コンタクトセンター最前線(第8回):機能別センターで信頼獲得と満足度向上を推進

日本サプライヤー(株)

エステティックサロン「エステ・キューズ」 の経営、および化粧品・エステ関連商品の開発・販売を手掛ける日本サプライヤー (株) 。 バブル経済の崩壊後に創業したにもかかわらず、同社が推進するコミュニケーション戦略が実を結び、着々と店舗数を拡大、右肩上がりの成長を続けている。 今回は、コミュニケーション戦略の要である、3つのコールセンターについて話を伺った。

エステティックサロンのイメージを一新し20代OLの支持を獲得

 日本サプライヤー(株)が経営するエステティックサロン「エステ・キューズ」(以下、キューズ)。2年ほど前に放送された「あとちょっとの女」をキャッチフレーズにしたテレビCMのエステティックサロンと言えばお分かりいただけるだろうか。
 キューズの創業は1992年。この時すでに、ちまたには大手エステティックサロンが軒を連ねており、後発で知名度の低いキューズが、同じ市場に戦いを挑んだところで勝ち目がないのは明らかだった。そこで同社では、ターゲットを20代のOLに絞り込んでPRを展開。加齢に伴う肌の衰えや体形の変化を未然に防ぐことで美しさを保っていく「予防エステ」という新しい概念と、従来のエステティックサロンのイメージを一新した“オープン・カジュアル・フレンドリー”というサロンコンセプトによって、気軽に通えるサロンとしてお客様の支持を獲得。着々と会員数を拡大していった。2002年7月現在の会員数は、約10万人。店舗数は、北は北海道から南は沖縄まで全国87店舗に及ぶ。
 会員数と店舗数の増加に比例して、売上高も右肩上がりに伸びていった。創業から7年目に当たる1998年には、100億円を上回る売上高を達成。2001年には、約125億円を売り上げた。2002年は、145億円を目標としている。

3つのコミュニケーション戦略

 キューズの飛躍的な成長の背景には、3つのコミュニケーション戦略がある。
 ひとつ目は、「エステコール」。これは各サロンのエステティシャンが、直接、電話で来店案内を行うもの。大手エステティックサロンに比べ知名度の低いキューズでは、ひとりでも多くのお客様にサロンの存在を伝え、実際にサービスを体験していただきたいと考えたわけだ。しかし、エステティックには、「本当に成果が上がるのか」「不要なものを売りつけられるのではないか」といった不安がつきまとう。同社では、その不安を払拭するために、「エステコール」を実施。エステティシャンが直接お客様と話すことで、キューズの魅力を的確に伝えると同時に、お客様とエステティシャンが信頼関係を築き、「こんなエステティシャンがいるなら行ってみたい」と思っていただけることを期待したのだ。
 2つ目は、お友達紹介システム「キューズ・キャリア・クラブ」。これは実際にエステに通っているお客様を会員とし、友人・知人にエステ・キューズを紹介していただくというもの。どのような媒体よりも信頼度が高く、説得力のある“口コミ”効果を期待しているのだ。同社では、キューズ・キャリア・クラブの発展は、顧客満足のバロメーターであると考えている。
 そして3つ目が、広告である。創業当初はテレビCMなどのマスメディアは用いず、エステコールによるテレマーケティングを中心にPRを展開していたが、現在では、テレビや雑誌などのマスメディアを通じて広く情報を発信している。エステティックをより身近に感じ、美しくなることの楽しさを知っていただくことが目的だ。加えて、ホームページやメールマガジンを活用して、最新の情報を提供。インターネットを介したコミュニケーションも推進している。

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エステ・キューズのPR広告。キューズサロン案内センターのフリーダイヤル番号を目立つように掲載している

コミュニケーションの要は“電話”

 前述の通り、同社では、あらゆる媒体を活用して顧客とのコミュニケーションを推進しているわけだが、中でも“電話”を活用したテレマーケティングは、コミュニケーションの要であると同時に、ビジネスの要ともなっている。
 同社では、前出のエステコールと並行して、テレマーケティングによるPRを展開。図表1のように、「マーケティングセンター」「サロン案内センター」「お客様相談室」の3つのコールセンターを開設して、見込客の獲得と顧客満足度の向上に努めている。各コールセンターの概要は以下の通り。

