コンタクトセンター最前線(第79回):コールセンターの仕組みを再構築 より多くのお客様へ均一なサービス提供を実現

コスモ証券(株) コンタクトセンター(大分市)

コスモ証券(株)コンタクトセンターは、既存のオンライン専用コールセンターに営業サポート機能を付加するかたちで開設。商品やサービスごとに設けていた問い合わせ電話番号を集約して窓口の明確化を図るとともに、サポートスタッフの効率的な教育システムを構築することで、スタッフの商品知識はもちろん一人ひとりの意識向上も可能とした。これにより、より多くのお客様への均一なサービス提供を実現。スタッフが一丸となって、お客様満足度の向上を目指している。

コンタクトセンターが店舗の専任担当者をサポート

 コスモ証券(株)では、2007年10月より従来の店舗専任担当者による対面での取り引きに、インターネットを通じた取り引きもできる「コスモ・コンサルティング」コースと、電話やインターネットを通じて、お客様のペースで取り引きできる「コスモ・ネットトレード」コースの2種類を用意。お客様が自身の投資スタイルに合わせてコースを選択できるようにした。
 これに伴い、かねてより運営していた株式注文の受注センター(株通ダイヤル:現在ネットトレードコースへ統合)に、コンサルティングコースのお客様からの問い合わせ受付ブースを追加するかたちでコールセンターの仕組みを再構築。名称を「コンタクトセンター」と改めるとともに、業務の大半を東京から大分県・大分市に移して新たなスタートを切った。
 コンタクトセンター開設の背景には、ますます多様化・高度化していくお客様のニーズに的確で適切な提案を行うために、その戦略上の要となる新しい仕組みが必要だったことが挙げられる。また、2007年9月末に本格施行された「金融商品取引法」により、投資家保護の観点から、証券会社をはじめとする金融機関においてはこれまで以上にお客様に対して十分な商品説明が求められるようになったことや、海外市場を投資対象とした商品の普及により、店舗専任担当者の対面でのコンサルティング時間が増えたことも挙げられる。お客様に不便をかけずに店舗専任担当者が対面でのコンサルティングに集中できるよう、電話による問い合わせ受付窓口の充実が急務となったのだ。
 コンタクトセンターの開設以降、徐々に各店舗の問い合わせ受付業務を集約し、2008年3月に全30店舗の集約を終えたところだ。

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コンタクトセンターの様子。センター内には高いセキュリティ体制が敷かれており、常に録画・録音されている。入退室にはICカードを使用し、駅改札のようなゲートを通過。ゲートの両サイドには180cmほどの透明のパネルを付け、ゲートの飛び越えを防止している

コールセンター誘致が進んでいない地域に利点を見いだし活用

 大分市にはコールセンターの助成制度はないものの、センター運営には協力的である(大分県には、コールセンター企業立地促進補助金がある)。さらに、東京に比べて人件費が安い上、コールセンターの誘致をまだ積極的に行っていないために、先行する都道府県よりも優秀な人材が集めやすいといったメリットがある。同社が大分市にコンタクトセンターを開設したのは、アウトソーシング先が同市に進出したのがきっかけだが、これらのメリットを活かして、東京の1.5倍のセンターを東京と変わらない費用で運営している。
 具体的な受付体制を見ると、電話応対に当たるサポートスタッフ数は約80名。席数は90席で、最大120席まで増設することができるようになっている(2008年5月現在)。
 コンタクトセンターでは、2008年4月より、プッシュボタン操作のみでサービスを行っていたテレホンアンサーの機能を拡張させ、プッシュボタンでも音声でも操作できる自動音声応答取引サービスの提供を開始。音声での操作を可能にすることで、お客様の操作性を高めた。こうして自動音声応答取引サービスの利用を促進するとともに、自動音声応答取引サービスの利用増で生まれるヒューマンリソースを有効に活用していく意向だ。

電話番号を集約し窓口を明確化

 コンタクトセンターでは、開設を機に電話番号の集約も行った。開設前には、各店舗の一般加入回線番号のほかにネットトレードのテクニカルサポートにはNTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤル、コールセンター取引には同じく専用のフリーダイヤルというように、サービスごとに異なる電話番号を使用。さらに、商品ごとにも異なるフリーダイヤル番号を設置しており、お客様にとって窓口がどこなのかわかりくい状況であった。
 現在は、ネットトレード用フリーダイヤルで、オペレーターを通じた取り引きとテクニカルサポート、そしてコスモ・ネットトレードコースの新規お客様からの問い合わせや資料請求の受け付け、IVR(自動音声応答装置)で各担当へ振り分けている。また、コスモ・コンサルティングコースの新規のお客様を対象としたフリーダイヤルで、コンサルティングコースに関する問い合わせや資料請求を受け付けている。両番号ともに、携帯電話からも利用できる仕組みだ。
 フリーダイヤル番号を集約したことで、例えば、注文受付担当のオペレーターにネットトレードの問い合わせが寄せられた場合に、かけ直しのお願いをしやすくなった上、お客様にも受け入れられやすくなった。また、多少の待ち時間であれば、お待ちいただけるという。

