(株)富士通ゼネラルでは、自社製品に関する技術相談や修理、部品注文などを受け付けるサポートセンターの見直しを図り、複数あった拠点を集約。2007年12月には、神奈川県川崎市の本社内に集約してお客様の情報を一元管理することで、より一層の応対のスピードアップと応答率の向上を実現する環境を整えた。
サポートセンター集約の歩み
電子・電気機械器具の製造販売を主な事業とする(株)富士通ゼネラル。同社のリビング部門ではエアコンやホットカーペット、情報通信部門では映像表示システムや公共ネットワークシステムなどを手掛けている。今回紹介する同社のサポートセンターは、法人および個人のお客様から、主にリビング部門で取り扱う製品の技術相談や修理依頼、部品注文に対応するコンタクトセンターである。
サポートセンターの開設は1996年6月。日本全国を7エリアに分け、札幌、仙台、川崎、名古屋、大阪、広島、福岡の支店内にサポートセンターを設けて技術相談や修理依頼、部品注文の受け付けを専門に行う体制を整えた。
以前は、全国の各支店で受付業務を担当。サービススタッフや部品の手配には伝票を使用し、管理は台帳で行っていた。
確かに、地域密着型の受付体制は、お客様へのきめ細やかなサービスにつながる。しかし、業務量が担当エリアの企業数や世帯数に比例することから、支店によっては電話がつながりにくいといった問題が生じていた。同社の支店数は、最多時で60カ所。いわゆる“かゆいところに手が届く”サービスを提供していたものの、全支店のサービス品質の均一化を図ることは至難の業だったのである。
同社ではその後も効率アップを目的に、東日本と西日本の2カ所にセンターを再編。2007年12月には、神奈川県川崎市の本社内にある東日本が西日本を吸収するかたちでサポートセンターを集約した。現在は、サポートセンターですべてのお客様の情報を一元管理し、さらなる応対の効率アップとCS向上を目指している。
富士通ゼネラルホームページの製品情報(左)にアクセスすると、右側にサポートセンターのナビダイヤル番号が現れる。お問い合わせページ(右)は、製品ごとに問い合わせ先を告知しており、わかりやすい
集約に当たって危惧された3つの問題
サポートセンターを段階的に集約していった同社だが、集約に当たって以下の3点を危惧したという。
ひとつ目は方言の問題である。方言を話すお客様に対応する場合、標準語は話す方に悪気がなくても、聞き手が不快に感じることがあるほか、オペレーターがお客様の話している内容を聞き取れないケースを懸念したのだ。しかし、実際にサポートセンターを稼働してみると、言葉に関するトラブルはなく、スムーズに対応できた。
2つ目は、コンタクトセンターのインフラの問題である。同社では、全国7カ所のサポートセンターを東西の2カ所に集約する際にコールセンターシステムを一新し、CTIを導入。合わせてNTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルも採用している。センターを1カ所に集約してもコンタクトセンターシステムがスムーズに稼働するよう、また電話がつながらないなどの問題が起こらないように細心の注意を払ったという。現在のシステム構成は図表1の通り。
3つ目は、人材の問題である。必要な人数を集めることができるか。また、新人オペレーターの増員によりサービス品質が低下し、お客様にご迷惑をかけるようなことはないかが危惧されたが、同社では閑散期である冬に集約を実施することで、採用と教育に十分な時間を割き、この問題をクリアした。
用件別の電話番号でスピーディーな対応を実現
サポートセンターは、オペレーター約60名と、主に技術相談およびクレームを担当するスタッフ、センターの運営管理や教育を行う管理者層で構成。グループ会社の(株)富士通ゼネラルカストマサービスに業務委託するかたちで運営している。オペレーターは派遣社員だが、スタッフや管理者層は同社の社員が担当。グループ会社といっても富士通ゼネラルの敷地内にあるため、インハウスコンタクトセンターのように運営している。
受付時間帯は、技術相談と部品注文が、平日・土日・祝日を問わず午前9時から午後6時まで。修理受付が、平日の午前9時から午後8時までと、土日・祝日の午前9時から午後6時までとなっている。
電話窓口には、前述の通りナビダイヤルを利用している。導入理由は、応答率の向上である。同社では、ナビダイヤルの導入により窓口を明確化し、コールを集中させることで応答率を高めようと考えたのだ。
それまで同社では、支店の統廃合やサポートセンターの集約に伴い電話番号を変更してきたが、電話番号は取扱説明書など、長期間お客様の手元に残るものに記載されている。以前は、旧番号に問い合わせをしてくるお客様がいたほか、「どこに電話をすればいいのかわからない」といった声が寄せられていたが、ナビダイヤルの導入によりこうした声は少なくなった。
