通信ネットワーク最前線(第58回):24時間オペレータ対応でお客様に安心感を提供

東京三菱ティーディーウォーターハウス証券(株)

2000年3月に東京三菱銀行と北米・TDウォーターハウス社を主要株主として設立された、東京三菱ティーディーウォーターハウス証券。証券業界初の24時間・365日オペレータ対応のコールセンターを開設。多くのお客様に最良のサービスをリーズナブルな料金で提供することを目指している。

ビギナー対応力第一位を獲得

 日本国内はもちろん、海外でも業務を展開し、信用力をもつ東京三菱銀行。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、香港、日本などグローバルに事業を展開している北米のディスカウント・ブローカー、TDウォーターハウス社。この2社が主要株主となり、2000年3月、東京三菱ティーディーウォーターハウス証券(株)が設立された。
 東京三菱ティーディーウォーターハウス証券は、インターネットと電話を介して証券取引を行うオンライン証券会社。東京三菱のグループ力に裏打ちされた多岐にわたるサービスと、グローバルな認知度と信頼性の高さを誇る北米・TDウォーターハウス社の豊富な経験を活かして、初心者からベテラン投資家まで、さまざまなお客様に最良のサービスをリーズナブルな料金で提供することを目指している。
 同社では、営業開始後、アクセスチャネルを積極的に拡大し、お客様の利便性向上を推進。現在、注文受付には、インターネット、コールセンターのほか、プッシュホントレード、iモード、パームを利用している。現在、携帯電話対応のホームページはiモードのみとなっているが、将来的にはezWEBとJ-SkyWorkerにも対応していく意向だ。
 店舗を持たない同社においては、唯一、コールセンターがお客様との接点となる。同社では、同年7月にコールセンターを開設して事業をスタート。他のオンライン証券会社では行われてない、24時間・365日のオペレータによる電話サポートを実施することにより、お客様に大きな安心感を提供することを目指している。何時でも必要な時に“人”が対応してくれることは、証券ビギナーには非常に心強い。加えて、同社の取扱商品のひとつであるナスダック、アメックス、NY証券取引所の米国株約5,000銘柄は、日本時間の深夜に取り引きされるため、その時間帯のサポートを必要とするお客様が多いのだ。また、コールセンターと両輪をなすホームページも、基本的な操作のガイド機能を備えているなどわかりやすい設計で、コールセンター、ホームページともにお客様からの評判は良いという。2001年1月18日発売の日経ネットトレーディングに掲載された「はじめてのネットトレード完全ガイド」のビギナー対応力ランキングで、第一位を獲得したことがそのことを証明していると言えよう。

親会社のサービス・スタンダードを継承

 コールセンターは、東京の六本木と神保町の2カ所にある。NTTのコールアロケーションシステムを使用することにより、オーバーフローした時や災害時に備えて、相互にバックアップ機能を果たしている。
 主な業務内容は、口座開設をはじめとする各種問い合わせ受付、注文受付、意見・要望の受け付けの3つ。Eメールでの問い合わせにもコールセンターのオペレータが対応している。
 電話回線にはNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを導入している。導入の理由は2つある。ひとつ目には、24時間・365日、いつでも気軽にお問い合わせいただける体制を作ること。2つ目には、お客様の利便性を向上させ、顧客満足度を向上させることだ。携帯電話・PHSからは一般加入回線で対応。使用電話回線数は、両方併せて138回線となっている。
 オペレータ数は、2つのセンターを併せて約30名。すべてのオペレータは証券取引を行う時に必要とされる証券外務員資格の2級を取得しており、さらに、90%のオペレータが同資格1級を取得しているという。親会社であるTDウォーターハウス社は、インターネット取引におけるシステムの使い勝手やサービス内容に定評があり、北米地域では顧客満足度No.1にランク・インしている。同社では、そのサービス・スタンダードを日本にも浸透させる方針。放棄呼の割合を5%未満に留める、オペレータに着信してから5~6秒で通話を開始するなど、高いサービス・レベルを設定している。
 コールセンターの告知媒体には、新聞、雑誌、ホームページを活用。新聞は月に3~4回、雑誌はマネー誌を中心に月に2誌の頻度で出稿。マス媒体による告知を定期的に行うことで、認知度の向上を推進している。

