ポイントシステムで7%還元3カ月間で40万人の会員を獲得

(株)高島屋

いちはやくポイントシステムを導入

 老舗百貨店、高島屋ではかねてよりハウスカードである「高島屋カード」を発行してきたが、今年4月の景表法改正を機にシステムを刷新、ポイントシステムを導入した。
 同社では今年秋、東京・新宿に新店舗を開店するが、この店舗ではこれまでの主要顧客層であるハイクラスのミセスばかりでなく、働く若い女性もターゲットとしている。システムの刷新は、新宿店の新規顧客開拓の使命を担うものでもある。そこでこの企画・開発チームには女性パート社員も登用し、意見を聞いた。また、ポイントカードを発案したチームの責任者は、直前まで婦人服売場のマネージャーを務めており、顧客のニーズを身にしみて知っていた。新システムの開発は、「コスト計算からスタートしたのではなく、いかにお得意様に満足していただくかを考えた結果」( 百貨店事業統括部 営業政策担当 係長 米山篤氏)であると同社は強調する。
 3月に会員獲得キャンベーンを開始、全国紙と『ミセス』などの女性誌を中心に会員募集のダイレクトレスポンス広告を展開し、 5 月 16 日に新システムがスタートした。初年度で 100万人の会員獲得が目標だが、すでにキャンペーン開始から 3カ月間で約 40万人の新会員を迎えている。旧カード会員約200万人については、更新時に新カードに切り換えていく。

購入金額の7%を還元

 同社でこれまでに発行してきた旧システムの「高島屋カード」には、3%の割引特典が付いていた。たとえばある月に1万円の商品を購入したお客様には、9,700円の請求をするというシステムだ。
 新しい「タカシマヤカード」のシステムは、カード利用額100 円ごとに 7点のポイントを加算し、 2,000点で2,000 円の商品券と交換するというもの。旧カードでは割引対象外であったバーゲン品にも、 3% のポイントが付く。「タカシマヤカード」でのクレジット払いのみが対象で、 1回払いの場合は7%、分割払いとボーナス払いの場合は3% のポイントがカウン卜される。さらに、提携カード会社である JCB、 VISAの加盟店での利用についても 0.5% のポイントが加算される。

7% のポイン卜プレゼン卜が最大の魅力。「タカシマヤカード」のパンフレット

7% のポイン卜プレゼン卜が最大の魅力。「タカシマヤカード」のパンフレット

カードのデザインは 2種類の中から選べる。新たなターゲッ卜として狙う、働く若い女性を意識して、ニューヨークの女性アーテイスト、ジーン・フィッシャーのデザインによるカードも用意した

カードのデザインは 2種類の中から選べる。新たなターゲッ卜として狙う、働く若い女性を意識して、ニューヨークの女性アーテイスト、ジーン・フィッシャーのデザインによるカードも用意した

 毎回の請求ごとに割引金額を差し引く方法から、一定のポイントが貯まってから商品券と引き替えるシステムに変換したとは言え、割引率を一挙に 3% から 7% に引き上げたのは思い切った決断であった。この割引率を決定するために、同社では、たとえば「プロパー商品のポイント数をもっと上げて、バーゲン品にはポイントを付けないほうが良 いか」、「商品にかかわらず一律のポイント数を加算して、全体的に割引率を引き下げるべきか」などさまざまな仮定に基づいたシミュレーションを行ったという。最終的には、顧客の期待に応えられること、また、“7”という数字が与える好印象から、現行のポイント数に決定した。
 スタートから約2カ月。同社では「タカシマヤカード」導入の効果測定に本格的に取り組み始めているが、リピート率向上、売上拡大への貢献度は予想以上であるという。 6月末には各店舗のクレジットカウンターでポイントの商品券への交換業務を開始したが、すでに多くの会員が交換を済ませている。
 会員データベースは、関連会社の(株)高島屋クレジットが管理・運用している。新システム導入に当たっては、多大の費用を投じてコンピュータ・システムの変更を行った。
 「タカシマヤカード」はクレジットカードであるため、高島屋の各店舗、提携カード会社での購買履歴のほかに、入会時の信用情報として多くの情報をとれるのが強み。同社では現在、会員情報の活用については今後の課題としているが、会員データベースに日々着々とマーケティング・データが蓄積されていることは確かだ。老舗百貨店、高島屋の新戦略は、低迷する百貨店業界の進むべき道を拓く可能性を秘めている。


月刊『アイ・エム・プレス』1996年8月号の記事