老若男女あらゆる層の来店・利用促進を目指し多層的な施策を展開

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)

日本全国約1,400店舗でDVD・ブルーレイ、CDのレンタル・販売や書籍・ゲームソフトの販売などを手掛けるTSUTAYAでは、クーポン、プレゼント・キャンペーン、店頭品揃え企画など、さまざまな施策を組み合わせて展開。老若男女合わせて約3,700万人にも上るT会員の来店・利用促進を図っている。

日本の総人口の1/3近くをカバーするTカード

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)が直営・フランチャイズにより全国で約1,400店舗を展開するTSUTAYA。同店はDVD・ブルーレイ、CDのレンタルショップとしてのイメージが強いが、現在では、DVD・ブルーレイ、CD、書籍、ゲームソフトの販売なども行う複合型店舗の展開が中心だ。約90%がフランチャイズにより運営されているTSUTAYAの店舗網は、47都道府県に広がっている。ほぼ人口分布に比例して日本全国をカバーしている状況となっている。
 カルチュア・コンビニエンス・クラブでは、2006年、TSUTAYAのレンタル会員証「Tカード」をベースとするポイントプログラム「Tポイント」を業種横断型の共通ポイントプログラムとして事業化。2011年7月現在、TSUTAYAおよびファミリーマート、カメラのキタムラなどの提携先企業での発行分を合計した名寄せ後のT会員は約3,700万人に上っている(ただし、提携先で発行されたカードでTSUTAYAのレンタルサービスを利用する場合は、別途、レンタル用登録が必要となる)。年代別に見ると特に若年層で加入率が高く、20代では約50%が加入している状況であるが、近年では高齢層の会員も増加傾向にある。また、男女比もほぼ1:1となっていることから、同社としても基本的には特定の層をターゲットとするのではなく、老若男女、あらゆる層への訴求を目指したマーケティング戦略を展開している。

既存会員の実利用をいかに増やすかが大きなテーマ

 当然のことながら新規会員については、TSUTAYAやファミリーマートなどの提携企業で今後も獲得していくとのことであるが、TSUTAYAのマーケティング戦略においては、これと並行して、既存会員の実利用をいかに増やすかということにも主眼が置かれている。
 TSUTAYAにおける会員の利用状況では、年間ベースで見ると、その大部分がアクティブと言える状況だ。その中で同社では、定期的な店舗利用がある層については、利用頻度を大幅に増加させることは難しいと考えている。なぜならば、TSUTAYAのビジネスは基本的に余暇ビジネスであり、利用頻度は各会員の生活ペースに基づくものであるからだ。そこで同社では、これらの会員に対しては「○枚以上のレンタルで○円ディスカウント」といった訴求を行うなど、利用1回当たりの客単価を向上することを狙った取り組みを行っている。
 一方、一定期間利用がない会員に対しては、eメールなどで直接、利用を喚起する訴求を行うほか、TSUTAYA以外のTポイント提携先の利用時に発行されるレシートにTSUTAYAで利用できるクーポンを印字するといった施策を実施し、来店促進を図っている。
 また、特に高齢層の会員などではレンタルサービスへの関心が低く、TSUTAYAの店舗に来店しても書籍を購入するだけといった会員も少なくないことから、これらの会員の利用履歴に基づき、書籍購入時のレシートと一緒に、レンタルサービス利用時に使用できるクーポンをPOSより出力するといった対応を実施。複数サービスの利用を訴求し、徐々に成果を上げている。
 また、これらのクーポンについては、例えば、海外ドラマのDVDを好んでレンタルする傾向がある会員に、同分野の新作DVDレンタル時に利用できるクーポンを発行したり、新規入会時の1回目の利用のみで完結してしまい、リピート利用に至らないという層も存在することから、入会時に複数回利用できる割引クーポンを提供したりして、利用の定着を図っている。

期間限定キャンペーンも随時実施

 同社ではこれらの継続的な販促施策のほか、利用促進のための期間限定キャンペーンも随時実施している。
 例えば2011年7月15日から実施した夏キャンペーン第1弾では、夏休みを意識して、子ども連れ、またはキッズ・アニメ商品を利用した会員にキッズスタンプカードを配布。スタンプカードに1会計につき1つもらえるスタンプを、3つ貯めるとキッズブックをプレゼントするなどの企画を実施。さらに、8月26日から実施する夏のキャンペーン第2弾では、事前に実施したT会員10万人を対象とするアンケートの結果に基づき、店頭で「元気になる」映画や音楽を推奨するとともに、スヌーピーをメインキャラクターとしたスタンプカードによるプレゼント企画を実施。500円の利用につき1つもらえるスタンプを4つ集めると店頭で応募でき、抽選により賞品を提供するというかたちで利用促進を図る予定だ。

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8月26日から、スヌーピーをメインキャラクターにしたプレゼント企画を実施。幅広い顧客層をターゲットにしている

 なお、これらのキャンペーン企画については、必要に応じて事後にT会員に対するアンケートを実施し、「キャンペーンを認知していたか」「応募意欲を感じたか」などを確認。来店・利用促進への寄与度などを検証することで、恒常的に企画内容のブラッシュアップを図っている。
 また、特に高齢層などでは、これらのキャンペーンへの反応度が低い傾向も見られることから、「同社がレンタル提供する映画DVDなどのコンテンツ自体に興味を持ってもらう」という基本に立ち返った企画も展開している。そのひとつが2010年7月からスタートした「TSUTAYA発掘良品」だ。
 この企画の内容は、1960~1990年代に公開された映画の中から、「有名な作品」や「どこのお店でもたいてい置いている作品」ではなく、「知る人ぞ知る面白い作品」や「観たくてもなかなか観られなかった作品」を毎月ピックアップ。映像メーカー各社と連携し、TSUTAYA全店で新作と同様の在庫数、品揃えで展開するというもの。2010年7月の第1回では、対象としたサスペンス・アクションの名作『ジャガーノート』について、面白くないと思った場合にはレンタル料金を返金する「『ジャガーノート』が面白くなかったら返金します」キャンペーンを実施し、企画の認知促進を図った。なお、この企画はすでに第11弾までを実施しており、往年の映画ファンの興味を喚起するとともに、その映画の存在を知らなかった若年層の映画ファンの利用にもつながるといった成果を生んでいる。
 なお、同社では、会員の来店・利用促進のためには、これらの販促施策・キャンペーン・企画だけでなく、サービス品質自体の向上が不可欠であると考えており、恒常的に接客や店舗クレンリネス維持・向上などを図るほか、送料100円で6タイトルまでを返却できる郵便返却制度など、利便性向上のためのシステムの導入も随時実施。今後もこのような基本サービスの充実化を継続していくとともに、話題性のあるキャンペーン・企画などを随時実施していくことで、会員の来店・利用促進を進めていく意向である。

月刊『アイ・エム・プレス』2011年9月号の記事