コンタクトセンター最前線(第73回):テクニカルサポートでサービスの付加価値を高めユーザーのWebショップを成功に導く

(株)Eストアー

Webショップ運営に必要なシステムや集客の仕組みをパッケージ化した「ショップサーブ」、そして「サイトサーブ」 を提供する(株)Eストアー。ユーザーを対象とした同社テクニカルヘルプデスクは、サポーターとしてユーザーのビジネス成功を支援している。

テクニカルサポートセンターはWebショップを成功に導くサポーター

 B to C のECやモバイルコマースの市場が成長を続けている。その背景には、通信環境の進展や生活者側のインターネットリテラシーの向上に加え、ECサイトの運営をサポートするツールの登場がある。
 (株)Eストアーは、1999年の創業以来、Webショップのパイオニアとして、Webショップの構築から運営サポートまで一貫したサービスの提供を行っている。
「サイトサーブ」は、ショッピングカート機能も付けられるレンタルサーバ。「ショップサーブ」は、高機能なWebショップを短期間で開店し、容易に運用できるショップシステムと集客サポートをパッケージ化したWebショップ総合支援サービスで、いずれも同社独自のノウハウの結晶だ。双方とも今年バージョンアップを図り、現在は「サイトサーブ2」「ショップサーブ2」として提供されている。
 上記サービスを含め、Eストアーの全ユーザー数は、2007年8月31日時点で4万3,243社。同時点での流通累計額は1,305億円。図表1 のように、ユーザーの売上金額および受注件数は年々上昇しており、ユーザーのビジネスの成長と歩みを合わせて、同社も成長を遂げている。

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 ツールの提供にとどまらず、ユーザーが各サービスの機能を使いこなせるようサポートするのも、同社の大切な業務のひとつである。これを担うのは、テクニカルヘルプデスクだ。同デスクでは、ユーザーからの問い合わせに電話、FAX、eメールで対応。4 万社のユーザーを成功に導くサポーターとして、日々の業務に注力している。

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パンフレットでテクニカルサポートをPR。サービスの付加価値を高めている

サービスごとに異なるミッション

 同デスクは、サービス別にサイトサーブ専用デスクとショップサーブ専用デスクとに分かれている。その理由は、デスクに求められる知識が異なるためだ。当然、役割も変わってくる。
 サイトサーブのユーザーは、Webの知識を持っており、ツールのみを必要としているため、問い合わせの多くはツールの使い方に関するものとなる。従って、デスクには問い合わせへの迅速な対応とお困りごとの早期解決が求められる。
 これに対して、ショップサーブのユーザーにはこれからWebショプを始める初心者が多く、ツールのサポートと併せてコンサルティングも求めてくる。そこで同社では、ユーザーが運営するWebショップの売上動向分析を通じて蓄積したWebショップ成功ノウハウに基づき、専任のECアドバイザーがユーザーの取扱商品やニーズに合わせて情報を提供しているのだ。コンサルティングにおいては、スピーディーな対応以上に、ユーザーが抱える問題点を丁寧に聞き取り、的確な情報を提供することが求められる。
 サイトサーブ専用デスクは「スピーディーなトラブル解消」、ショップサーブ専用デスクは「的確な状況把握に基づく最適な情報提供」と、それぞれが異なるミッションを持っているのだ。

ナビダイヤルで全国のユーザーに平等なサービスを提供

 2つのデスクの受付体制を見てみよう。2001年12月より、双方のデスクの電話窓口には全国共通のナビダイヤルを使用している。同社のユーザーは全国各地に分布しているため、距離に左右されずすべてのユーザーに平等なサービスを提供することを目的に導入した。
 ナビダイヤルは、NTTコミュニケーションズ(株)が提供するサービスで、発信者に通話料金を負担してもらうか、または通話料金の一部を契約者が負担することができる。同社では、ナビダイヤルを使用することで、全国のユーザーが3分およそ8.5円の市内通話料金のみで必要なサポートを受けられる環境を整えた(図表2)。ショップサーブにおいては、携帯電話からの着信も可能にしており、ユーザーの料金負担を22.5秒およそ10円に設定している。

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 ナビダイヤルにはこんな特徴もある。全国どこからでも0570+6ケタの専用番号でつながるので、移転などにより受付場所が変わっても電話番号を継続して利用できるのである。ビジネスの拡大を続ける同社が、将来、受付体制の拡大に伴いセンターを移転することになったとしても、番号変更に伴う周知の手間がなく、ユーザーの混乱を回避することも可能だ。

