ユーザー参加型のアプリ開発プロジェクトでFacebookページを活性化

KDDI(株)

KDDI(株)では、2011年8月からau公式Facebookページ上でユーザー参加型のアプリ開発プロジェクト「もっとFacebook」を展開。企画会議の内容を公開し、ユーザーのコメントや投票を受け付けて、それを企画に反映させていくという方法で、ユーザー視点を取り入れたアプリ開発を実現した。

Facebookページへのユーザーの関与度向上を目的にユーザー参加型のアプリ開発プロジェクトを展開

 「au」ブランドで移動体通信(au携帯電話)事業と固定通信(ブロードバンド・インターネット/電話)事業を展開するKDDI(株)。
 同社では2011年8月からau公式Facebookページ上でユーザー参加型のアプリ開発プロジェクト「もっとFacebook」を展開し、2012年3月、その成果として、無料で利用できるFacebookアプリ「vottie」の提供を開始した。
 同社では2011年5月にau公式Facebookページを立ち上げて運用を開始した。その目的は、auの商品やイベント情報、さまざまな取り組みなどを紹介すると同時に、auユーザーから投稿されるコメントや写真、動画などのコンテンツを掲載することで、同社とユーザー、さらにはユーザー同士のコミュニケーションを実現することであり、実際に同社からの多種多様な情報の発信をベースとするコミュニケーションが展開されている。
 しかし、単に情報を発信するだけでは、ユーザーからの積極的な投稿を引き出し、活発な双方向コミュニケーションを実現することは難しい。このような認識の下に企画・開始されたのがユーザー参加型のアプリ開発プロジェクト「もっとFacebook」。同企画においては、アプリを開発すること自体よりも、開発の過程をユーザーと共有することにより、ユーザーのau公式Facebookページへの関与度を高めることが目的となっている。

開発経過を公開してユーザーからのコメントや「いいね!」を基にブラッシュアップ・絞り込みを実施

 同社で「もっとFacebook」の中心的役割を担ったのは、Facebookページの運営を担当するコミュニケーション本部宣伝部WEBコミュニケーション室のスタッフ。モバイル端末企画を手掛けるスタッフを加えて社内は4名体制とし、さらに「面白法人」を標榜し、各種Webサービス・コンテンツの企画・開発を手掛ける(株)カヤックなどの協力を得て、「もっとFacebook」プロジェクトチームを結成し、企画を進めていった。
 企画の進行方法は、企画会議の内容を写真なども含めてFacebookページ上でレポートとして公開し、その内容に対するユーザーのコメントや投票を受け付け、それを企画に反映させていくというもの。ユーザーからのアイデアだけでは具体的なアプリとして結実させることは難しいという判断から、開発の主体はあくまでもプロジェクトチームとし、ユーザーにはコメントや投票により参加してもらうというかたちを採った。
 実際のレポートはプロジェクトをスタートした2011年8月16日に「プロジェクトレポート♯0」を公開。その後、同8月26日に「プロジェクトレポート♯1」、同9月6日に「プロジェクトレポート♯2」、同10月11日に「プロジェクトレポート♯3」を公開した。
 レポートは、プロジェクトの会議の内容をできるだけ臨場感をもって伝えることを目指した。単に会議の結果を公開するだけでなく、会話体を用いることなどでやり取りの様子をなるべく詳細に再現。写真も多用し、また、プロジェクトメンバーが描く“へたうま”イラストなども掲載することで、ビジュアル的にも楽しい情報とすることを意識した。
 ユーザー参加の具体的なあり方については、まず、プロジェクトの会議で出されたアイデアを公開。ユーザーからのコメントや「いいね!」などを参考にブラッシュアップ、絞り込みを行い、10のアイデアを提示して、ユーザーからの投票による最終選考を実施した。
 このような過程を通じて、最終選考で圧倒的な投票数を獲得した「シンクロニシティ(共時性)」をテーマとしてアプリ開発を行うことが決定。2011年11月から開発作業に着手し、2012年3月、Facebookアプリ「vottie」の提供が開始された。
 「vottie」は、世界中のどこかで「トイレにいる人」、「ご飯を食べている人」など「世界中で今、たまたま同じことをしている人々」とのシンクロニシティを共有するFacebookアプリ。例えば、ランチタイムに“ごはん”と投稿すると、「世界中でごはんを食べている人々」とすれ違うことができるなど、自分の行為を通じて世界をのぞくことができる。前述の通り、提供は無料であり、Facebookユーザーであれば誰でも自由に利用することができる。

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最終選考を勝ち残り、2012年3月に提供が開始されたFacebookアプリ「vottie」(上)。Facebookページでは開発の途中経過がリポートされた(下)

ユーザーの参加方法が側面的にとどまった点では反省も

 前述の通り、「もっとFacebook」においては、アプリを開発すること自体よりも、開発の過程をユーザーと共有することにより、ユーザーのau公式Facebookページへの関与度を高めることが目的となっており、その成果である「vottie」についても無料で提供するFacebookアプリである。
 ユーザーに“楽しみ”を提供し、au公式Facebookページへの関与度を高めることができたかという点については、ある程度達成できたと判断している。しかしFacebookページへの反応・反響という意味では、マスメディアを通じた露出の機会が少ないモバイル端末開発のウラ話など、希少性の高い情報を発信したケースには及ばなかったという。次回、同様の企画を実施する場合、リアルな会議への参加者を募るなどの方法も検討したいとしている。
 なお、「vottie」については、特にリリース直後には相当数のアクセスがあり、その後は多少アクセスが減少したものの、継続的に人気を博している。Facebookに寄せられた感想をもとに、現在アップデート作業を行っており、今後も改善を加えながら提供を続けていく方針である。
 今後のFacebookページでのユーザー参加型企画については、現状では具体的な計画はないが、多くのユーザーの参画が望め、ユーザーのauへの親近感を醸成できるような企画があれば検討したいとしている。
 同社では、2012年4月1日にはエイプリルフール企画として、TVCMのモチーフとして起用している往年の人気漫画・アニメ「巨人の星」にちなみ、「“大リーグボール養成スマートフォン”として新製品『MAKYU01』を発表した」という情報を発信し、話題を集めた。今後もこのような“遊び心”のある情報の発信を続けていくことで、ユーザーの関心を引きつけ、関係性の強化を図っていきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年6月号の記事