フリーダイヤルのオプションサービスでバックアップ体制も構築

 ここで特筆したいのが、コスモ・コンサルティングコースの新規のお客様を対象としたフリーダイヤル番号の受付体制である。フリーダイヤルのオプションサービスである「全国共通番号」と「分配」、そして広域イーサネットe-VLANを利用してユニークな受付体制を実現しているのだ。
 具体的には、全国共通番号によりお客様からのコールを最寄りの店舗にいったん着信させてから、分配でコンタクトセンターへ転送している。各店舗のコール分配比率を0%、コンタクトセンターを100%に設定しておくことで、自動的にすべてのコールがコンタクトセンターに転送される仕組みを作った。各店舗とコンタクトセンターとの間にはe-VLANを利用。これにより、コンタクトセンターが負担する通話料金をお客様から最寄りの店舗までの料金にとどめている(図表1)。

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 さらに、この受付体制は万一の場合のバックアップ体制も兼ねている。もし、大分で災害が起こり、コンタクトセンターが機能停止状態に陥ったとしても、コールの分配比率を各店舗が100%、コンタクトセンターが0%というように通常とは逆に設定すれば、すべてのコールを各店舗で受け付けることができる。
 なお、各店舗の一般加入回線番号は、従来と変わらずコンサルティングコースのお客様対応用としている。これもいったん店舗で受け付けてからIP網を経由して、コンタクトセンターに着信させている。
 同センターが受け付けにおいて留意している点は、正確かつ丁寧な対応を心掛けることである。コンタクトセンター開設以前のネットトレード受付業務においては、簡単で便利な窓口であることを重視していたが、ネットトレードコースのお客様とコンサルティングコースのお客様とでは志向が異なることから、必然的に留意点も異ってくるのだ。
 受付状況を見ると、コンサルティングコースのお客様の利用が1日に2,100〜3,000件。ネットトレードのお客様の利用が1日に1,500~2,000件となっており、ピーク時には双方合わせて約5,000件のコールが寄せられる。

アンケート調査によるお客様満足度(CS)調査を年に1回実施

 コンタクトセンター開設の効果としては、まずコールの取り逃しの絶無が挙げられる。コンタクトセンターのコンサルティングコース対応では、サポートスタッフを7グループに分け、1グループで3〜6店舗を担当。グループ内で対応できない場合には、ほかのグループにコールを振り分けることで取り逃しを防いでいる。店舗の専任担当者に代わってコンタクトセンターでコンサルティング業務を受け付けることで、電話がつながりにくい店舗がなくなるとともに、より多くのお客様への均一なサービスの提供が可能となった。
 次に挙げられるのが、応対品質の管理と研修の効率化だ。今まで30店舗の応対品質チェックやサポートスタッフの研修実施に当たっては、1店舗1店舗、直接足を運び専任担当者とコミュニケーションをとりながらじっくり行ってきたが、サポートスタッフを1カ所に集約したことで、応対品質の管理も研修も組織的に集中して行えるようになった。これにより応対品質のレベルアップに成功。最近は、お客様からお褒めの言葉を頂戴することが多くなったという。お客様が取り引きする金融機関を選ぶ際に最も重視するポイントは応対品質が高いことであるとも言われていることから、コンタクトセンターでは今後も継続的な応対品質向上のために注力していく構えだ。
 同センターでは、この効果を数値化し具体的な目標として設定するために、年に1回、全社的に実施している「お客様満足度(CS)に関する調査」において、継続的かつ客観的に測定していく意向だ。

お客様情報を営業戦略などに活用

 コンタクトセンターの課題は、コンサルティングコースの受付業務においてサポートスタッフとお客様との信頼関係を構築していくこと。1日も早く店舗の専任担当者がお客様と築いているような親密な関係がコンタクトセンターでも実現するよう、定期的な研修と日々の勉強会を通じて、商品知識と応対スキルの向上を図っていく考え。
 また、コンタクトセンターに集まったお客様の声から、応対や業務フローにおける問題点を見つけ出し、改善策を講じる仕組みを作るとのこと。コンタクトセンターで提供するのは非対面のサービスだが、こうした取り組みを通じて対面と同等のサービスレベルを実現することで、お客様からの支持を得ていきたいとしている。
 さらに、コンタクトセンターに集まる情報は、センター運営の改善だけでなく、今後のビジネス拡大にも役立つ重要な情報であることから、コールから得られるさまざまな情報を経営資源として、いかに蓄積するかも課題のひとつ。例えば、店舗ごとのコール数の推移や問い合わせ内容の傾向を各店舗と共有し、営業戦略などに役立てたいと考えている。
 この4月からコンタクトセンターで全店舗の受付業務を開始した。これにより、今後はコール数の増加が予測される。コンタクトセンターでは、蓄積した情報を活かす新しい仕組みを完成させ、自らの存在価値を高めていきたいとしている。

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コスモ証券の店舗内。左に見えるのは、壁に取り付けられた株価ボード


月刊『アイ・エム・プレス』2008年6月号の記事