全国900店舗で中古品の買取・販売を営むブックオフコーポレーション(株)のグループ企業として、インターネットによる中古の書籍・コミック・雑誌・CD・DVD・ゲームの買取・販売および新品の販売を手掛けるブックオフオンライン(株)。同社では、2007年8月1日のWebサイト開設と同時にカスタマーセンターを開設。お客さまからの問い合わせに対応している。
カスタマーセンターはオンラインビジネスの中核
本やコミック、CD、DVD、ゲームといったパッケージドメディアの総合ショップであるブックオフオンライン(株)。同社では、ブックオフ店舗と同様に、パッケージドメディアの買取・販売を行うだけでなく、新品も取り扱い、中古品と新品をまとめて購入できる点を特徴としている。取り扱いタイトル数は約50万タイトルで、品揃えは常時100万点を数える。2008年10月末現在の会員数は40万人弱。月商はオープンから約5倍に伸びている。
急伸中のオンラインビジネスの中核に位置付けられているのが、カスタマーセンターである。電話とWebサイトに設けたメールフォーム(以下、Webメール)で、ブックオフオンラインのインターネット買取サービス「宅本便」に関する問い合わせや、実際に「宅本便」を利用した方からの査定結果に関する問い合わせのほか、サイトに関する問い合わせへの対応などを行っている。
電話の受付時間帯は、10時から17時までで年中無休。基本的にはインバウンド業務がメインだが、「宅本便」での買取申し込みフォームの記入不備を確認するなど、若干ではあるがアウトバウンド業務も実施している。
カスタマーセンターは、神奈川県横浜市の同社本社内にあり、人材の採用からお客さま対応、管理に至るセンター運営のすべてを自社で行っている。ブックオフグループでは、店舗でのサービスなどに関する問い合わせに対応する「お客様窓口」を別途開設しており、その運営はアウトソーシングしているが、カスタマーセンターについてはインハウスを選択。マーケティング部カスタマーセンターグループが運営している。
ブックオフグループには、18年に及ぶ店舗運営で培ったブランドイメージやお客さま視点がある。カスタマーセンターでは、これらを継承しながら、お客さまが知りたい情報をワンストップで提供できるセンターを目指し、その実現に向けて歩みはじめたところだ。
ブックオフオンラインのトップページ
お客さま視点で運営方法を検討
カスタマーセンターの運営方法にインハウスを選択した理由としては、まず、お客さま満足の実現が挙げられる。新品は品質が担保されているが、中古品には瑕疵(かし)がある。中古品の現物を見ずに、お客さまに満足していただけるサポートを提供することはできないと考えたのだ。
次に、現物を見ながら対応できる環境作りが挙げられる。中古品の販売においては、お客さまから不要になった本やCDなどを売っていただかなければいけない。従って、いかに多くの中古品を売ってもらうかが、中古品ビジネスのキモとなる。この点は、店舗もオンラインも同じだ。しかし、店舗とオンラインでは、対面と非対面という決定的な違いがある。店舗ではお客さまの目の前で査定をするため、査定結果に疑問があればお客さまはその場で質問できるが、オンラインではお客さまは売りたい商品を宅配便でブックオフオンラインへ送るため、査定の場に立ち会うことはできない。この不透明さに起因するお客さまの不安を払拭するためには、現物を見ながらの適切な対応が必要だったのである。
最後に、カスタマーセンターをオンラインビジネスの中心に位置付けたことが挙げられる。Webサイトを通じてどのようにお客さまとコミュニケーションを図り、声を拾うかを考えたとき、単なる問い合わせ窓口として運営するのではなく、カスタマーセンターをマーケティングの領域に踏み込ませて運営することが不可欠と考えたのである。
これら3つの根底には、同社およびブックオフグループのビジネスの基本にあるお客さま視点の考え方があると言える。
チャネル別に専任オペレータが対応
図表1は、マーケティング部の組織図である。5グループに分かれており、Webデザイングループなどと並んでカスタマーセンターグループがある。組織図で見ると、カスタマーセンターはマーケティング部の1機能となっているが、前述の通り、位置付けは会社の中核。非対面での査定による不透明さを払拭し、お客さま満足度の高い対応を実現するとともに、コミュニケーションを通じてお客さまのニーズを受け止め、マーケティング部内の各グループおよび関連部門に情報を伝達している。
カスタマーセンターのスタッフ数は計16名。内訳は、オペレータ11名、リーダー2名、アシスタントグループリーダー2名、グループリーダー1名となっている。雇用形態は、リーダーまでがパート・アルバイトで、アシスタントグループリーダー以上が正社員である。正社員には、コールセンター経験者を採用した。
