楽天カード(株)は、7,200万人以上の会員を有する日本最大のインターネット・ショッピングモール「楽天市場」を運営する楽天(株)の子会社である。同社は、楽天市場のポイントプログラムである「楽天スーパーポイント」を活用した入会および利用促進キャンペーンに力を入れており、 クレジットカード会社の中でもひときわ高い稼働率を誇っている。
カード会社として屈指の高稼働率を実現
2005年6月、九州を地盤とする信販会社の国内信販(株)へ楽天(株)が出資を行い、楽天KC(株)に社名変更して楽天カード事業を開始。さらに2011年8月には、(株)あおぞらカードを前身とする楽天クレジット(株)が、楽天KCの楽天カード部門を事業継承し、楽天カード(株)に商号変更して今日に至っている。
楽天がカード会社を買収した背景には、加盟店手数料の収益に加え、帰属意識の高い会員を取り込めるクレジットカードとポイント制度を軸に、楽天市場をはじめとするグループ全体のシナジー効果を狙おうという戦略があった。
同社では、楽天市場をはじめとするネットショップやリアル店舗の利用により「楽天スーパーポイント」が貯まる「楽天カード」(年会費永年無料)、「楽天プレミアムカード」(年会費1万500円)を発行。また、ごく一部の優良会員を対象に、インビテーション(招待)制の楽天ブラックカード(年会費3万1,500円)も発行している。
近年、規制強化が進んできた貸金業法への対応など、クレジットカード事業をとりまく環境は厳しくなっているが、楽天カードの会員数は順調に推移。過去1年以内にカードを利用したアクティブな会員の割合は、クレジットカード業界でも最高レベルを誇っている。また、空港ラウンジが無料となる「プライオリティ・パス」などの特典がある楽天プレミアムカード、楽天ブラックカードについては、さらに稼働率が高いという。
利用者からの評判も高く、4月12日に公益財団法人日本生産性本部サービス産業生産性協議会が発表した「平成22年度JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」において、2年連続でクレジットカード部門顧客満足度第1位の評価を獲得している。
入会時に2,000ポイントを付与 短サイクルでキャンペーンを展開
楽天カードの収益源としては、カードショッピングやキャッシング、リボルビング払いの手数料、加盟店でカードが利用された際の加盟店手数料などが挙げられる。また、楽天プレミアムカードの会員から徴収する年会費も重要な収益となっている。
会員の獲得については、ほぼ100%がインターネット経由での入会。中でも、楽天市場において7,213万人(2011年6月末現在)の楽天会員に直接アプローチできることが最大の強みだ。楽天カードについては、「楽天市場で利用するために作るカード」という目的意識が明確なため、会員の帰属意識も高く、利用頻度の向上に結び付いている。
同社では楽天市場のポイントプログラムである「楽天スーパーポイント」をキーにした入会促進を積極的に実施。特に楽天市場で買い物をする顧客に対し、カードに入会すれば2,000ポイント(1ポイント1円換算)を付与する特典が好評だ。通常、2,000ポイントは20万円の買い物をしなければ付与されないが、これと同様のポイントがいきなり入会時に獲得できることが、会員獲得のフックとなっている。
ほかにもアフィリエイトやリスティング広告などで会員を獲得しており、約2割が楽天市場以外で獲得した会員となっている。
同社では既会員に対しても、楽天スーパーポイントをキーにしたカード利用促進キャンペーンを定期的に実施。Webサイトやeメールによる告知を中心に、ポイント倍増といったお得感を感じさせる施策を展開している。
中でも注力しているのは、カード入会後、6カ月以内の会員の稼働率を高めること。これまでの経験から、会員を定着させるためには、6カ月以内の利用頻度がカギとなることが判明しているからだ。そこで同社では、これにかかわる指標を設定。これをクリアするために、入会後1カ月以内、2カ月以内といった期間や購入商品、顧客属性などさまざまなデータをクロスして細かいセグメントを行い、効果を検証しながら、短サイクルでのキャンペーンを実施している。
また、例えば夏の海外旅行シーズンに合わせて、海外でカードを利用すると楽天スーパーポイントが通常より多く貯まる特典を付与するなど、季節ごとのキャンペーンも積極的に展開。利用履歴に基づく企画としては、過去にはガソリンスタンドなど自動車関連の利用が多い会員に対し、ETCカードの利用を促進するキャンペーンなどを行った。また、カード会員の家族が会員になればさらに大きな特典を付与するキャンペーンなどを行って、「家族カード」の順調な伸びにつなげている。そのほか、楽天カード感謝デーを設けるなど、ポイントがお得に貯まる取り組みも展開中だ。
楽天市場での買い物やメルマガ講読で、通常より多くの楽天スーパーポイントを付与するキャンペーンを、ネット上で告知
会員数が伸びても稼働率はキープ さらなる会員獲得を目指す
同社では、メインカードとしてカードを利用してもらうため、楽天市場以外でのカード利用を推進している。楽天の子会社が発行するカードということもあり、会員の利用は楽天市場内に偏っていると思われがちだが、実際にはグループ外の加盟店での利用が多くを占めている。例えば、楽天が運営するポイント加盟店であるENEOSとJOMOのサービスステーションでは、楽天カードを提示すると楽天スーパーポイントが2倍貯まる、あるいは、大江戸温泉物語、紳士服のコナカ、MEN′s TBC、自遊空間などでは楽天スーパーポイントが通常の3倍獲得できるといった特典があり、知らず知らずのうちにポイントが貯まっている人が多い。
会員は貯まった楽天スーパーポイントを楽天市場での買い物に利用できる。楽天市場内では、決済時に現在の獲得ポイントを表示するとともに、決済にポイントが利用できることを明記。また、買い物をすればどれだけポイントが貯まるかも把握しやすいようになっている。
通常、会員数が伸びると稼働率は徐々に低下する傾向にあるが、楽天カードは会員数が拡大しているにもかかわらず、稼働率はまったく落ちていないそうだ。
また、会員の帰属意識を高めるため、楽天スーパーポイントがお得に貯まるという利便性だけでなく、安全面の取り組みにも注力している。会員に対しては不正利用対策サービスとして、Web上でカードを不正利用されても全額を保証する「ネット不正あんしん制度」や、楽天市場利用時に商品未着が発生し、店舗との連絡が困難となった場合の「商品未着あんしん制度」を付帯している。加えて、カード利用時の会員の安心感を高めるため、利用をeメールで知らせる「カード利用おしらせメール」などのサービスを提供している。
同社では今後の目標として、さらなる会員数の拡大を挙げている。数値的には順調に伸びてはいるものの、国内大手のカード会社にはまだ水を開けられている状態だからだ。とは言え、高稼動という会員の質を考えれば、その会員価値は国内大手カード会社にもひけをとらないところまできていると認識しているとのことである。