コンタクトセンター最前線(第116回):手厚いケアで継続的な製品の購入・使用を促す

ガシー・レンカー・ジャパン(株)

テレビCMでおなじみのニキビケア化粧品「プロアクティブ」をはじめ、メイクアップ化粧品やヘアケア製品、健康食品の通信販売を手掛けるガシー・レンカー・ジャパン(株)。既存顧客からの問い合わせ、および相談全般を担うカスタマーサービスセンターでは、後者の拡充を図り、継続購入を促すというミッションをさらに推進。アウトソーシング化により、応答率やスタッフの定着率を高める一方、定期お届けサービスへの登録や解約防止に努めている。

既存顧客への手厚いケアを目的に相談業務を強化

 1988年にアメリカで誕生し、ニキビケア化粧品「プロアクティブ」をはじめとする化粧品からヘアケア製品、健康食品まで多様なブランドを展開し、通信販売を手掛けるガシー・レンカー。同社は、安心と信頼をモットーとした高品質商品を、世界中の人々に提供している。
 その日本法人であるガシー・レンカー・ジャパン(株)は、2001年に設立。メインブランドである「プロアクティブ」は、10代、20代の女性を中心に広く認知されている。同社の製品は、主にテレビやインターネットでのダイレクトショッピング販売が中心だが、2008年10月より大型自動販売機で「プロアクティブ」主要製品の販売も開始。さらなる販売拡大に注力している。
 こうした中、もうひとつ同社が販売拡大に向けて熱心に取り組んでいる施策がある。それは、カスタマーサービスセンターにおける定期お届けサービス「クリアスキンプラン」の登録者を対象としたサポートの充実だ。
 同社では、日本市場に参入した当初から、テレビCMによる新規顧客の獲得業務を担う受注センターとは別に、既存顧客を対象としたカスタマーサービスセンターを開設。製品の正しい使用、および継続的な購入を促すことをミッションとして①注文、②返品・交換・解約、③配送やWebサイトに関する問い合わせ、④肌や商品に関する相談に、電話、ファクス、Webメールで対応してきた。ところが、中でも「クリアスキンプラン」の登録者を対象とした相談においては十分な利用がなされておらず、認知度を高める必要性を感じていたことに加えて、顧客に末永く商品を使用していただくためには、製品の正しい使い方や悩みなどへのサポートをこれまで以上に手厚く行っていくことが不可欠であると考えていた。
 そこで、カスタマーサービスセンターのPRを強化するとともに、相談の方法・内容の多様化を図り、窓口の名称を明確化。2010年5月に相談業務を「スキンケアサポート」と名付けて、カタログ、Webサイト、会報誌「ACTIV!」を活用してその利用方法を周知した。このほか、チャットで相談に対応する「チャットdeサポート」や、ニキビケアについてより専門的な情報を知りたいというニーズに応えて、看護師や管理栄養士が肌タイプや生活習慣を踏まえながら相談に応える、完全予約制の「プロフェッショナル サポート」も開始した。

1107S1

スキンケアサポートの告知媒体の一例。

1107S2

「プロアクティブ」に同梱している会報誌「ACTIV!」

インハウスとアウトソーシングを組み合わせた運用で応答率と定着率を向上

 現在、カスタマーサービスセンターは、東京2拠点、沖縄1拠点の計3拠点で運営されている。このうち東京の1拠点はインハウスセンターで約100席(電話業務以外の席を含む)。一方、アウトソーシングセンターは、東京15席、沖縄24席の計39席を保有している。
 同センターを開設した当初は東京本社内のインハウスセンターのみであったが、プロアクティブのユーザー拡大に伴うコール増に対応するべく、2008年より本格的なアウトソーシングに踏み切った。インハウスセンターのメインシフトが8時間勤務者用となっているため、コールの集中する朝と夜の時間帯の人員配置が薄くなっていたことから、その時間帯にアウトソーシング先の要員を厚く配置することにより、応答率の向上が実現。2010年における平均応答率は95.5%となった。また、定着率も高まり、現在では勤続年数5年以上のスタッフが半数を上回っているという。
 電話窓口には、NTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤル・インテリジェントサービスを導入。カスタマーサービスセンターでは、「プロアクティブ」以外のブランドに関する問い合わせや相談にも対応していることから、ブランド別に複数のフリーダイヤル番号を用意。いずれのフリーダイヤル番号も携帯電話からの利用を可能にするとともに、フリーダイヤル・インテリジェントサービスのACDグループ機能を利用して、効率的にコールの振り分けを行っている。
 受付時間帯は、プロアクティブのスキンケアサポートや注文、返品・交換・解約などを受け付けるメインのフリーダイヤル番号が、平日の9時から20時と土曜日の9時から17時までで、日・祝日が休業。それ以外のフリーダイヤル番号は平日の9時から18時までで、土日・祝日は休業としている。
 なお、チャットは平日の9時30分から16時30分まで対応。土日・祝日は休業としている。

オープン・クエスチョンで情報を引き出し適切な対応に努める

 各センターの業務は、以下のように分担している。インハウスセンターでは全ブランドのすべての用件に対応。アウトソーシング先の東京センターでは「プロアクティブ」と「ビタプロ」(健康食品)、「ズンバ」(ダンスエクササイズDVD)に関する相談以外のすべての業務、沖縄センターでは「プロアクティブ」と「ビタプロ」、そして「シアーカバー」(メイクアップ化粧品)に関する相談以外のすべての業務に対応している(図表)。つまり、冒頭で紹介した「スキンケアサポート」は、インハウスセンターのみで対応していることとなる。なお、アウトソーシングのチャネルは電話に限定。受付内容と応対チャネルを絞り込むことで、アウトソーシングのメリットを導入当初から享受することに成功した。

