になることができ、 18歳以上の場合はクレジット機能を付加することも可能。 1 階のカードサービスコーナーには日本信販 (株)のスタッフが待機しており、免許証、保険証など本人であることを確認できるものがあれば、その場でカードを発行することができる。モール内の掲示板、各店舗に貼ったポスター、また、新聞折り込みチラシなどで会員を募っており、現在の会員数は約3万5,000人。全購入者のうちカード会員はまだ約 30%といったところだが、リズム開発 (株)では、今年度中に4万人の会員を獲得したいと考えている。
会員データベースはリズム開発(株)が管理。会員には年2 回、優待セールへの招待状を送付している。また、各テナントが端境期などに集客のためにダイレクトメールを送付する際、「過去にその店で買い物をした会員」「利用頻度の高い会員」などの条件に合った会員情報を、有料で提供している。
アンケートに基づきサービスの向上を図る
リズム開発(株)では、年1回、来場者を対象に顧客動向調査を実施している。モール内でアンケート用紙を配り、「自動車で来たか、電車を利用したか」「家から何分かかったか」「どの店で買い物をしたか」などを尋ねるもので、毎回約500件の回答を得るという。このアンケートに寄せられた要望に応え、休憩用のベンチを増やす、赤ちゃんのおむつを交換するスペースを設置する、飲食店や子ども服店を設けるなどの改善が加えられてきた。また、店員の接客態度に対するクレームなどについては、各テナントと個別調整をするほか、月に 1 度開く店長会の席で指導している。
多種多様な店舗をまとめ、ひとつのショッピングモールとしての魅力を高めるのがディベロッパーの重要な役割。リズム開発(株)では各テナントとのコミュニケーションを密にし、「大上段に構えるのではなく 、テナントと二人三脚で」(管理部 主任 和田泰一氏)顧客サービスの向上を実現していきたいとしている。前述の店長会のほか、年2 回の店長との個別面談、日常的な情報交換を通して意志の疎通を図っているという。テナントに対して説得力ある提案・ 指導を行っていくためにも、顧客情報の収集が不可欠だ。
店舗は生き物。「これでいい」という答えはない。来場者の声に耳を傾け、柔軟に改善・調整に取り組んできた「リズム」。売り上げは年々着実に伸びているという。