カメラ・プリント専門店「カメラのキタムラ」やこども写真館「スタジオマリオ」などを展開する(株)キタムラでは、2009年5月からTwitterの活用を開始。公式アカウントのほか、カメラ情報・口コミサイト、Twitter上のカメラ・写真に関するツイートの自動収集サイトも運用し、さらに店舗独自アカウントの試験運用にも着手している。
主目的はリアル店舗への来店促進
“デジタル時代の写真生活提案企業”を目指し、カメラ・プリント専門店「カメラのキタムラ」やこども写真館「スタジオマリオ」などを展開する(株)キタムラ。同社では、2009年3月にTwitterのアカウントを取得し、同5月から活用を開始した。
同社におけるTwitter活用の主な目的は、来店促進だ。同社では、カメラなどのネット販売を行う「ネットショップ」や写真プリントをネット上で受け付ける「ネットプリント」などの事業も展開しているが、基本は専業ならではのノウハウを生かしたアドバイスやコンサルティングできる店頭販売にほかならない。実際に「ネットショップ」や「ネットプリント」でも店頭渡しが多くの比重を占めるなど、店舗を軸としたマルチチャネル化を推進している。
同社では、10年以上前からメールマガジンの配信を行うなど、インターネットを活用した来店促進にも積極的に取り組んでおり、Twitterの活用もその一環として考えられた。
2009年12月現在、同社がTwitter上で運用しているアカウントは、基本的に公式企業アカウントである「camera_kitamura」とカメラ情報・口コミサイト「cameranavi」の2種類。それ以外でもTwitter上のカメラ・写真に関するツイート(つぶやき)を自動収集するポータルサイト「Twica」を運用するほか、岡崎・伊賀店、浜松・柳通り店、富山・中川原店などの5店舗が、店舗独自のアカウントを試験的に運用している。
フォロワー数は「camera_kitamura」が約2,700、「cameranavi」が約600であり、いずれも着実に増加している。
以下、公式企業アカウント「camera_kitamura」について、その運用実態をリポートする。
宣伝色を抑えて日常的で気軽なコミュニケーションを演出
「camera_kitamura」は現在、主に営業部販売促進部門のWebマーケティング担当者、およびEC推進本部ネット物販部門のHP・メルマガ・ブログ担当者の2名によって運用されている。
オペレーション時間は、担当者の就業時間に準ずるかたちで10時~19時が基本。ただし、両担当者とも他業務と並行して担当しており、Twitterに費やす時間は1日1時間にも満たない。書き込みは1日平均5~6件程度だが、特に定期的に行っているわけではなく、また、RT(リツイート)や返信への対応も気付いた担当者が随時行うというかたちであることから、作業負担はさほど大きくない状況である。
ツイートの内容は、カメラやデジカメプリントの関連情報、ネットショップのキャンペーン情報など。ツイートにはどちらの担当者が発信したかがわかるよう、必ず最後にニックネームを加え、また、時には担当者のプライベートに関する情報なども織り込むことで親近感を演出している。
特に留意しているのは、宣伝色をあまり出さないことだ。Twitterは短い「つぶやき」のやり取りによる緩やかなコミュニケーションを特徴とするメディアであるという認識から、直接的な購買訴求ではなく、日常的で気軽なコミュニケーションの中で、自然に「キタムラに行ってみようかな」という気持ちを誘発させることを理想としている。
フォローについては、「フォローされたらフォローする」という相互フォローを基本としている。フォロワーのプロフィールについては、RTや返信の内容などから、やはりカメラ・写真好きの人が多いと認識している。中には同業他社のスタッフからのフォローもあるとのことだ。なお、RTや返信への対応については、公開で行うことが基本となっているが、個別性の高い質問やクレームへの回答については、ダイレクトメッセージを利用することもある。
RT・返信数は1日平均10件程度だが、例えば2009年11月に「カメラのキタムラ」で開始したカメラのレンタルサービスのように、新規性の高いトピックスを書き込んだ時にはRTが30件前後に及ぶなど、書き込みの内容によって差が大きいようだ。
RT・返信内容の同社ビジネスへのフィードバックについては、現状ではシステム化は行っておらず、また定期的なリポートの作成などには至っていないが、必要に応じて社内各部署に情報提供を行っており、例えば、前出のカメラのレンタルサービスなどについては、ナマの反応であるRT・返信の内容を担当者に伝えることで、よりよいサービスづくりに役立てているとのことである。
2009年11月に「カメラのキタムラ」で開始したカメラのレンタルサービス。TwitterサイトでのRTは30件前後に及んだ
課題はコミュニケーションの継続性
「camera_kitamura」の運用開始に当たっては、公序良俗に反したり、誹謗中傷に当たったりするような書き込みが行われることも若干懸念されたが、これまでのところ、同社のツイートに対して否定的な意見が書き込まれる場合でも、理性的な範囲に止まっており、大きな問題は発生していない。同社ではこの点について、「Twitterでは書き込んだ人のツイート履歴が確認できる仕組みとなっていることが、心理的な抑制につながっているのではないか」と分析している。
「camera_kitamura」の展開における今後の課題としては、内容のあるコミュニケーションをいかに継続的に行えるかという点が挙げられている。
「camera_kitamura」は企業が運用する公式アカウントであり、奇をてらったツイートで注目を集めることはできず、また無意味である。従って、地道な取り組みを継続していくことがベースとなるのだが、これまでの運用において、「返答がしやすい内容の質問を投げ掛けることで、多くのRT・返信が生まれ、やり取りが活性化する」など、いくつかの知見が得られている。このことから、今後はこうした知見を生かすことで、コミュニケーションの活性化を図っていく方針だ。
なお、「camera_kitamura」の展開においては、フォロワー数やRT・返信数、さらにはツイートの中に織り込んだURL経由での同社Webサイトへのアクセス数などはカウントできるが、それが最終目的であるリアル店舗への来店促進にどの程度寄与しているかという部分が不透明であり、明確なROIの測定は難しい状況にある。現状では、前述のようにTwitter運用のために割いているマンパワーもさほど多くなく、また、企業によるTwitter利用自体がまだまだ実験段階にあるという認識から特に問題視していないが、今後、Twitter人口が増加し、マーケティング装置としての位置付けが確立した段階では、ROI測定のための指標の明確化などにも取り組んでいく意向である。