インハウスセンターの利点を活かして難しい用件にも迅速に対応

 電話窓口の受付時間帯は、サイトサーブ専用デスク、ショップサーブ専用デスクともに午前10時から午後6時まで。だたし、休日が異なり、サイトサーブ専用デスクは日祝日と年末年始、ショップサーブ専用デスクは土日・祝日と年末年始が休みとなっている。
 各デスクはインハウスで運営し、受け付けスタッフには社員を起用。デスクの近くには企画や開発部門のスタッフがいるため、難易度の高い問い合わせへの迅速な対応を実現している。こうした利点は、インハウスセンターならではと言えよう。同社では、企画や開発も含めてヘルプデスクととらえており、全社一丸となってユーザーに対応しているのだ。
 応対履歴の蓄積や顧客データ照会には、自社で開発したシステムを使用している。

多岐にわたる問い合わせ内容

 デスクごとに受付状況を見てみよう。図表3は、各デスクに寄せられた問い合わせ内容とその割合を示したものである。

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 サイトサーブ専用デスクに寄せられる問い合わせ内容は、eメールの送受信ができないといった eメールの設定に関すること、CGI(CommonGateway Interface)に関すること、サーバの仕様、2007年5月にリリースしたばかりのサイトサーブ2への要望と多岐にわたり、これらで全体の約60%を占める。残りの40%は、契約内容に関する問い合わせとなっている。
 一方、ショップサーブ専用デスクに寄せられる問い合わせ内容を多い順に挙げると、ツールの使い方に関すること、契約内容やサービスの案内、ECアドバイザーによるコンサルティングで、割合は50%、30%、20%となっている。

目的が明確であればユーザーの声の選択は容易である

 ショップサーブに関する意見や要望は、ストレートに寄せられるというよりも、問い合わせの中に潜んでいる場合が多い。デスクのスタッフは、当番制でユーザーの声の中からぜひ知ってもらいたいと思う内容をピックアップ。それを日報にまとめて、社内で共有している。この取り組みには、すべての社員にユーザーの声に耳を傾ける意識を徹底するという目的もある。
 また企画部門では、毎月、蓄積した応対履歴からユーザーの声を抽出。その声と同社のノウハウをかけ合わせることで、新たな価値が生まれるのか、すべてのユーザーの売上アップにつながるのか、といった視点で考え、サービスの機能向上に役立てている。
 創業から10期目を迎えた同社には、これまでにユーザーとともに培ってきたWebショップ運営の豊富なノウハウがある。その上、目的は“ユーザーの売上アップ”と明確なことから、声を採用するかしないかの見極めは比較的容易なようだ。開発部門への改善要求は頻繁になされるので、開発者は改善要求に応えるために日々邁進しているという。
 最近のユーザーの声の活用例としては、以下の2つが挙げられる。
 ひとつは、ショップサーブのメルマガ配信機能の強化である。ユーザーが持つ顧客台帳との柔軟な連動を実現し、購入回数やポイントの有効期限別など多彩なセグメント配信ができるよう機能を高めた。このほか、テンプレートも充実させた。ユーザーの評判は、なかなか良いそうだ。
 もうひとつは、ショップサーブのFAQの充実である。究極の理想は、ユーザーが問い合わせをしなくても滞りなくツールを使えること。それがユーザーにとって最良のサービスと言えよう。しかし、実際にこれを実現するのは難しいことから、電話をかけなくてもユーザーが知りたい情報を得られるよう、役立つFAQ作りに注力しているのである。

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全国のユーザーから問い合わせが寄せられるテクニカルヘルプデスクは、活気に満ちている

お客様が楽して儲かるサービスを作るために

 現在、サイトサーブ専用デスクでは、新しくリリースした「サイトサーブ2」の情報共有を課題としている。「サイトサーブ」では初心者を対象としていたが、「2」では中級から上級者へとターゲットを引き上げた。そのため、従来とは異なる問い合わせが寄せられるようになったのだ。スタッフには、今まで以上に豊富な知識が求められるようになった。そこで、同社では、研修を行うなどしてスタッフに十分な情報を提供することで、ユーザーへの的確な回答を推進していくという。このほか、応対品質の均一化を図る構えだ。
 一方、ショップサーブ専用デスクの課題は、社内FAQを既存のもの以上に充実させることである。ショップサーブはWebショップのオールインワンツールのため、機能が豊富で仕様も膨大だ。たくさんの情報の中から、必要とする情報を引き出せるツールは、ユーザーのニーズである迅速な対応の実現にも不可欠だろう。加えて、スタッフの提案力も向上させる意向だ。
 同社では、テクニカルヘルプデスクの業務を通じて、ユーザーのニーズとWebショップ運営ノウハウとをかけ合わせた「お客様が楽して儲かるサービス」の開発に、注力していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年12月号の記事