通信ネットワーク最前線(第63回):コーポレート・ブランド・マーケティングとCRMを推進

(株)セガ

1951年に創業した大手ゲームメーカー、(株)セガ。全社的にCS向上を推進する中で、コーポレート・ブランド・マーケティングとCRMの担い手として日々の業務に取り組む、お客様相談室について話を聞いた。

お客様相談室4つのミッション

 かねてより全社的なCS向上の取り組みを推進してきた(株)セガでは、5年前にISO9001の認証を取得。その活動における品質目標のひとつとして、今期は“お客様との約束を守る”という観点から各部署ごとに目標設定を行い、CS向上に努めている。同社では、その目標を達成するために、名刺サイズのカードに全社的な品質方針、中期の目標、今期の目標、各部の目標を記したものを作り、社員ひとりひとりに携帯させることで周知を徹底。お客様相談室においては、「電話取得率の向上」「一次受付での完了率を高める」「他部署に依頼した案件の進捗状況を管理し、回答期日を守る」といった目標を設定し、日々の業務に臨んでいる。
 CS向上を推進する中で、お客様相談室に課せられた大きな役割がある。それは、ユーザーの声から市場のニーズを把握し、お客様を囲い込むこと。そして、お客様対応を通じて企業としての信頼を獲得し、ブランドロイヤルティを高めることの2つだ。お客様相談室では具体的なミッションとして次の4つを掲げている。
 まずひとつ目が、日々寄せられるお客様の問い合わせの中からニーズを読み取り、それに合わせて迅速かつ適切な対応を提言し、実施すること。
 2つ目が、クレームの再発を防止すること。同社では、クレームを発生させないために、製造段階において品質保証部が約100項目におよぶチェックを行っている。しかし、熱心なお客様が多いため、品質保証部のチェックで見つけられなかったことをお客様に指摘されることがある。このような場合にクレームの再発を防ぐことがお客様相談室のミッションのひとつとなっている。
 3つ目が、製品を販売した後に寄せられる問い合わせや相談、意見・要望に対応する中で、お客様の考えや指向性を把握すること。
 そして4つ目が、お客様の声を営業や開発部門にフィードバックし、商品やサービスに反映させることである。図表1の通り、お客様相談室はコールセンター、管理企画チーム、運用チーム、システムチームの4つの組織に分かれている。そして、コールセンターで受け付けたお客様の声に対して運用チームが主観的な判断を、システムチームがマーケティング・データをもとに客観的な判断をくだし、それを管理企画チームが取りまとめて各開発・関連部署にフィードバックしている。
 以上のことから、お客様相談室では、お客様と自社の間に立ち、お客様に対しては迅速で的確な対応を行う一方で、お客様の声を各開発・関連部署にフィードバックし、よりよい製品の開発やサービスの提供に活かすという、企業経営における最も重要な役割を担っていると言えよう。

【図表1】ユーザーの声を反映するまで

情報の一元管理を実現

 お客様相談室では、製品やサービスのカテゴリー別に「ドリームキャストサポート」「PCユーザーサポート」「セガモバイルサポート」「セガカスタマーサポート」「プライズユーザーサポート」「オンラインサポート」など、12の窓口を設け、電話とeメールで問い合わせや相談、意見・要望を受け付けている。
 受付時間帯は窓口ごとに異なるが、基本的には月曜から金曜日の10時から18時までで、土・日は休業となっている。
 お客様相談室では、コールセンター業務を全面的にテレマーケティング・サービス・エージェンシーに委託しているため、オペレータはすべて委託先からの派遣スタッフで構成されている。オペレータはお客様の話を正確に聞き取り、その声を経営陣に届けて会社の経営を動かすほどの力を持つため、優れたコミュニケーション・スキルや豊富な業務スキルを持つだけでなく、情報の重要性に対しても敏感でなくてはならない。また、コールの状況に合わせて迅速な増員を行うなど、急な受付体制の変更を可能にするために、現在の体制を選択したという。
 同社では、大半の電話受付窓口にNTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルサービスを利用している。2001年4月より、NTTドコモに限って携帯接続が可能となったため、同社では携帯接続をスタート。Jフォンとauについても同サービスが追加され次第、導入する意向だ。現在、Jフォンおよびauユーザーには、一般の番号にかけていただくよう案内している。
 お客様相談室では、1年ほど前までは同フリーダイヤルサービスを利用していたが、一部のお客様からの長電話が頻繁にあり、ほかのお客様への対応に影響がでてきたため、ナビダイヤルに変更した。これによって削減できた通話料は、お客様サービスの充実を図るために活用している。
 セガではネットワークサービスも提供しているため、ネットワーク上のトラブルが発生した場合やサービスの切り替え時には多くの問い合わせが寄せられるといった具合に、お客様相談室のコール状況は非常に波がある。そのため、お客様相談室ではPBXで回線数を制御。予測コール数に基づき、フレキシブルで効率的な受付体制を実現している。
 また、お客様相談室内には、「お客様サービスセンター」が設置されている。これは、例えばプレゼントされたドリームキャストなので購入したお店がわからない場合など、販売店での交換や修理が受けられないお客様を対象としたサービス窓口で、交換、修理商品の物流機能も担っている。
 お客様相談室では、これらのセンターにおける情報の一元管理を目的として、1997年、コールセンターシステムにNECネクサソリューションズ(株)のView工房を導入。これに、電話やeメールの対応履歴、商品交換データを統合するために、さまざまなカスタマイズを行った結果、現在ではフルカスタマイズに近い状態で稼働している。このように、大々的なカスタマイズや、必要に応じたカスタマイズを追加できることがView工房導入の決め手となったという。
 View工房の導入にともない、オペレータは端末にお客様の氏名を入力するだけで対応履歴を瞬時に参照し、より一層、きめ細やかな対応が可能となった。また、蓄積されたデータから、例えばどの商品に、どのような内容の問い合わせが、何件あったか、といったマーケティング・データを迅速に抽出することが可能となった。

