Twitterのリアルタイム性を生かしたクロスメディア戦略で自社のコミュニケーション力を向上

日本オラクル(株)

IT業界をリードする情報管理ソフトウエア会社として知られるオラクル・コーポレーションの日本法人である日本オラクル(株)は、米国発の新しいコミュニケーション・ツールであるTwitterの有効性にいち早く着目。公式アカウントの開設に先駆けて、アカウントの取得を社員にも奨励し、活用法を検討していた。Twitter活用のリーディング・カンパニーの1社とも言える同社の取り組みを紹介する。

Twitterの活用により、顧客のロイヤルティを向上

 日本オラクル(株)は、オラクル・コーポレーションの日本法人として1985年に設立。IT業界をリードする企業として、「データの価値を知として最大化させ、豊かな情報社会を実現する」を企業理念に、市場の活性化や経済の発展に役立つ革新的な製品、サービスの提供に力を入れている。
 同社の広報室では“PR2.0”と呼ばれるPR活動を推進中だ。これはマスメディアを通したPR活動に加えて、「いかに市場とインタラクティブにコミュニケーションするか」を機軸に、ソーシャルメディアを積極的に活用するというもの。具体的には広報ブログに加え、YouTubeチャンネル、FacebookやTwitterの公式アカウントを活用している。
 今回フォーカスするTwitterについては、同社の広報室とマーケティング部門が中心となって運用しており、活用ノウハウを蓄積することで、製品やサービスの開発に反映させることを主眼にしている。
 同社がTwitterの公式アカウントの運用を開始したのは2009年7月のこと。主に顧客、インフルエンサー、ブロガーとのコミュニケーションに活用されており、Twitterがほかのソーシャルメディアに比べて情報伝達の速さに優れている点に有効性を見出している。
 現在、同社では、広報室所管の“Oracle_Japan”とマーケティング本部所管の“oracletechnetjp”(オラクル・テクノロジー・ネットワークの略)の2種類の公式アカウントを開設している。前者は同社のニュースリリース、イベント情報、公式ブログの情報などを更新の都度、各Webページへのテキストリンクとともにアップ。後者は技術者向けに特化した情報として、製品のホワイトペーパーやマニュアルのWebページへのリンクをアップするほか、同社製品ユーザーの問い合わせ対応用の掲示板としても活用している。

Twitterによるセミナーイベントの実況中継で認知を拡大

 同社は公式アカウントの開設以前から、社員による業務上のTwitter活用を推進しており、現在も社員個人レベルでの受発信は自由に行われている。一方で、同社ではソーシャルメディア活用時のガイドラインを取り決め、NDA(秘密保持契約)の遵守や、ユーザー名に社名と実名を明示するなどのルールの徹底を図っている。またユニークな活用として、社員犬のWendyが専用のアカウントで不定期にツイート(?)するものもある。これはWendyが前足を使ってキーボードを踏んだ文字がそのまま配信されるという遊び心あふれるもので、同社のファンづくりの一環として行っているということだ。
 公式アカウントの告知に関しては、プレスリリース、イベントのほかに、業界関連コミュニティーなどを活用。加えて、同社はソーシャルメディア全般をPRに活用するため、同社製品を紹介するYouTube、広報ブログ、メルマガなどにTwitterのアカウントを表示すると同時に、Twitterから各メディアへのリンクも張っている。オペレーション時間は月~金の9時から17時。前述の広報室、マーケティング本部から数名が担当し、午前と午後に少なくとも1回はツイート。上限は決めていないが、迷惑に思われない頻度を心掛けている。フォロワーからのツイートは、広報室の担当者1名が適宜監視し、問い合わせの場合はしかるべき担当者に連絡して、返信を依頼する体制を採っている。Twitterは属人性の高いメディアであるため、同社では自社ブランドを擬人化したイメージの共有を運営者間で心掛けている。擬人化したイメージは、「大人のビジネスマン」「親しみやすい言葉遣いだが、若者言葉は使わない」「信頼感がわく威厳を保ちつつ、お役所的な対応はしない」など。ターゲットとしては、同社Twitterフォロワーの推定プロフィールである35歳前後を意識している。
 現在のフォロワー数、フォロー数は“Oracle_Japan”が1,700強と1,500強、“oracletechnetjp”が約170と約160となっている(2009年12月18日時点)。
 同社の特徴的なTwitter活用法のひとつに、同社主催のセミナーイベントの実況中継がある。400、500人規模のセミナーイベントは、商品の紹介に重点を置いたものになるため、いかに多くの人に認知してもらえるかがカギとなる。そこで、同社ではTwitterを使ったセミナーイベントの実況中継を行うことで、参加できなかった人にも内容を告知しているわけだ。
 実例として、1回のセミナーイベントにつき7回ぐらいの書き込みを実施。その後RT(リツイート)が連鎖し、最終的に約600のRTにつながったことがある。つまりは、600人それぞれのフォロワーに情報が伝達されたわけで、同社ではTwitterが多くの人々にリーチできる有力なメディアであることを実感したという。
 またTwitterが持つリアルタイム性を生かし、セミナーイベント開催中に書き込まれた不満や要望を現場にフィードバックして対応。セミナーイベント終了後は、内容に関する感想をVOC (Voice of Customer)として収集し、次回のイベントに生かしている。
 Twitterは、従来のアンケートでは聞き出しにくい率直で厳しい意見など、参加者の本音を引き出しやすいツールであると同社では認識している。一方で気軽に簡便に書き込める特性から、「会場に着いた」「あのセミナーはどこでやっているの?」などの書き込みもあり、参加者同士がTwitterでやり取りすることで、セミナーイベントを盛り上げる効果も出ているという。

Twitterをほかのメディアと連携させ、相乗効果を生み出す

 同社は前述の“PR2.0”のコンセプトに基づき、ソーシャルメディア全般を、いかにインタラクティブなコミュニケーション・ツールとして活用するかを模索している。そのため、Twitterも単なる告知ツールという位置付けとは異なることから、フォロワー数やRT数自体を評価指標に置いていない。それよりはセミナーイベントなど、アクティビティに対するフォロワーの反応をモニターすることに重点を置き、フォロワーの反応を読み解く中で、アカウント運営方法のブラッシュアップを図っている。
 課題については、同社がB to Bビジネスの企業であるため、Twitterで決裁権のあるCEOクラスにいかにリーチできるかを挙げる。そのためにはフォロワーのニーズを掌握し、メディアでもあるフォロワーの付加価値を高めながらフォロワー数を拡大していく必要性を認識している。
 今後の取り組みについては、広報室はニュースリリース配信時にYouTube、ブログ、Twitterにその情報を載せると同時に、各ソーシャルメディア間を連携させたPRを推進。また、マーケティング本部ではニュースリリースに関連する事例の小冊子をWebサイトに載せるなど、同時多発的に各メディアが連環したPR活動を行うことで、Twitterを自社メディアのひとつとして最適化していくことに注力する構えだ。

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ソーシャルメディアを活用したPR活動“PR2.0”


月刊『アイ・エム・プレス』2010年2月号の記事