医薬品・健康食品・化粧品原料の製造・販売をメイン事業とする協和発酵バイオ(株)では、2004年から「Remake」ブランドで健康食品の通販事業を展開している。同事業では自社原料・生産の健康食品を単品通販の手法で販売。エンドユーザーとのダイレクトなチャネルを確立するとともに、原料販売事業の“広告塔”的な役割も果たしている。
1990年代半ばから通販に着手し、2005年から本格的な展開を開始
2008年10月に協和発酵工業(株)(現:協和発酵キリン(株))から分社独立するかたちで発足した協和発酵バイオ(株)では、「Remake(リメイク)」ブランドで健康食品の通販事業を展開中だ。
同社の通販事業は1990年代半ばに端を発している。同社の前身である協和発酵工業では1980年代から健康食品原料の製造・販売を手掛けてきたが、その一環として、1996年にコラーゲン原料普及の一端を担うことを目的に自社ブランドのコラーゲンドリンクの通販に参入した。同様のスタイルはその後、コレステロール対策の特定保健用食品素材やグルコサミンなどにも適用され、通販事業は規模こそ小さいながらも脈々と継続されてきた。
同社の通販事業に転機が訪れたのは2004年。健康食品原料を担当していた部署が、社内で食品部門から医療用高機能アミノ酸を取り扱っていたバイオケミカル部門に移管されたことがきっかけとなり、また、当時、アミノ酸ドリンクが流行していたことなどから、アミノ酸をベースとする健康食品の通販に本格的に取り組むことになったのである。そして、同年中にテスト販売を実施し、翌2005年には本格展開を開始。その後、徐々にアイテム数を増やしつつ、現在に至っている。
新聞15段広告で新規顧客を獲得
「Remake」ブランドの通販の現時点における取扱商品は、自社原料・生産の健康食品。いずれも協和発酵グループの伝統を生かした発酵技術に基づくもので、「自然のめぐみ 発酵のちから」というキャッチフレーズの下、「アミノ酸オルニチン」「発酵コエンザイムQ10」など、10アイテム程度に絞り込んでいる。
販売手法としては単品通販のスタイルを採用しており、単一アイテムを訴求する新聞の15段広告をメインに、新規顧客を獲得。広告の内容については、薬事法の規制を遵守しながら、いかに読者に訴求するかという点に注力している。現状では、例えば、主力商品の「アミノ酸オルニチン」については、オルニチンが健康食材として高く評価されている“しじみ”に多く含まれている成分であることから、“しじみ”の健康への有効性を説明した上で、同商品には「1粒で“しじみ”約300個分のオルニチンを含有」していることを訴求するなど、わかりやすい代替表現を駆使して、商品の魅力を伝えているとのことだ。
なお、同社では無料のお試し商品は設定しておらず、新聞広告における具体的なオファーは、「お試し価格」と「お得な定期購入コース」が中心である。
「お試し価格」は、「アミノ酸オルニチン」であれば通常価格1袋1,500円のところ初回購入に限り500円、「発酵コエンザイムQ10」であれば通常1箱3,000円のところ初回購入に限り1,000円で販売するというもの。一方、「お得な定期購入コース」は、定期購入を条件に送料無料(通常3,000円未満の購入の場合は全国一律100円)として、さらに複数購入時には購入個数に応じた割引率を適用するものとなっている。ちなみに近年では、新規顧客において「お得な定期購入コース」の利用者が単発の利用者を上回っているとのことだ。
受注経路については電話が約60%、Webサイトが10%台の前半で、そのほかはFAX、ハガキなど。配送は基本的に民間宅配会社のメール便を利用している(一部、ロットが大きい場合には宅配便を利用)。交換・返品は商品到着後10日以内について受け付け。代金回収については、コンビニ払い、郵便振替による後払いが中心であるが、最近ではクレジットカード払いや銀行口座引き落としの比率も高まりつつある。
顧客層の中心は“健康”に高い関心を持つと思われる60代前後のシニア層。居住エリアとしては、広告出稿エリアのバランス以上に関東地区の顧客が多いが、同社ではこの点について、同社自体が東京に本拠を置いており、また、“真面目”な反面“面白み”には欠ける企業イメージであることが影響しているのではないかと分析している。
ポイントプログラムと情報誌で継続率をアップ
同社が「Remake」ブランドの通販において、これまでに獲得したデータベース上の顧客数は約70万人。当然のことながら、これらをいかにアクティブな状態に保つかが、事業展開上の大きなテーマとなっている。そのための施策における大きな柱がポイントプログラムと毎月発行している情報誌『リメイク通信』だ。
同社が提供しているポイントプログラムでは、ステージ制を採用している。その内容は定期購入1~5回目は本体価格(端数切捨て)の2%、6~11回目は同4%、12~17回目は同6%、18回目以降は同8%が付与され、1ポイント=1円相当として、購入代金に充当できるというもの。例えば、「アミノ酸オルニチン」を毎月2袋、2年間(24回)継続して定期購入した場合、3,150ポイントが貯まるかたちとなっており、顧客の定期購入継続意欲を喚起している。なお、定期購入を休んだ場合でも6カ月以内であればステージが変わらないシステムとしており、定期購入休止者の復帰モチベーションの一要素にもなっている。
情報誌『リメイク通信』については、A5判16~24ページの小冊子を毎月制作し、パッケージ・インサートのかたちで送付している。コンセプトは「元気な明日応援情報誌」。編集はすべて社内スタッフが行っており、人気コーナーである「発酵食品をたずねて」をはじめ、商品紹介にとどまらない健康関連情報を中心とした誌面構成により、健康への意識の高まりを図ることで、間接的に健康食品の継続利用に対するモチベーション向上につなげている。
毎月発行している情報誌『リメイク通信』は社内スタッフが編集。人気コーナーの「発酵食品をたずねて」など、健康関連情報が満載
顧客とのコミュニケーション強化が課題
同社の通販事業における今後の課題としては、顧客とのコミュニケーションの強化が挙げられている。
具体的施策としては、現状、大半をアウトソーシングしているコールセンター部門について、受注以外の分野、例えば問い合わせ窓口などは内製化して顧客との直接接点の強化を図ると同時に、販売促進目的ではない、利用実感を確認するようなアウトバウンド・コールを実施することを検討している。
そのほか、最近トライアルを開始したTVショッピングについても、検証を続けながら徐々に規模の拡大を図っていく。同時にECサイトについても強化を図り、これらを含めたクロスメディア展開により、事業規模拡大につなげていく意向だ。
同社の健康食品事業はエンドユーザーに対する直接販売ルートを確保することにより、市場ニーズの動向などを見極めつつ、同時に原料市場の拡大を図ることが大きなテーマであることから、今後もこのテーマに沿った事業展開を継続していく方針である。