消費者志向経営とお客さま相談窓口②
電話の向こうのお客さまを見据える

2019年12月28日
お客さま相談窓口は、個々のお客さまに企業のメッセージを伝えるとともに、その反応に耳を傾ける貴重な接点。お客さまからの電話やeメールなどによるコンタクトに対応するコミュニケーターは、お客さま対応のプロフェッショナルであるだけではなく、お客さまを洞察するプロフェッショナルでもある。連載第2回となる今回は、このコールセンターの機能とコミュニケーターのナレッジを活かした、お客さまのペルソナ ※1 作りにフォーカスしたい。

本連載のタイトルに掲げた「消費者志向経営」を推進する上では、まずは自社のお客さまをしっかりと見据え、お客さまの琴線に触れる商品・サービスを開発・提供することが大切である。自社のお客さま像を性や年代などで語る企業は多いが、定量的なアンケートをベースにこれらの基本属性に基づくステレオタイプ的なイメージを振りかざしているだけでは、お客さまを理解しているとは言えないだろう。こうした中、昨今ではさまざまな企業がさまざまな方法により、お客さまの可視化に取り組んでいる。

例えば通信販売を展開している企業では、日々、商品・サービスの購買履歴を蓄積・分析し、これに基づきキャンペーンを展開しているが、これらはあくまでも自社における過去の取引データであり、かつ通常は購買&非購買理由までは把握していないことから、ここからカスタマー・ジャーニー ※2 を描くのは容易ではない。また最近では、Webサイトのアクセスログやソーシャルメディア上のデータ、IoTにより収集した商品・サービスの利用履歴など、いわゆるビッグデータが注目されているが、これら複数の情報源から収集したお客さまのデータを一元的に管理している企業は限られているのが現状だ。

こうした中、いわば“フィールド・ワーカー”的に日々、マーケットに対峙しているお客さま相談窓口は、電話等の向こう側のお客さまをしっかりと見据え、お客さまの琴線に触れる商品・サービスを開発・提供する上で大きなポテンシャルを持っている。今日では、お客さま相談窓口に寄せられた“生の声”を社内各部門に共有するVOC活動を推進する企業は珍しくないが、中にはこれを一歩進めて、電話等の向こう側のお客さま像を可視化するべく、ペルソナ作りに取り組んでいる企業もある。

例えば、インターネット・バンキングで知られるソニー銀行(株)のお客さま相談窓口「カスタマーセンター」では、カスタマー・エクスペリエンスの向上を狙いに、2013年からペルソナ分析を導入。ベテランを中心としたコミュニケーター有志9名が1回当たり約2時間半のディスカッションやワークショップを7回にわたり継続することで、最終的に6名分のペルソナを開発。最終的な発表会には、コールセンター関係者のみならず、経営層や他部門のマネージャーなど約50名が参加し、メンバーによる各ペルソナになりきってのプレゼンテーションに大盛り上がり。ペルソナの導入により、センター内ではコミュニケーターの緊張感が緩和されてお客さま対応の底上げが実現、センター外では各部門の担当者が日頃の自分たちの業務をお客さまの視点に基づき見直すことができたとしている。※3

一方、お客さま相談窓口をはじめ、コールセンターにおけるペルソナ開発の支援に乗り出している企業もある。大阪市に本社を置くコールセンター・サービス・エージェンシーである情報工房がその代表格だ。同社代表取締役社長の宮脇一氏は、お客さまとの対話経験が豊富なコミュニケーターは、お客さま自身のことやお客さまにとって最適な商品・サービスの説明方法を熟知していることから、コールセンターにおけるペルソナ開発には大きな利点があると指摘。その成果として、コールセンターにおける効果的なトレーニングやマニュアルなどの開発、部門を超えたスタッフ間の意識の共有、お客さまの洞察を深めようというモチベーションの向上を挙げている。

次回は今回のテーマをさらに進めて、お客さま相談窓口による“お客さま目線”でのメディアやクリエイティブのチェックについて、事例を交えて考えてみよう。

<注>
※1 ペルソナ:調査データや実際の顧客データなどを用い、年齢、職業、趣味、行動、考え方などを組み合わせることによって想定した架空の顧客像
※2 カスタマー・ジャーニー:ペルソナの動き(行動・思考・感情)を時系列で可視化したもの。
※3 ソニー銀行のペルソナ分析事例は、「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」上のこちらを参照。

初出:消費と生活社『消費と生活』2018年11・12月号