ライオンズマンションでお馴染みの (株) 大京。 25年間連続で事業主別マンション発売戸数第1位という快挙を成し遂げた同社では、「お客さま第一主義」 のもと、主に購入検討者を対象としたコールセンター「ライオンズマンション・ インフォメーションサービス」 を開設・運営している。 今回はそこでの取り組みについて話を聞いた。
アウトソーシングからインハウスへ
1960年に創業した(株)大京では、1968年にライオンズマンション・シリーズの第1号、ライオンズマンション赤坂の分譲を開始して以来、品質・性能の両面において独自規定をクリアする、水準の高いマンション建築・販売を手掛けてきた。1999年7月には、業界初の累計5,000棟目供給を達成。2002年(暦年)には年間7,103戸を発売した。1978年から25年間連続で事業主別マンション発売戸数第1位(株)不動産経済研究所調べ)を堅持している同社では、購入検討者を対象としたコールセンターと、居住者を対象としたコールセンターを開設しているが、今回は前者、「ライオンズマンション・インフォメーションサービス(LMIS)」を紹介する。
LMISは東京本社内に設けられており、営業推進部が運営・管理している。このことからも分かるように、LMISは大京グループの総合インフォメーションセンターであると同時に、営業サポートという重要な使命を担っているのである。
LMISは2001年4月に、それまでアウトソーシングで行っていた業務をインハウスに切り替えるかたちで本社内に移設された。インハウス化に至る背景には、同社が掲げる経営理念「お客さま第一主義」を具現化する方策のひとつである“現物・現場販売”の推進があった。
旧来のマンション販売は“青田売り”といって、土地を仕入れたらモデルルームを作り、折込チラシなどで見学者を募るという方法で行われていた。この場合、モデルルームは代表的な間取りのみを作るため、完成後に実際の部屋とのギャップが生じるケースがしばしば見られた。これでは本当の満足をお客さまに提供できないと考えた同社では、5年ほど前から、モデルルームではなく実際の土地・建物の構造・外観・部屋を見せることで、十分に納得してから購入してもらう“現物・現場販売”へと販売方法を変更したのである。そして、ひとりでも多くのお客さまをスムーズに現地訪問へ誘導するために、電話対応の強化を図ったのだ。
また同社では、同社の全お客さまデータを蓄積した顧客データベースシステムを独自に開発。個人情報保護の観点から、このシステムへのアクセス権を担当者のみに限定することも、インハウス化の大きな理由のひとつであった。
さらに、もうひとつの理由として、リード情報獲得方法の変更が挙げられる。同社ではそれまで、アウトバウンドによりリードを獲得してきたが、留守番電話機能の装備や、着信者に発信者番号を知らせるナンバー・ディスプレイ・サービスの開始などにより、対話率が低下し始めた。これに限界を感じた同社は、従来からの方法に代えて、問い合わせや資料請求などのインバウンド・コールに対してセールストークを展開していく施策を打ち出した。しかし、物件数が多くその所在も全国に及ぶだけでなく、用件もさまざまなために対応は一様にはいかない。そこで、常にオペレーションに社員の目が届くインハウスを選択したのである。
ひとつの番号で一括対応 専任のオペレータが現地訪問を促進
LMISの具体的な業務内容は、①新築マンションに関する問い合わせ受付、②資料請求受付、③物件紹介、④グループ会社に関する問い合わせ受付など。主に購入検討者を対象としているが、LMISのフリーダイヤル番号の露出度が高いことから、入居者からも問い合わせが寄せられるという。LMISでは、こうしたインバウンド業務に対応しながら、お客さまのニーズをつかみ、営業サポートを行っているのである。トレーニングを受けた専任のオペレータがタイミングを逃さず的確かつ迅速に対応し、現地訪問を促進するために、全国各地からのコールに一括して対応しているのが特徴だ。
電話窓口には、お客さまが電話をかけやすい環境を作り、より多くのリード情報を獲得するために、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを導入。番号は語呂合わせのいい0120-117406(イイナホーム)をアウトソーシング時代から引き続き使用している。
現在同社では、新築マンションの折込チラシや現地の看板、ダイレクトメール、新聞広告、ホームページにLMISのフリーダイヤル番号を記載しているが、ひとつの番号に統一することで地域ごとに各支店のフリーダイヤル番号を周知する必要もなくなり、効果的かつ一元的なPRにも役立っている。
同社のホームページ。右上に表示されているフリーダイヤル番号は、どの画面へジャンプしても常に表示される仕組みになっている
オペレータ対応と留守番電話機能で24時間の受付体制を実現
LMISのスタッフ数は、オペレータ19名、スーパーバイザー6名、マネージャー1名の計26名。常時8~9名が対応に当たっている。
フリーダイヤルの受付時間帯は、オペレータ対応が9時から20時までで年中無休。オペレータ対応終了後は留守番電話で対応し、翌日コールバックすることで、24時間の受付体制を実現している。