東京・六本木のコールセンター

東京・六本木のコールセンター


優れた顧客サポート機能を構築

 同社では、2000年11月より、オペレータを介さずにIVR(自動音声応答システム)で株価照会から株式売買まで一貫して対応するサービス「プッシュホントレーディング」をスタートした。これまでのIVRの機能に、株式の売買注文、注文照会、保有銘柄の確認、暗証番号の変更機能を追加。注文については、執行前であればホームページでの注文も含めて、訂正・取消も可能とした。
 また、IVRの機能充実を図る一方で、操作に迷ってしまうお客様のためにサポート機能を強化。お客様からの電話をつないだまま、オペレータが別回線を使用してIVRに接続し、ナビゲートできるシステムを構築した。一度のナビゲートでお客様に操作を熟知していただくことは難しいが、根気よく何度かナビゲートしていくうちに操作を覚え、ひとり立ちしていくという。
 また、インターネットにおいては、北米・TDウォーターハウス社、東京三菱銀行、システムインテグレータのノウハウを持ち寄り、ウェブ・コラボレーション機能を構築。お客様と同じ画面を見ながら対応することにより、スムースで的確なサポートを実現している。
 同社では、オペレータによる注文の株式売買委託手数料を、約定金額600万円以下の場合、成行注文で3,800円、指値注文で4,400円と設定しているのに対し、プッシュホントレーディングでは、成行注文で2,400円、指値注文で3,000円と、約30%割安に設定。また、インターネットによる注文では、約定金額500万円以下の場合、成行注文で1,900円、指値注文で2,500円とさらに安価に設定している。このユー ザーメリットを確実に提供するためには、必要不可欠なサポートと言えよう。
 また、今後、口座開設数が増えるにしたがって、お客様からの問い合わせや取引件数も増えていくことは想像に難しくない。こうした一種の顧客教育ともいえる取り組みを早期より行っていくことで、オペレータを介さずに取り引きや情報収集ができる自立したお客様を育成することは、大いに意味のあることなのだ。
 同社がビジネスを開始してからまだ1年経っていないが、短期間のうちに米国株やポケット株の取り扱いを開始したり、iモードへの対応やプッシュホントレーディングを開始するなど、新サービスの投入やチャネルの拡大を積極的に行ってきた。同社では、その都度、研修を実施。研修時間は、1商品・サービスにつき3時間程度となっている。このほか、ノーツ上に構築した商品データ等を全オペレータスタッフで共有。オペレータはそれを活用しながら自主的に学習できる仕組みになっている。同社では、オペレータに十分な教育を施すことにより、お客様対応のスペシャリストを養成。一歩進んだ対応を実現していきたいとしている。

コールの繁閑への対応策

 同社に限らず、インバウンド・コールセンターは受け身の状態であるため、どうしても業務に繁閑が生じる。この解消法として、同社では、オペレータの空き時間を利用してEメールでの問い合わせに対応。問い合わせへの回答メールは、48時間以内に返信するようサービス・レベルを設定している。
 加えて、アウトバウンドコールを実施。会社概要や口座開設申込用紙などがセットになったスターターキットを送付したお客様を対象に、口座開設申込書の記入方法と商品説明を行っている。
 そもそも投資家がオンライントレードを選択する理由のひとつに、証券会社の営業員と話しをしたくないということがある。しかし、テストコールの結果、電話を待っている年配のお客様も多かったことから、あらかじめ電話をかけることを了承してくださったお客様にだけフォローコールを実施している。アウトバウンドコールを本格的に実施したのは2000年12月から。現在、全資料請求者のうち約半数のお客様がフォローコールを希望しているという。

ホームページのトップ画面

ホームページのトップ画面(URL:http://www.tmtdw.com/)。すべてのページに
コールセンターのフリーダイヤル番号0120-365-321(365日さぁ通話)が表示されている


お客様の声の有効活用を推進

 コールセンターに寄せられる問い合わせ内容は、株価照会と口座開設に関するものが多く、後者は全体の問い合わせ件数の3~4割を占めているという。また、受注件数を方法別に見ると、インターネットが約60%、iモードが約20%、オペレータが約5%、そしてプッシュホントレーディングが約15%となっている。プッシュホントレーディング開始以降、その利用件数は徐々に増え、現在ではオペレータの3倍の注文件数を受け付けている。
 コールが多く寄せられる時間帯は、午前9時から11時と午後2時から3時。平均通話時間は3分10秒。日中に比べ、深夜の問い合わせは長くなる傾向があるという。
 受付状況は、日々のレポートで把握。設定値に満たない場合は迅速に改善を図り、サービス・レベルの維持・向上に努めているという。
 また、お客様から電話やEメールで寄せられた問い合わせや意見・要望、それにまつわるやり取りをすべてデータベース化。これらはすべてのオペレータが閲覧できるようになっており、日々の対応に活用されている。たとえば、Eメールへの返信に当たっては、過去に同様の問い合わせがあった場合には、以前の回答を流用することにより、均一な対応と業務の効率化を図っている。
 さらに同社では、これらの情報をサービスの改善に役立てている。具体的には、ホームページを迷わないようにわかりやすく作り変える、申込用紙の記入方法をわかりやすくする、スターターキットの軽量化を図るといった改善策を実施した(資料1)。
 このほか、IVRからオペレータにつながるまでに要する時間を短縮してほしいという要望があり、現在、改善に取り組んでいるところだ。
 今後も同社では、あらゆる投資場面を想定し、利便性、質ともに高いサービスの提供を目指していく意向である。

【資料1】 【資料1】

【資料1】左が旧バージョンのスターターキットで、右が新バージョンのスターターキット。ボリュームのあるパンフレットが複数ある旧スターターキットに比べると、新スターターキットはかなりスリム化されている。封筒も窓付きに変更した


月刊『アイ・エム・プレス』2001年7月号の記事