1107S3

 また、相談をインハウスセンターに集中させている理由としては、ニキビに関する悩みは一人ひとり異なり、センシティブな内容であることが挙げられる。そのため、相談業務に当たるのは、インハウスセンターで数多くの経験を積み、製品やニキビに関する知識を備え、応対スキルに長けたオペレーターに限定しているというのだ。
 顧客の満足を得られる相談対応のポイントとしては、多くの情報を引き出すことにあるという。対面販売であれば顧客の話を聞きながらニキビの状況を目で見て確かめて、適切なアドバイスをすることができるが、電話では視覚情報がない分、会話によって多くの情報を引き出して肌状態を把握しなければならない。そこで、同センターでは、オープン・クエスチョンを用いることで顧客に自分の言葉で自由に話してもらい、その背景にあるニキビの原因を探り出して適切な対応に努めている。

応答率、メンバー化率、キャンセルセーブ率を重要管理指標として採用

 カスタマーサービスセンターの受付状況をチャネル別に見ると、1カ月当たり電話が約8万3,000件、Webメールとファクスはそれぞれ約3,000件で、チャットは250件となっている。電話の利用が最も多いことは一目瞭然だ。
 KPIとしては、前述した応答率のほかに、メンバー化率とキャンセルセーブ率を見ている。メンバー化率とは、新規注文時に「クリアスキンプラン」への登録を促し、成功した率。キャンセルセーブ率とは、「クリアスキンプラン」解約の申し出に対して、使用状況や肌の状態をヒアリングしながら問題点を発見してアドバイスしたり、製品を使い切ることができずに困っている顧客にはお届けサイクルの変更を提案したりすることで、解約を阻止した率である。2010年の実績を見ると、メンバー化率が85%でキャンセルセーブ率が39%。2011年の目標としては、メンバー化率を87%、キャンセルセーブ率を50%に定めている。

1107S4

チャットの利用は全体の数パーセントと少ないが、今後の利用拡大が見込まれるチャネルだ

センターの現状に即してチェックシートをバージョンアップ

 現在のカスタマーサービスセンターにおける課題は、3センターの応対品質の均一化である。業務内容と応対チャネルを限定して、効率的なアウトソーシングを実現しているとはいえ、どのセンターの、どのオペレーターが対応しても、常に同じレベルの回答をすることは難しいもの。そこで、同センターでは、外部の専門家に窓口の応対評価を依頼。客観的な評価に基づき、改善を図っている。
 これと並行して、センター内でモニタリングとフィードバックも実施。センター内に常駐しているトレーナーと、スーパーバイザーの役割を担うリーダーが連携しながら行っており、リーダーは自分のチームのオペレーターを毎週2名ずつモニタリングすることで、無理なく、すべてのオペレーターを月1回モニタリングしている。
 モニタリングに使用するチェックシートは、①オープニング、②保留、③聞く、④言葉遣い、⑤音声、⑥話す、⑦顧客満足、⑧終話、⑨業務の大項目からなり、これらを細分化した小項目は30に及ぶ。評価は、Yes/ Noの2段階。このチェックシートは基本的な内容がメインとなっており、運用を始めてから数年が経過した現在のカスタマーサービスセンターにはそぐわない内容となっていることから、今年度中にバージョンアップを図る予定だ。
 このほか、チームごとに1時間程度のミニ研修を実施することで、日常業務の再確認や復習を実施。間違いではないが、オペレーターによって回答が微妙に違う部分を正している。

1107S5

おしゃれな照明や鏡など女性を意識した休憩室。冷蔵庫、電子レンジ、自動販売機と設備も充実している。壁にはスタッフ紹介や結婚・出産などのハッピーなニュース、成績優秀者の表彰、業務知識が盛り込まれた部内報を掲示し、部内コミュニケーションを活性化

1107S6

インハウスセンターに隣接している研修ルーム

3月の震災を機に事業継続計画を検討

 3月11日に東日本大震災が発生して以来、コンタクトセンターでは在宅エージェントやクラウドコンピューティングに注目が集まっている。同社では、今回の震災を機に災害時の事業継続計画を検討。東京センターが機能停止に陥った際には沖縄センターで対応できるよう、準備を進めているところだ。
 具体的には、フリーダイヤル・インテリジェントサービスのカスタマコントロールを操作できるスタッフを増やしているという。カスタマコントロールは、パソコンのWeb画面を利用してコンタクトセンターのスタッフが直接、オペレーターの稼働状況の照会や回線数変更などの設定を行うことができる機能。同社では、沖縄センターを中心とした受付体制に変更したり、ガイダンスを変更したりすることで、いざという時にもカスタマーサービスセンターの業務を継続していく意向だという。
 このほか、今後の取り組みとして以下の2つを挙げている。
 ひとつは、あらゆる角度から販売へのアプローチをしていくことである。受発信を含め、他部署からさまざまな企画を依頼されるため、顧客に会話を楽しんでいただきながら売上に確実につなげる体制を整えていきたいと考えている。
 もうひとつは、応対品質の向上である。これからも、アウトソーシング先のセンターとのコミュニケーションを密にして、問題点や困っていることを解決しつつ、同社としての応対ポリシーを共有し、3センターの応対品質の均一化を推進していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年7月号の記事