ではここで、実際のコールの流れを見てみよう。まず、9時から20時の間にLMISに着信したコールは、オペレータにつながる。オペレータは、既述の顧客データベースシステムでこれまでのやり取りを確認しながら対応。用件とそれへの対応を入力し、コンタクト履歴を更新していく。初めてのお客さまの場合は、用件のほかに住所、氏名、電話番号などを伺い、顧客データベースシステムに登録する。また、お客さまが資料請求や現地訪問を希望した場合などには、顧客データベースシステムとは別の掲示システムにアラート情報として入力し、現場や営業担当者との連携を図っている。
一方、20時以降に着信したコールについては、既述の通りだ。コールバックした後は、オペレータ対応と同様の流れになる。
同社では、電話のほかにインターネットでの各種問い合わせ受付を行っており、これへの対応はLMISではなく、営業推進部内のインターネットチームが対応に当たっている。ここでの対応履歴も、顧客データベースシステムに登録。チャネルを問わず一貫した対応を実現している。
お客さまの氏名、住所、電話番号、eメールアドレス、すべてのコンタクト履歴が蓄積されている顧客データベースシステムは、 LMISが迅速かつ的確な対応を提供する上でなくてはならない存在となっている。しかしこれは、LMISの業務にカスタマイズして作られたのではなく、組織営業の推進を目的に構築されたものだ。情報を常に最新に保ち、LMIS、インターネットチーム、現場などの担当者で共有することで、同社とお客さまとのあらゆる接点において的確な対応を行っているのである。
また、お客さま情報を物件ごとに管理していると、ひとりのお客さまが複数の物件に登録されることがある。これはひとりのお客さまに対して複数の営業担当者がアプローチする結果を招き、一貫したコンサルティングができなくなるばかりか、お客さまに不信感を持たれかねない。顧客データベースシステムは、こうした事態を防ぐことにも役立っているわけだ。
LMISで収集した情報を分析 結果を担当者間で共有
LMISに寄せられる1日の平均コール数は、約200件。このうち新築マンションに関する問い合わせが7割と最も多く、残りの3割は中古物件に関する問い合わせや入居済みのお客さまからの各種問い合わせなどとなっている。LMISでは、収集した情報から媒体効果や反応率を分析し、関連部署にフィードバック。関連部署ではこの情報に基づき、次回のプロモーションで利用する媒体を検討するなどしている
という。
同社では、木曜日と金曜日の新聞に折込チラシを入れることが多いため、金曜日から日曜日の午前中に比較的多くのコールが寄せられる。また、コールのほとんどはオペレータ対応の時間内に寄せられており、時間外のコールはごくわずかとなっている。
ここで課題となるのが、高品質の対応を実現するために、短時間での雇用はしておらず、出勤日数も週4~5日と社員に近い勤務体系を採っているがゆえに発生する、オペレータの空き時間の活用法だ。LMISでは、的確な対応をするための情報メンテナンスなどのデスクワークを行うことで、無駄のない人材活用に努めている。
一方、インターネットによるマンションの資料請求件数は、2002年4月から2003年3月までの1年間で、約3万件。このうち2,300件が契約に至ったという。ちなみに、同期間のホームページ(トップ画面)へのアクセス数は、約81万件となっている。
オペレータのスキルアップが課題
アウトバウンドによる営業では効率的なリード獲得が難しい時代、インバウンドコールに対していかに営業していくかが、不動産販売において重要な要素となることは冒頭で述べた通りだ。インバウンド業務から自然な流れでセールストークを展開するために、同社ではオペレータの教育に注力している。
導入研修、フォローアップ研修ともに、指導に当たるのは社内のスタッフ。まず新人オペレータには、電話応対と不動産業に関する基礎知識、端末の操作方法などの導入研修を1カ月間実施した後、スーパーバイザーに付いてOJTを行う。独り立ちするまでに、平均3カ月を要するそうだ。また、独り立ちしたオペレータに対しては、必要に応じて随時フォローアップ研修を行っている。ここでは、物件に関する問い合わせを営業担当者や現場につなげる手配率や、単なる問い合わせを資料請求にまで引き上げた、あるいは資料請求を現場訪問に誘導した件数をランクアップ指数として評価し、目標に達していない点を重点的に指導する。このほか、モニタリングやテープチェックで抽出された課題をフィードバックしている。
LMISでは、今後も継続的にオペレータの指導・育成に努め、スキルアップを図っていきたいとしている。
LMISのオペレーション風景。通常のオペレーションブースはパーティションで仕切られているが、オペレータがどのような対応をしているかSVが把握できるよう、あえてパーティションを省いている
よりスピーディーなフィードバックを目指して
さらに今後は、インターネットと電話の機能を融合させ、ファースト・コンタクトのチャネルがインターネットであっても電話であっても最適な情報を提供し、より一層スピーディーに関連部署にフィードバックしていく考え。ファースト・コンタクトは、マンション購入のニーズが高まっている状態でなされるケースが多いため、ここでしっかりお客さまのニーズをつかんでおくことが成約率の向上につながるのである。
また、たとえ契約に至らなかったとしても、今後、条件に見合う物件が出てくれば契約成立の可能性があるため、こうしたお客さまとの関係を継続させる施策を強化することも課題としている。
ここで注意しなければならないのが、個人情報の取り扱いだ。住基ネットのスタートや相次ぐ顧客情報漏えいのニュースで一般生活者の個人情報に対する意識が高まる中、個人情報保護への取り組みには万全を期したいところ。同社では、今後の動向を見つつ、取り組みの方針を固めたい考えだ。