新電話事業「東京電話」の開始に備えてコールセンターを開設した東京通信ネットワーク(株)。同社コールセンターのインバウンド業務について話を聞いた。
「東京電話」開始に備えてコールセンターを開設
東京通信ネットワーク(株)(TTNet)は、1986年に行われた通信の自由化にともなって東京電力(株)などの出資により設立された、第一種電気通信事業者。以来、一貫して光ファイバーネットワークの拡充に努め、法人を対象に「高速ディジタル伝送サービス」「映像伝送サービス」「コンピュータ・ネットワークサービス」など、さまざまな通信サービスを提供してきた。
同社では、設立以来10年以上にわたって拡充してきた光ファイバーネットワークと、蓄積してきたノウハウを武器に、事実上、独占状態にあった市内電話市場への参入を決意。1998年1月より、市内から市外まで全国どこへかけてもお得なサービス「東京電話」をスタートした。
「東京電話」のサービスエリアは、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県の富士川以東(離島は除く)で、市内通話が3分9円、市外通話も最大32%(平日昼間・3分間通話例)安い通話料金で利用することができる。
申込方法は、所定の申込用紙に必要事項を記入して郵送するだけと簡単。同社では申込書を受け付けると加入登録を行い、お客様へ「開通のご案内」を送付、利用開始となる。無料で貸し出しているアダプターを取り付ければ、相手先電話番号をダイヤルする通常のかけ方でサービスを利用することができる。
告知には、寺内貫太郎一家をキャラクターに起用し、テレビ、新聞、雑誌、インターネット、交通広告などありとあらゆるメディアを活用。同社では、マスメディアを利用したPRを大々的に実施するため、1日数千本のコールが寄せられることを予測。大きな受け皿が必要だと考え、大規模コールセンターの導入を検討。システムの構築を開始した。
優れた操作性と業務管理のしやすさで業務の効率化を実現
同社において、すべての基本となる思想は“顧客サービスの向上”である。同社では、顧客サービスをレベルアップするためには業務の効率化が不可欠と考え、“人の手を煩わせず、洩らさず、効率良く”をモットーに、「優れた操作性」と「業務管理のしやすさ」にこだわったシステムの構築に取り組んだ。同社では、仕様検討から運用までに1年6カ月を要して、顧客登録、問い合わせ対応、アダプター発送管理、料金計算、請求書作成、封入封緘等を統合的に行い、資料請求受付から宛名を印字した封筒の作成、あるいは料金計算から請求書の作成までといった一連の業務を一貫して処理できるシステムを構築。投資金額は約45億円に達した。
システム構築に当たり、大量のコールを効率よく処理することと、オペレータのスキルや経験に左右されず、誰もが的確でスムーズな対応ができる仕組みを作ることを重視し、オペレータ端末の画面表示にさまざまな工夫を凝らした。そのひとつとして、「INDEX形式」が挙げられる。「INDEX形式」とはその名の通り、申し込み、問い合わせ、変更届けといった各種受付内容をオペレータの端末画面に見出し的に表示し、たとえば、問い合わせをクリックすると、加入申込や契約に関する問い合わせ、アダプターに関する問い合わせなど、さらに具体的な内容を表示する仕組み。お客様の用件に合わせてINDEXをクリックしていくだけで、対応に必要な画面を簡単に呼び出すことができるようになっている。
このほかにも、その場で回答できずに後日、折り返し電話をかけることになった問い合わせを管理する「宿題管理機能」、受け取られず戻ってきてしまった郵便物を管理し、効率よくリスト・クリーニングを行うための「不達管理システム」、オペレータがログインすると、受け答えの注意点やプロモーションに関する情報を表示して連絡事項を伝える「連絡画面」といった機能を設け、効果的、かつ効率的なオペレーションを実現している。
また、1999年1月より「マルチログイン方式」を導入。日が浅いオペレータは一般的な問い合わせのみ、半年経ったオペレータは第一に料金の問い合わせ、第二に一般的な問い合わせ、1年以上経ったオペレータは第一にアダプターに関する問い合わせ、第二に料金に関する問い合わせ、第三に一般的な問い合わせを受け付けるといった振り分けを自動的に行っている。同社では、問い合わせ内容別に異なる電話番号を設けているため、お客様の用件を着信と同時に判断することが可能となっている。このように電話番号をもとに問い合わせ内容を識別し、内容に応じてオペレータに自動的に電話をつなぐことで、無駄のない的確な対応を実現し、顧客サービスの向上と業務の効率化を図っているのである。
受付窓口にはお馴染みのフリーダイヤルを導入
同社では1997年10月、東京・池袋のサンシャインシティにコールセンターを開設。「東京電話」申込受付の告知活動が開始されると同時に稼動を開始した。池袋のコールセンターは、将来落ち着くであろうコール数を予測して作られた基幹のコールセンターと位置付けられており、同社では、別途オーバーフローセンターを設けてコールの取り逃しを最小限に留めている。オーバーフローセンターは、コール数の増減に応じてフレキシブルに受付体制を変更できるよう、アウトソーシングしている。