特徴は、電話には買取に関する問い合わせ、Webメールにはオンラインショッピングユーザーからの注文に関する問い合わせが寄せられること。カスタマーセンターでは、開設当初はすべてのオペレータがすべての用件に対応していたが、チャネルごとに用件が分かれることが明らかになったため、2008年3月より、買取グループと販売グループの2グループに分けて、用件別・チャネル別の対応をスタートした。これにより、より一層スピーディーで的確な対応を実現している(図表2)。
席数は電話とメールを合わせて9席で、常時7〜8席が稼動している。
応対のモットーは店舗と変わらぬコミュニケーション
電話窓口には、NTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤルサービスを導入した。お客さまから本などを売っていただくための窓口であることから、同社で費用負担をするのは当然のこと、というのがその理由である。また、携帯電話からの着信も可能にしている。
平均通話時間は約5分。Webサイトでは宅本便の問い合わせ窓口として告知されているが、実際には、お客さまの近隣の店舗や売りたい冊数を確認した上で、①店舗への持ち込み、②店舗からの出張買取、③宅本便の中から最適な方法を提案することが多く、店舗の買取もサポートしている。
さらに、お客さまにとっては店舗もWebも同じブックオフであることから、店舗のキャンペーン情報なども把握しておき、問い合わせがあればその場で対応している。その結果、電話でのワンストップ解決率は90%に及ぶ。
一方、Webメールには、24時間以内に返信している。Webメールで問い合わせを受け付けると、まず自動返信で受け付けたことをお知らせし、その後、改めてオペレータから正式な回答を送る。やりとりが繰り返される場合は、折を見て電話対応に切り替えることで、行き違いのないよう努めている。
対応におけるモットーは、ブックオフ店舗での対面コミュニケーションと同じ感覚をお客さまに感じていただくこと。そのために、店舗運営で培った接客ノウハウに基づきオペレータ教育を行い、ブランドイメージやお客さま視点を継承させるほか、返金・返品・交換の判断はオペレータに委譲することで、店舗と同様の機能をカスタマーセンターに構築している。また、オペレータが現物を見ながら自信を持って応対することも、店舗と変わらぬ信頼関係の構築に寄与していると言えよう。
宅本便の紹介ページ。下部にはカスタマーセンターのフリーダイヤル番号を明記している
システムは最小限に
カスタマーセンターでは、開設当初、どのような内容の問い合わせがどのくらい寄せられるのか見当がつかなかったことに加えて、オペレーションがシステムに依存してしまうことを懸念し、ボイスロギングシステムやCTIなどのコールセンターシステムをあえて導入しなかった。導入したのは、受け付け・買い取り用のパッケージソフト、各部署との情報共有を目的とした掲示板を運用するための社内サーバー、メールソフト、社内メールなど最小限の機能のみ。時間外ガイダンスや入電状況の把握には、フリーダイヤルのオプションサービスのひとつである時間外ガイダンスとカスタマコントロールを使用している。
電話とWebメールの対応履歴は、チャネル別、用件別に蓄積し、これを分析することで、マーケティングに生かしている。具体的には、Webメールでの問い合わせや宅本便の申し込みはメールデータベースへ登録。電話での宅本便の申し込みは、これをエントリーするシステムに登録している。電話での問い合わせについては、買取方法を教えてくださいといった単純な問い合わせについては蓄積しないが、ご指摘や要望に関しては、専用のデータベースに蓄積している。
カスタマーセンターの開設から約1年が経過した。日々のオペレーションも安定してきたことから、カスタマーセンターではこれからシステム構築に乗り出すところだ。
事務処理を行う部屋の一角を区切って作られたスタジオのようなカスタマーセンター
毎日が発見、毎日が改善
同社にとって初めてのインハウスセンターの運営は、応対マニュアルの作成、職種ごとの役割・権限の取り決め、採用、教育などすべてが手探り。コールセンター運営の経験者を採用して体制を強化したが、まだ発展途上にあるというのが実際のところ。しかし、中古品と新品がまとめて購入できるという他社にはないお客さま視点のサービスが支持を集め、オンラインビジネスは順調に拡大。冒頭で紹介した通り、月商はスタート時の5倍と急伸している。売り上げに比例して問い合わせ件数も増え続ける中、受付体制の拡充が必要になっているものの、採用が追いつかないことが課題だ。
産声をあげたばかりのカスタマーセンターは、毎日が発見、改善の繰り返し。店舗運営のノウハウにコールセンター経験者のノウハウ、そしてお客さまの声を合わせて、店舗と同様の安心感とワンストップでの情報提供を追求していきたいとしている。