また技術相談、修理受付、部品注文の用件ごとに異なるナビダイヤル番号を利用。電話番号をキーに各用件の応対に必要なスキルを持ったオペレーターに電話をつなぎ、スピーディーな対応に努めている。
ファックスの受け付けには、同じくNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを利用。こちらも用件ごとに異なるフリーダイヤル番号を用意することで、受付業務の効率化を図っている。
目指すは応答率100%
図表2は、同社のサービス体制を示したものである。例えば、お客様からサポートセンターに修理依頼が寄せられると、まずオペレーターが故障の状況を詳しく確認。訪問の必要性の判断や、訪問が必要な場合はお客様とオペレーターで訪問日を決め、お客様の最寄りのサービスセンターに訪問日を指示する。
ここでのポイントは、オペレーターによる正確な状況把握である。ファーストコンタクトでヒアリングが十分でないと、サービスセンターで部品の再手配が必要になるなど業務が増える。状況を正確に把握することが、スピーディーなサービスの提供につながるのだ。効率アップの第一歩は、ムダを省くことと言えよう。
加えて、電話での受け付けにおいてサポートセンターが注力している点は、放棄呼をゼロにすること。言い替えれば、応答率100%を実現することである。同センターでは、お客様が困っているその時に対応することが、サポートセンターの役割であると認識。これを果たすためには、いつでも電話がつながりやすい状況になければならないため、同センターでは12年に及ぶセンター運営で培ったノウハウを駆使し、コール数を予測。最適な人員配置に努めている。
同社の主要製品のエアコンは季節商品であるため、7・8月にコールがピークに達した後、秋から冬にかけてはコール数が減少する。こうした大きな流れのほかに、曜日別、時間帯別の傾向や天気予報を加味して、精度の高いコール予測を行っている。ただし、天気予報が外れるとコール予測の精度が低下することもあるという。ここに、季節商品の対応の難しさが伺える。センター運営のベテランでも、天候だけは手の施しようがないと言えるだろう。
また、オペレーターは同社の顔であることから、同センターでは優しく丁寧にお客様の話を聞くことと、短時間で必要な情報を聞き出し、早期解決を図ることが不可欠であると認識。平均対応時間3分を目標に、日々スキルアップに励んでいる。このほか、1回の電話で状況把握からサービススタッフの訪問日の約束まで行うワンストップサービスを実施。これにより、お客様に安心感を与えている。
なお、eメールでの修理依頼などには、スタッフが対応している。
受付状況を見ると、2007年の1年間に電話、ファックス、eメールによる総アクセス数は約28万5,000件であった。ちなみに、このうちの約8万件は、7・8月の2カ月間で受け付けている。
すべての顧客接点で収集した“生の声”をセンターに集約
年間28万件を上回るお客様の声の中には、サービス品質の向上や商品開発に役立つ意見や要望が潜んでいる。これを発見し、関連部門へ伝達していくこともサポートセンターの重要な役割である。同センターに寄せられた声は、オペレーターが応対履歴のコメント欄に入力することで蓄積していく。
また、お客様の声は実際にお客様宅を訪問するサービススタッフにも寄せられる。そこで、同センターではこれを含むあらゆる顧客接点で収集したお客様の生の声を吸い上げている。
コメント欄に入力された情報と、サービススタッフに寄せられた声は、スタッフが収集。必要に応じて、eメールで関連部門に配信している。同社では、業界一小型のエアコンを開発してこの2月に発表したが、これにはサービススタッフから収集した情報が活かされている。
個人のお客様が家電量販店や街の電気店、通販などで購入したエアコンを実際に取り付けようとした際、間取りの都合などによって取り付けられないケースがしばしば生じていた。そこで、どのような場所にも取り付けられるよう、小型化を図ったのである。
マルチスキルのオペレーター育成に注力
今後もサポートセンターでは応答率100%を目指していく意向である。具体的には、ブラインドタッチや商品知識の研修を実施。継続的に平均対応時間3分の達成に努めることで、オペレーターひとり当たりの1日の応対件数を伸ばすと同時に、受付状況に合わせて最適な人員配置を実現することで、応答率100%を達成していきたいとしている。
また、オペレーターのスキルアップも図っていく考え。現在、技術に関する知識も備えたベテランのオペレーターは、主にスタッフが担う技術相談にも対応しているが、このようにすべての用件に対応できるオペレーターは少ないのが実際のところ。同センターでは、研修を充実させることで、全オペレーターのスキルを底上げすると同時に、マルチスキルのオペレーターを多数育成していきたいとしている。
以前は工場だった場所に創られたサポートセンター。ブースに開放感をもたらすよう、ジグザグのレイアウトを採用した