コンタクトセンター最前線(第100回):3センターを統合 総合的な運用により業務の効率化とスタッフの早期育成を実現

(株)メニコン

総合コンタクトレンズメーカーの(株)メニコン。業務内容別に3つのセンターを包含する同社のカスタマーセンターでは、将来的なビジネスの拡大を見据えてセンターの拡張を図るべく、2008年7月に沖縄に移転。システムも一新し、3センターを総合的に運用できる体制を構築した。今回は、新体制の構築から1年半を経た同センターに、移転の効果と現状の課題を聞いた。

業務内容別に3つのコールセンターを運用

 (株)メニコンは、愛知県名古屋市に本社を構える、総合コンタクトレンズメーカーである。1951年に日本で初めて角膜コンタクトレンズを開発して以来、新しいレンズ素材やデザインの開発、製造技術の向上、生産・品質管理体制の整備を進め、コンタクトレンズのパイオニア企業として、豊かなアイライフを提供している。
 同社では、エンドユーザーおよびメニコン製品取扱店を対象に、3つのセンターを開設している。
 ひとつ目は、高品質なレンズを常に最良の状態で使用するためのサービス「メルスプラン」の会員および加盟施設を対象としたメルスセンターである。周知の通り、近年においてコンタクトレンズは多様化、一般化した。これにより、コンタクトレンズ市場は拡大したが、一方では誤用によるトラブルも増えており、これが業界の課題となっている。また同社には、「キズや汚れが付いてしまった時には取り替えてほしい」「度数が進んだ時や紛失・破損の時に買い換えるのは負担が大きい」といった要望や不満の声があがっていた。そこで、同社では、高品質なレンズを常に最良の状態で使用するためのサービス「メルスプラン」をスタートしたのである。
 メルスプランは、定額制の月額費用でエンドユーザーと直接契約し、コンタクトレンズの提供や各種サポートなどは、メルスプラン加盟施設が行う仕組み。2001年のサービス開始以降、順調に会員数を拡大し続け、2009年12月現在、会員数は約86万人、加盟施設は1,500店に達し、今日では同社の中核事業にまで成長している。同センターでは、メルスプラン会員および加盟施設からの問い合わせ受付に加え、契約書のデータベース化や会費の請求・回収といったバックヤード業務も実施。メルスプランのスムーズな提供を支えている。
 2つ目は、全国に1万店を数えるメニコン取扱店からの注文を受け付ける、受注センター。そして3つ目が、製品に関する問い合わせやWebサイトに関する意見などを受け付ける、お客様センターである。
 同社では、これら3センターの総称を、「メニコンカスタマーセンター」と名付けた。同センターは、売り上げに直結する第一の窓口であると同時に、意見や要望など多くの声を受け止めるための核となる窓口であることから、同社における重要な顧客接点と位置付けられている。

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メニコンWebサイトの問い合わせページ(左)ではお客様センターの連絡先、メルス会員専用ページ(右)ではメルスセンターの連絡先を告知している

カスタマーセンターに寄せられた声は製品・サービスの改善に活用

 各センターの受付体制は、図表1の通り。サービス対象や業務内容が異なることから、受付時間帯はセンターごとに設定されている。

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 メルスセンターおよびお客様センターの電話窓口には、顧客サービスの一環として、電話をかけやすい環境を整えることを目的に、NTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤル・サービスを導入。さらなる利便性向上のために、携帯電話からの着信も可能にしている。
 また、両センターでは、eメールでの問い合わせにも対応。複数のコンタクトチャネルを用意することでアクセスの簡便性を高めているが、問い合わせなどの多くはフリーダイヤル電話で寄せられているとのこと。また、メルスセンターの特徴として、メルスプラン会報誌の発行直後など、メニコンからのアクションに伴ってコール数が急増することがあるという。
 一方、受注センターにおいては、メニコンが独自に構築しているデータによる注文システムを介したデータ注文とファクス注文が大半を占めており、電話による注文は少ない。
 前述の通り、カスタマーセンターは、お客さまの声を受け止めるための窓口でもあることから、同センターに寄せられた意見や要望は、より良い製品やサービスの提供に役立てられる。お客さま情報に基づき改善された製品やサービスは多数あるが、今回はソフトコンタクトレンズ用の洗浄、すすぎ、消毒、保存液「エピカコールド」の保存ケースの改善例を紹介したい。
 エピカコールドのコンタクトレンズ保存ケースは、レンズ収納部の色が半透明であったためにレンズがケースと同化してしまい、「レンズが入っているかどうかわかりづらい」という苦情が寄せられていた。ケースのふたに書かれている右と左を示す「R」と「L」の文字も本体と同色の半透明で、左右の判別もしづらかったのである。そこで、レンズの収納部を白色にすることでレンズの視認性を高めるとともに、左右の識別を容易にするために、ふたの色を右だけ半透明のブルーに着色した。改良後は、同様の苦情は寄せられなくなったという。