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 まず、マーケティングセンターは、アウトバウンド・センターとして1996年11月に開設。同社のターゲットである20代OLのエステティックへのニーズを探るほか、美容に関する悩みをヒアリングするアンケート調査を実施し、データを蓄積している。アンケート回答者には、謝礼としてエステ1回分の招待券を進呈。この到着を確認すると同時に、予約を促進することも大切な業務となっている。
 同センターは、札幌、仙台、東京、横浜、大宮、名古屋、大阪、福岡、沖縄の9カ所に設置。各センターでは10~20名のPRスタッフが業務に当たっている。1カ月当たりの発信呼数は、全センター合計で約9万コールに及ぶ。
 次に、サロン案内センターは、テレビCMや雑誌広告を見た方からの問い合わせや、無料体験エステの申し込みを受け付けるインバウンド・センター。 東京・恵比寿の本社内に、マーケティングセンターと同じく、1996年11月に開設した。受付時間帯は、月~金曜日の午前10時~午後10時までと、土日・祝日の午前10時から午後7時まで。対応に当たるスタッフ数は4名で、1カ月当たり約1,500件のコールに対応している。
 問い合わせや無料体験エステの申し込みはホームページからも可能となっており、これらへの対応業務も同センターで担っている。
 そして最後は、お客様相談室。創業から3年目に当たる1994年1月に設置された。これは、サロン利用者からの問い合わせやご意見を電話とeメール、そしてサロンに設置しているエコーハガキで受け付ける窓口。サロン案内センターと同じく、本社内に設けられている。
 電話による受付時間帯は、月~金曜日までの午前10時~午後7時までで、土・日は休業。回線数は2回線で、3名のオペレータが対応に当たっている。
 同センターに寄せられるコール数やその内容は、公表しないとのことだが、同社では、お客様の声を真摯(しんし)に受け止め、迅速な対応をするとともに現場へフィードバック。サロンの運営や商品企画に役立てているという。
 現在、サロン案内センターとお客様相談室の電話窓口には、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを採用している。採用の目的は、1カ所で全国のお客様に対応しているため、遠方のお客様でも通話料を気にすることなく電話ができる環境を整え、多くの声を集めること。同社にとって、お客様の声は貴重な財産なのである。サロン案内センターのフリーダイヤルは、携帯電話やPHSからの通話も可能だ。

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エステ・キューズホームページ画面(URL:http://www.cuez.co.jp/)(写真左)
無料体験コースオンライン予約画面(写真右)

責任を持って対応するためにインハウスを選択

 コールセンターの運営方法としては、大まかに分けると ①コールセンターの設備からスタッフの教育・管理などすべてをテレマーケティング・エージェンシーなどに委託するアウトソーシング、②マネジャー、スーパーバイザー、オペレータといったスタッフを自社センターに派遣してもらうインソーシング、 そして③設備からスタッフの教育・管理などすべてを自社で行う インハウスがある。最近では、スタッフのシフト管理など煩雑な業務からの開放や、低コスト運営の実現、また“餅は餅屋”といった考えから、 コールセンタ ー運営ノウハウを持つテレマーケティング・エージェンシーなどに委託するケースも多く見られる。
 しかし同社では、いずれのセンターもアウトソーシングは行わず、インハウスのかたちをとった。その理由は、責任ある対応の実現にある。例えば、マーケティングセンターの場合、教育の行き届いたオペレータが対応することで、一部の企業が実施している悪質なテレアポと混同されることを防ぐためだ。電話を活用したOne to Oneのきっかけ作りも、オペレータのマナーや応対が悪ければ台無しになってしまうのである。従って、当然、オペレータの研修には力を入れている。導入研修の後、マニュアルに則したオペレーションを実施。OJTを重ねることによってオペレータの熟練度を増し、スキルアップを図っているという。
 また、お客様相談室の場合は、外部講師を招いて講演を行うほか、各消費者センターから同業他社や異業種のコールセンターに寄せられたお客様の声を入手し、センター内で情報を共有。ケーススタディとして応対の参考にしている。日々の業務が研修でもあると考え、定期的な集合研修は行っていないが、新サービスの投入時など、必要に応じて随時、研修を実施して いるという。

お客様の声のフィードバック方法を模索

 マーケティングセンターで実施したアンケート調査の結果と、サロン案内センター、およびお客様相談室に寄せられたコンタクト履歴は、センターごとに専用のフォーマットに入力され、紙ベースで保管されている。データベース化されていないからといって、履歴を活用していないわけではない。例えば、痩身の無料体験を希望するお客様が増えている場合には、ボディ商品の投入やボディ商品をメインにした広告を作成するといった具合に、アンケート結果を商品企画やマーケティングに活かしている。また、車で通うお客様の要望に応えて専用駐車場を追加契約したなど、細かなケースが多々あるという。しかし、まだまだ活用しきれていないのが実際のところ。同社では、調査結果のアウトプットをどのようなかたちで行っていくか、また、商品企画やマーケティングへ情報をスムーズにフィードバックする流れをいかに作っていくかが今後の大きな課題であるととらえている。
 また、IVRなどのコールセンターシステムを導入していない同社では、広告出稿後などコール数が増加する場合でも、現在のところすべてマンパワーで対処している。現状は特に大きな問題もなくセンターを運営できているが、今後の会員数の増加に伴い、今の体制では対処しきれなくなることも予想される。そこで同社は、コールが増加しても取り逃すことなく迅速に対応できるよう、将来的にはシステム導入も検討する必要があると考えている。

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東京マーケティングセンターのオペレーション風景。デスクと椅子、そして電話という、必要最小限の設備で運営されている

創業10周年を迎えてさらなる発展を目指す

 今年、創業10周年を迎えた同社。今後も同社では、One to Oneのコミュニケーションを可能にするテレマーケティングのメリットと、認知度、企業イメージ、社員のモチベーションを高めるために効果的なマスメディアのメリットをうまく活用して、新規顧客を獲得していく意向。これまでターゲットとしていた20代OLだけでなく、30~40代の女性にまで市場を拡大していきたいとしている。
 また、より一層の顧客満足度向上に努める考え。具体的には、サービス充実の一環として、リラグゼーションメニューを導入するほか、医療機器メーカーとの提携により信頼性・安全性の高い商品を開発し、低価格で提供することで、お客様にやさしい企業を目指していくという。


月刊『アイ・エム・プレス』2002年8月号の記事