コールセンターは、サービスに関する問い合わせや資料請求を受け付ける「コールセンター」、料金の請求を行う「料金センター」、加入者に無料貸与されるアダプターや施設工事に関する問い合わせを受け付ける「LCRセンター」、加入者の登録を行う「登録管理センター」、1999年4月よりスタートした「東京電話インターネット」の利用者への、設定・接続に関するサポートを行う「ダイヤルアップサポートセンター」に分かれている。
コールセンターで働くスタッフの大半は大手テレマーケティング・サービスエージェンシーからの派遣スタッフで、現在、登録者数は約1,200名。常時約400名が勤務している。
インバウンド業務の受付時間帯は、平日の午前9時から午後9時までで、年中無休。受け付けには、NTTフリーダイヤルとTTNetフリーフォンを併用している。第一種通信事業者である同社では、NTTのフリーダイヤルと同様の、着信側が通話料金を負担するフリーフォンサービスを提供しているが、一般消費者への浸透度が高いことを理由にフリーダイヤルの導入を決定した。
前述の通り、問い合わせ内容ごとに異なる番号が設けられており、一般的な問い合わせがNTT0120-719-019(納得お得)とTTNet0081-151、料金に関する問い合わせがNTT0120-470-841(市内お安い)とTTNet0081-157、アダプターに関する問い合わせがNTT0120-08-0081とTTNet0081-156となっている。
コールセンター立ち上げ当初は、1日に5,000件のコールが寄せられた。過去最高は1998年1月のサービス開始当初で、1日のコール数は13万件に達したという。
コールセンター開設当時は約150回線のフリーダイヤルを導入していたが、その後、回線数の見直しを行い、段階的に削減。最近では、1999年7月より開始した「国際電話サービス」の受付窓口開設にともなって6月下旬に回線数の見直しを行い、フリーダイヤル85回線を70回線に減回線、フリーフォンを78回線から86回線に増回線した。現在同社では、既存のお客様に対してフリーフォンの告知を積極的に行い、利用を推進しているという。現在、回線別に見るコール数の割合は、フリーダイヤルが6割、フリーフォンが4割となっている。
各種サービスのパンフレットや申込書の数々。フリーダイヤルとフリーフォンの番号が併記されている
半年間で獲得した契約回線数は目標の2倍
寺内貫太郎一家をキャラクターに起用し、“納得お得”とゴロ合わせのよいフリーダイヤル番号を前面に打ち出した告知活動が効果を発揮し、「東京電話」の認知は確実に広がっていった。ちなみにTVCMは、加入料無料、月額1,750円の定額制で「東京電話」と併用すれば通話料金が3分8円となる「東京電話インターネット」のスタートにともない、新たなるCMを投入した。
「東京電話」の申し込み件数は、1日あたり約3,000件。1997年10月に加入申し込みの受付開始以来、驚異的なスピードで契約回線数を伸ばし、1998年3月には目標契約回線数の2倍にあたる100万回線を獲得、同年9月には150万回線を達成した。1999年5月末には、ついに200万回線を突破したが、これは関東圏内にある電話回線約2,000万回線の約10%に相当する。同社では、低料金とサービスのわかりやすさ、そしてTVCMが話題となり多くのお客様に支持されたこと、また、「東京電話インターネット」の開始が申し込みに拍車をかけ、加入申し込み受付開始からわずか1年8カ月で、200万回線を突破するに至ったものととらえている。
また、この7月より国際電話サービスを開始した同社では、市内から国際まで一貫したサービスを提供することにより、さらなるユーザーの獲得を期待。年間100万回線獲得を目標に努力している。
コールセンターの様子。オペレーション環境を良くするために、ゆとりあるスペースと圧迫感を感じさせない低めのパーテーションを採用した。
付加価値を提供するために
規制緩和が進む通信業界において、競争優位性の確保は重要な課題。同社では、顧客サービスで他社との差別化を図るべく、お客様と電話を通じて直に接するコールセンターで働くオペレータを“会社の顔”と捉え、オペレーション・スキルの維持・向上に注力していく意向。お客様は度々電話をかけてくるわけではないので、はじめにかけた時の印象が会社のイメージを決めてしまう可能性は高い。そこで同社では、お客様の立場に立った対応ができるオペレータの指導・育成に取り組んでいる。オペレータには基本的な研修の後、レベルアップ研修を実施。このほか、スーパーバイザーが抜き打ちでモニタリングを行い、言葉使いや対応の仕方をチェック、注意点をオペレータにフィードバックし、オペレーションの改善を図っている。また、お客様から寄せられた要望をまとめた事例集を作成し、トラブルになった経緯などから、どこが悪かったのかをスタッフ全員で考え、学ぶ機会を設けている。時には、お客様から寄せられるお礼の手紙や感謝の言葉をフィードバックし、オペレータの志気喚起に役立てているという。
また、サービス面では「ダイヤルアップサポートセンター」で、インターネット全般やパソコンに関するコンサルティング業務を行うことでサービスの拡大・強化を図り、お客様に付加価値を提供していく方針。
一方、システム面においても現状で満足せず、さらなるスピードアップを目指し、管理面においてもよりきめ細かくお客様の情報を把握し、より一層、顧客満足度の向上に努めていく意向である。
同社では、顧客満足度の向上が、最終的に企業のイメージ・アップにもつながることを期待している。コールセンターが担う役割は、今後ますます重要になってくるだろう。