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メルス会員に配布する情報マガジン「MELOOK」。裏表紙には、メルスセンターの連絡先やIVRの説明を記載している

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同社Webサイトのエピカコールドのページで、コンタクトレンズ保存ケースの改良情報を公開し、お客さまにフィードバックしている

メルスプランの拡大に伴いカスタマーセンターを沖縄へ移転して規模を拡張

 メルスプラン会員の増加に比例して、メルスセンターに寄せられるコール数も増加傾向にある。こうした状況の中、これまでも、お客様センターにメルス会員から問い合わせが寄せられることがあったが、その件数は次第に増加。ほかのセンターの業務効率に与える影響が大きくなってきた。加えて、メルスプランのさらなる発展を目指して会員の拡大を加速する中で、今後の会員増およびコール増を見据えたセンターの拡張は不可欠であった。
 さらに同社では、2005年にプライバシーマークを取得し、取り扱う個人情報に応じてセンターごとに異なるセキュリティーレベルを設定してきたが、その後、お客さま情報の一元化を推進する中で、各センターにおけるセキュリティーレベルを統一することが課題となっていた。
 以上を主な理由に、同社では本社がある名古屋で運用していたメニコンカスタマーセンターを、2008年7月に沖縄へ移転した。業務の移管に当たっては、メルスプラン会員および加盟施設をはじめとるすべてのお客さまに変わらぬサービスを提供することができるよう、段階的に行った。

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沖縄のメニコンカスタマーセンター

システム統合により総合的なセンター運用が可能に

 沖縄センターの開設では、3センターのロケーション統合に加えて、コールセンターシステムの統合も行った。導入したのは、日本アバイア(株)のIP-PBX、Avaya Aura Manager をベースとしたシステム。CTI&マルチチャネル対応ソフトウエアやコールマネジメントシステム(CMS)、コールセンターソフトウエア、デジタルフォンとともに導入された。
 新システムの導入により、フリーダイヤル電話、eメールなど、複数のチャネルからの問い合わせをひとつのアプリケーションで受付・管理することができるようになった。
 沖縄センターの開設から約1年半が経過した現在、以下の2つの効果が得られている。
 ひとつは、業務効率とCSの向上である。スキル・ベース・ルーティングにより、用件に合わせて最適なサポートスタッフに接続することができるようになったことに加え、サポートスタッフのマルチスキル化を図り、お客様センターのスタッフもメルスセンターに寄せられる住所・氏名・引き落とし口座の変更と、加盟施設照会への対応を開始。これにより、お客さまをお待たせすることなく、迅速かつ的確な対応を実現している。
 もうひとつは、新人教育の期間短縮である。住所変更などの一般的な問い合わせ対応は新人サポートスタッフに、難易度が高い加盟施設からの問い合わせ対応は経験豊富なサポートスタッフに任せるというように、スキル・ベース・ルーティングが可能になったことで、採用から研修、着台までの期間を3カ月から1カ月へと大幅に短縮することができたのだ。
 現在、カスタマーセンターでは、サポートスタッフのスキルを10段階に設定。ひとつずつスキルを習得していくことで、サポートスタッフの負担を軽減しつつも、早く、かつ確実にスキルを身につけられるようにしている。そのため、移転に伴い新人スタッフの割合が増えているにもかかわらず、同センターでは移転前と同一レベルのサービス品質を設定。すべてのセンターで目標応答率98%以上を掲げるなど、高品質なサービスの提供を目指している。

サポートスタッフの応対品質の底上げに注力

 長期にわたりメルスプランを利用している会員は、同社にとっての優良顧客。優良顧客に対しては、たとえ簡単な用件で電話をかけてきたとしても、応対レベルの高いサポートスタッフに電話をつなぎ、満足度の高い応対を行いたいと考えている。
 これを実現するには、第一に人材を育成しなければならない。現在、カスタマーセンターでは、応対品質の底上げを最優先課題としており、今後は日々の応対や研修を通じて新人スタッフに経験を積ませることで、早急にレベルアップを図っていくという。
 また、お客さまの意図をくみ取り、より良い情報を提供することができるよう、モニタリング&フィードバックを通じて傾聴力を高めていく意向。同時に、製品知識の習得にも注力し、コミュニケーション能力をより一層、伸ばしていきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年3月号の記事