外国人就労者のサポートをはじめ多様なニーズに対応する資金移動業を展開

グループ・キョウダイ

日本にいるペルーの人たちの支援を目的に設立された企業グループであるグループ・キョウダイでは、資金決済法に基づく資金移動業を展開。12カ国から集まった約60名のスタッフにより、さまざまな国籍を持つ利用者のニーズに則した、きめ細かいサービスの提供を実現している。

南米出身の日系人就労者のサポートから出発

 グループ・キョウダイは、(株)ウニードス、(株)アンヘル・ジャパン、および(有)キョウダイジャパンにより構成される企業グループである。
 同グループの設立は、1990 年の「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改正・施行を機に、日系ペルー人・ブラジル人就労者の受け入れが増加したことに端を発している。
 この時期の日本では、ペルーやブラジルから来日した日系人就労者が、悪徳業者から給料のピンハネをされるなど、さまざまな問題が発生していた。中でもひどかったのは海外送金に関する問題で、手数料として送金額の20%以上を取られるケースも珍しくなかった。そこで、ペルーにある日系人の信用組合であるアバコ、パシフィコ、アエロコープの3社が、日本にいるペルーの人たちを支援するために立ち上げた企業がグループ・キョウダイの出発点であり、3社が集まって創設されたことから「キョウダイ」という名称が付けられた。
 その後、同社は、低コストで海外の郷里への送金を代行する仕組みを確立。さらには南米商品の販売業も展開し、日本で働く多くの日系ペルー人・ブラジル人などの利用を得てきたが、2010年4月に「資金決済に関する法律」(資金決済法)が施行され、銀行以外の登録企業が外国為替取引を行う「資金移動業」が認められたことから、グループ会社のウニードスが2010年6月11日に資金移動業として登録。以後、「キョウダイレミッタンス」という名称で、海外送金サービスを展開している。
 キョウダイレミッタンスの特徴は、顧客の利便性を追求しているところにある。
 例えば、窓口の営業時間は、昼間の来店が難しい顧客に対応して銀行より長い10時30分~ 18時30分(一部窓口では20時)に設定。休業日も基本的に祝日だけとして、土・日曜日にも営業を行っている。
 また、入金については、全国10拠点の窓口での受け付けのほか、銀行口座振込、ゆうちょ銀行・郵便局のATMで利用できる「キョウダイ・送金専用カード」、ゆうちょ払込専用カード、現金書留郵便といった方法を用意。利用者のニーズに合わせて選択できる体制を整えている。
 さらに手数料を銀行よりも低めに設定。また、送金金額を日本円で指定するだけでなく、為替レートや国ごとの手数料率に合わせて、現地通貨で受取金額を指定しての送金も受け付けており、専業企業として高いコスト・パフォーマンスを確立している。
 なお、顧客については、資金移動業としての登録以前には、その設立経緯から南米出身者の利用が多かったが、現在ではインドネシア、フィリピン、ネパール、バングラデシュなど東南アジア諸国からの就労者の利用が増加。送金実績のある対象国は150カ国前後に拡大し、送金用口座を持つ会員は4万5,000人にも達している。

その国の文化まで理解しているバイリンガル/マルチリンガルのスタッフが対応

 キョウダイレミッタンスの運営における大きな特徴は、さまざまな国籍の顧客に、それぞれの言語、文化を理解しているスタッフが対応することだ。約60名のスタッフの国籍は12カ国に及んでおり、しかも各スタッフは2 ~ 4言語を操るバイリンガル、マルチリンガルである。ちなみに、同グループ内の“社内公用語”は、従来は南米出身のスタッフが多かったことからスペイン語であったが、現在では日本語と英語が中心。就業ルールなどは基本的に“日本式”とすることで、円滑に業務が遂行されているとのことである。
 このような人員体制により実現しているのが、利用者のニーズに則したサービスの提供だ。
 例えば、フィリピン人には、送金を月数回に分け、しかも宛先も家族それぞれなど複数にしたいという要望が多いのに対し、ネパール人では月1回、まとまった金額を1人に送金するのが一般的である。また、フィリピン人には電話での相談や問い合わせを希望する人が多いが、インドネシア人にはSNSやeメールなど、インターネットを経由したコミュニケーションを好む人が多い。
 同社のスタッフの割り振りは、例えば、来店頻度の高いフィリピン人顧客に対応して、窓口にはタガログ語に対応できるスタッフを多く配置するなど、利用実態を反映させたものとなっている。
 このような柔軟な対応により、顧客がさまざまな言語・文化を持つ外国人であることに起因するトラブルはほとんどなく、多くのリピーターの獲得にもつながっている。

プロモーションの基本は“クチコミ”

 キョウダイレミッタンスのプロモーションは、クチコミが基本となっている。
 昨今では、日本に居住・就労する外国人は増加しているが、その絶対数は限られており、マス広告の費用対効果は低い。またインターネット広告も、「日本語は話せても読めない」外国人が少なくないことから、日本語で出稿しても高い効果は期待できず、一方、多言語での出稿には多大な手間がかかる。また、そもそも大切な“お金”の取り扱いは信頼できる事業者に任せたいというニーズが強いことから、広告のみで新規顧客を獲得することは難しく、実際にサービスを利用した顧客からの紹介などが中心となっている状況だ。
 その中で同グループが力を入れているのが、外国人コミュニティなどを通じたコミュニケーション活動である。
 例えば、日本に居住・就労する外国人にとって関心が高い子どもの教育問題に対応してネパール人学校の運営を支援したり、インドやスリランカで人気が高いクリケット大会の開催をサポートしたりするなど、ビジネスを離れたコミュニケーションを展開。これらの取り組みは「日本にいるペルーの人たちを支援する」という同グループの設立経緯の延長線上にあるもので、必ずしもビジネスの拡大を目的とするものではないが、このようなコミュニケーションを通じて、結果として同グループへの信頼が醸成され、サービスの利用につながるケースも多いとのことである。
 今後の課題としては、資金移動業の社会的地位の確立が挙げられている。
 前述の通り、資金移動業は2010年4月の資金決済法の施行によってスタートした新たな事業であり、現状では銀行を通じた海外送金などと比較して、“安かろう、悪かろう”という印象を持っている人も少なくない。そこで同グループでは、今後、同事業の意義や専門性などを積極的に発信し、その存在意義をアピールしていくことでステータスの向上を図り、現状ではごく一部に限られている、日本人による海外送金ニーズの取り込みなどにもつなげていきたい考えである。

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2カ月に1度発行するフリーペーパー『KYODAI』では、サービス内容のほか、各国の文化や日本の観光地などを紹介。誌面にはさまざまな言語が踊る


月刊『アイ・エム・プレス』2014年3月号の記事