eメールはコールの10%

 お客様相談室の告知媒体には、ホームページ、ゲーム雑誌、製品パッケージ、取り扱い説明書を活用している。
 最近の受付状況を見ると、お客様相談室に寄せられるコール数は月間3万~5万件。コールが最も多く寄せられる曜日は休み明けの月曜日。同じく時間帯は、受付開始時間の10時から11時ごろまでとなっている。また、お客様から寄せられるコールの内容としては、発売日や価格に関する問い合わせ、修理やネットワークサービスに関する相談、そして「ゲームが面白くないから返金してほしい」「最初の画面でフリーズする。これはバグじゃないか」というクレームなど、多岐にわたる。
 eメールの月間受付件数は、コール数の約10%に当たる約3,000件。このうち、約半数が携帯からのメールとなっている。電話と同様に、メールで問い合わせてくる内容もさまざまであると同時に、浅いものから深いものまである。例えば携帯メールの場合、パソコンからのeメールに比べて文字数が少ないため、単に「つながらないよ」といった一言のメッセージしか送られてこないものもあれば、パソコンからのeメールで、夜しか時間がないという理由から、回答が長文になる質問まですべてeメールでの対応を希望されるお客様もいるといった具合だ。

オペレータの能力や性格に合ったサポートを実施

 同社のお客様は、同社商品に対して非常に思い入れの強い方が多いため、同社の社員と同様、あるいはそれ以上に商品に精通している方もいる。そのようなお客様に対応するためには、オペレータにもそれなりのスキルが必要だ。そこでお客様相談室では、研修カリキュラムを設けるほか、オペレータの能力や性格に合わせてきめ細かいサポートを実施することにより、オペレーション品質の維持・向上に努めている。
 研修カリキュラムは、配置前の導入研修と配属後のフォロー研修の2つに分かれている。まず導入研修では、コミュニケーション・スキル研修、業務スキル研修を実施している。これについては委託先で行われている。そして配属後は、OJTに入る。導入研修の期間は約1カ月となっているが、中には半月ほどでOJTに入るオペレータもいるという。OJTではスーパーバイザーがブースの後ろに付いてサポートする。こうしたプロセスを経てひとり立ちするまでの期間は1カ月半ほどとなっている。その後は、モニタリングを行い、その結果をひとりひとり面接してフィードバックするほか、フォローアップ研修を行っている。
 また、コールの空き時間を利用して、オペレータに実際にゲームをさせたり、商品に触れさせたりすることで、お客様の視点に立った対応ができるよう努めている。

社員への啓蒙活動が課題

 ここで、お客様の声の活用について、その流れを詳しく見ていきたい。
 図表2は、冒頭の4つのミッションを体系的に示したものである。ここでのポイントは、高品質なお客様対応を通じて信頼を獲得し、セガのブランド・ロイヤルティを高めてお客様を囲い込むというコーポレート・ブランド・マーケティングと、お客様のニーズを各開発・関連部署にフィードバックすることにより、お客様の望む商品を提供することで関係性を強めるCRMの2つのマーケティング・ルートがあること。これを推進するためにお客様相談室では、役員および各部の部長を対象にした月次報告会議を実施。経営陣の判断を仰ぎ、既存商品の改善や新サービスの開発、サービス品質の向上などに反映させている。
 ゲーム業界の特徴として、細かい点においてまで要望が寄せられ、ひとつ解決してもまたそれに対してさらなる要望が寄せられるという傾向が強い。そこでお客様相談室では、前出の2つのマーケティング活動を螺旋を描くように展開していくことが、ファンを囲い込み、売り上げの安定を図る。そして、アフターサービスへの信頼が新規顧客の獲得――ひいては事業の拡大につながるものと考えているのである。
 このほか同社では、年に1~2回の頻度で顧客満足度調査を実施している。調査の対象となるのは、これまでにお客様相談センターにコンタクトしてきたお客様。この中から8,000名を抽出して、アンケート票を郵送している。調査項目は、大きくわけてお客様相談センターの対応や修理、商品、セガに対しての要望、質問などとなっており、合計で約50項目に及ぶ。結果は、報告会を通じて各開発・関連部署にフィードバックしている。
 今後、お客様相談室では、これまで以上にお客様の声を活用することにより、CRMを充実させるとともにお客様の信頼を勝ち得、ブランド・ロイヤルティを高めていく意向。目下の課題は、全社員の意識にこの2つのマーケティングを植え付けていくこととしている。
 また近年、コールセンターにおける受付チャネルの多様化が進んでいることをかんがみ、質的にも量的にも充実を図っていきたいとしている。

【図表2】
東京都内にあるお客様相談室。

東京都内にあるお客様相談室。男性オペレータの姿も多く見られる



月刊『アイ・エム・プレス』2001年12月号の記事