ピンポイントの「WELCOMEレター」で顧客とのつながりを強化

ソフトバンクモバイル(株)

移動体通信事業を展開するソフトバンクモバイル(株)では、加入直後の契約者とのコミュニケーションに紙DMを活用。「WELCOMEレター」によって顧客とのつながりを強化するとともに、関連サービス・製品のプロモーションに役立てている。

加入直後の契約者とのコミュニケーションを目的に「WELCOMEレター」を送付

 ソフトバンクグループの中核企業の1社として、移動体通信事業を展開するソフトバンクモバイル(株)。同社では加入直後の契約者とのコミュニケーションに紙DMを活用し、顧客とのつながりを強化するとともに、関連サービスのプロモーションに役立てている。
 同社が“「モバイルインターネットNO.1」に向けて”というテーマの下で展開する移動体通信事業では、当然のことながら、顧客とのコミュニケーションもインターネットを中心に行われており、日常的なお知らせには主にケータイ向けのeメールなどを活用している。しかし、顧客の中には企業からのeメールを歓迎しない層も存在し、また、大量に送られてくるeメールの中に、同社からのeメールが埋没してしまう可能性もある。そこで同社では、目的に応じて紙DMをコミュニケーション・ツールとして採用することで、コミュニケーションの質を向上する取り組みを行っている。その代表的な例が、加入直後の契約者に送付している「WELCOMEレター」だ。この送付には、申込書に記入された住所に間違いがなかったかどうかを確認する意味合いもあるという。
 同社の「WELCOMEレター」の最大の特徴は、そのパターンの多様さだ。同社にとって「WELCOMEレター」は従来から行ってきた施策。折り畳み式を中心としたいわゆる“ガラケー”の時代には、新規契約の御礼と関連するサービスの紹介のために、すべての新規契約者を対象に、同一のハガキを送っていた。
 しかし、その後、同社が2008年7月にiPhoneの取り扱いを開始したことをきっかけに、新規契約機種が徐々にスマートフォンやタブレット端末などに移行。一方で、データベースに基づいてOne to One対応で異なる内容の印刷物を作成するバリアブル・プリンティングの技術が進化し、活用できるようになったことを受けて、2010年4月以降は契約形態・機種などに応じて異なる内容の「WELCOMEレター」を送付する方法に切り替えた。現在では、法人顧客向け2パターン、外国人向けの英語版4パターンを含め、合計18パターンの「WELCOMEレター」を送付している。

契約日から最短3日・最長1週間以内に発送

 「WELCOMEレター」はいわゆる圧着ハガキのスタイルを採っており、宛先面を含めて表裏でハガキ大のスペース6面から構成されている。
 送付対象は新規契約すべてとなるが、複数の契約が同時に行われた場合は、契約ごとではなく複数契約を1通に集約するなど、工夫して送付している。
 配送については、郵便を利用。発送は、販売店から随時送信される新規契約データを登録した本社データベースの情報に基づいて週2回行われており、最短では新規契約日から3日後、最長でも1週間以内には完了させている。なお、コスト削減を図るために、料金後納の広告郵便物の割引制度を利用し、割引率を向上するバーコードの印刷などは行っているものの、契約日からあまり日にちを空けずに顧客の手元に届けることが重要であるという判断から、割引率が大きい「送達に7日程度の余裕を承諾」することはせず、広告郵便物の前提となる「送達に3日程度の余裕を承諾」するにとどめているという。
 「WELCOMEレター」のバリエーション拡大を機に、新規契約の御礼とともに掲載していた関連サービスの紹介を、契約機種に合わせた適切な情報に変更した。現在、一般顧客向けに送付している「WELCOMEレター」では、宛先情報を入れる表面以外に、「ご契約(ご購入)いただきありがとうございます」というお礼の言葉と、ユーザーサポートサービスの連絡先などに2面程度を使い、そのほかをプロモーション情報で構成するかたちを採っている。
 ただし、プロモーション情報があまり前面に出てしまうと、「新規契約への御礼の気持ちを示す」という「WELCOMEレター」の本来の意図が伝わりにくくなるという観点から、圧着ハガキをめくる順番を①、②といった数字で掲示。まず先に「大切なお知らせ」を見てもらえるように工夫している。また、限られたスペースの中で最大限の情報を提供できるように、特にプロモーション情報については概要を示して興味を喚起するレベルにとどめ、詳細はWebサイトで確認してもらう設計にしている。
 なお、このような取り組みは、日本郵便(株)が主催する「第26回全日本DM大賞」で「金賞・審査委員特別賞 戦略性部門」を獲得するなど、対外的にも高い評価を得ている。

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「WELCOMEレター」は、契約機種や契約パターンなどに応じ、英語版を含めて合計18パターンが用意されている

見やすさの追求とプロモーション面への寄与度向上が今後の課題

 「WELCOMEレター」の効果を高める施策としては、まず、「大切なお知らせ」や各種問い合わせ先など、重要な情報が含まれていることを強調するために、宛名面の下部に「親展」「転送不要」といった文言を記載。また、プロモーション情報などについては、テレビCMなどで人気の「お父さん犬」のキャラクターを随所に配するなど、ビジュアル面に工夫を凝らすことで、興味の喚起を図っている。
 効果検証については、一定期間ごとに送付対象者を抽出してeメールによるアンケート調査を実施。開封、保管の状況を確認するほか、掲載情報への興味・関心度なども確認し、その結果を随時、内容の刷新などに役立てている。
 今後の課題としては、見やすさの追求やプロモーション面への寄与度のさらなる向上などが挙げられている。
 見やすさの追求については、限られたスペースに情報を盛り込み過ぎたあまりに文字が小さくなり、高齢の顧客などから「読みにくい」という声も寄せられていることから、今後は情報を絞り込むことで文字サイズを大きくするなどの取り組みを行っていく意向である。
 プロモーション面への寄与度のさらなる向上については、現状、契約機種をベースに行っているパターン分けを、さらに細分化することを検討。技術的には性・年代別などの属性を組み込んだより細かいセグメントも可能であることから、協力印刷会社などとともに、コストや必要な人的リソースなども考慮しながら、よりOne to Oneに近い情報提供を実現していきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年12月号の記事