“富良野”発信のコラボレーションDMで“相互創客”

(有)とみたメロンハウス/(株)ルノール(菓子工房フラノデリス)

農産物の通信販売を展開する(有)とみたメロンハウスと、「菓子工房フラノデリス」ブランドで洋菓子の通信販売を手掛ける( 株) ルノールは、2008年夏の中元シーズン、“富良野”という共通キーワードを軸とするDMコラボレーション・キャンペーンを展開。期待を上回る高いレスポンスを獲得した。

“富良野”を共通キーワードとするDMコラボ・キャンペーンを展開

 いずれも北海道・富良野を拠点として、メロンをはじめとする農産物の通信販売を展開する(有)とみたメロンハウスと、「菓子工房フラノデリス」というブランドでプリンやゼリー、ケーキなどの洋菓子の通信販売を手掛ける(株)ルノールは、2008年夏の中元シーズン、“富良野”という共通キーワードを軸とするDMコラボレーション・キャンペーンを展開した。
 キャンペーンの内容は、それぞれの顧客に対して送付するDMの中に、コラボレーション相手の商品を紹介するA4サイズのリーフレットを同封するというもの。両社の社長が並んだ写真に「私の大好きな富良野の味覚をご紹介いたします」というメッセージを添えることで、社長がコラボレーション相手の商品を推奨するかたちを採った。
 発送は、従来からDMに力を入れていた「とみたメロンハウス」が先行実施し、その後、それまであまりDMを活用してこなかったルノールが実施するかたちで、それぞれ2万通ずつを発送。「とみたメロンハウス」のDMで約5%、ルノールのDMで約3%の顧客が、コラボレーション相手の商品を注文するという高いレスポンスを得た。また、このキャンペーンはその取り組みが評価され、「第23回全日本DM大賞」で銅賞を獲得している。

“リバースエンジニアリング”をベースにDMをリニューアル

 今回のDMコラボレーション・キャンペーンは、従来からDMに注力していたとみたメロンハウスが、その投資対効果を高めるために、最大の需要期である中元シーズンをターゲットとして、クリエイティブの全面リニューアルに取り組んだことに端を発する。なお、リニューアルに当たっては、ダイレクトマーケティング・エージェンシーのフュージョン(株)とNPO法人ダイレクトメール推進協議会(DMPA)のコンサルティングを受けた。
 コンサルティング業務を担当したDMPAの吉川景博氏は、まず、従来のとみたメロンハウスのDMを、工業分野などで用いられる“リバースエンジニアリング”という手法によって解析。販売戦略やコンセプトとの整合性や差別化のポイント、オファーや提供ベネフィットなど、さまざまな角度からの分析により、改善ポイントの明確化を図った。
 その結果、改善項目として挙げられたのは、「開封率アップのための施策」「商品写真を見る前に発送主(とみたメロンハウス)を思い出してもらうための工夫」「希望商品にすぐたどりつく体裁」「注文までのストレスの軽減」の4点。例えば「開封率アップのための施策」については、封筒に挨拶文とメロンのみずみずしい写真を掲載。「商品写真を見る前に発送主を思い出してもらうための工夫」については、封筒に店舗の写真を掲載し、さらに開封時に最初に目に触れるかたちで挨拶状を封入するなど、さまざまな具体的な改善を行った。これらの結果、当該シーズンのDMキャンペーンでは35%のDMレスポンス率を達成、前年のキャンペーンと比較して30%増の売上高を記録したとのことである。
 今回ケーススタディの対象としたDMコラボレーション・キャンペーンは、この全面リニューアルの一環として行われたもの。その背景には、元々親交があった両社社長の、「協力して富良野を盛り上げたい」という思いがあった。なお、ルノールの洋菓子通信販売では従来、Web中心の展開を行っていたことから、DMの本格的な展開は今回が初めてであり、そのクリエイティブに関しても、前出のフュージョンとDMPAがコンサルティングを行ったとのことである。

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“富良野”から届くさわやかな便り。コラボレーションで楽しさが2倍に。「封筒・レター・ブロシュア・招待状・申込方法のご案内」の5点セット

さまざまな工夫により関係性の高さを強調

 今回のDMコラボレーション・キャンペーンの目的は、お互いの紹介により、それぞれが新たな顧客を獲得する“相互創客”。その効果を最大化するため、クリエイティブにおいてはさまざまな工夫が凝らされている。
 例えば、単に紹介リーフレットを同封するだけでなく、挨拶状の文面の中でもそれぞれ、「本状には、『私たちスタッフも大好きなフラノデリス様』のご紹介状もご案内させていただきました」「今回は、同じ富良野の地でこだわりのメロンを生産しております『とみたメロンハウス』のご紹介も同封しております」という表現を織り込むことで、お互いの関係性の深さを強調している。また、紹介リーフレットにも、前述の「私の大好きな富良野の味覚をご紹介いたします」という共通コピーのほか、それぞれ「とみたメロンハウスのスタッフが大好きな『フラノデリス』さんをご紹介いたします」「フラノデリスのスタッフが大好きな『とみたメロンハウス』さんをご紹介いたします」というコピーを付加して、DMを受け取った顧客の興味喚起を図った。さらに、紹介する商品は、両社の代表的商品に絞り込むことで、レスポンス率の向上につなげている。

自社独自の展開だけでは得られない新たな“気付き”も獲得

 今回のDMコラボレーション・キャンペーンは、前述の通り、高いレスポンス率を実現しており、両社とも十分に期待を上回る成果であったと認識している。同時に自社独自の展開だけでは得られない新たな“気付き”も得ることとなり、その後の事業展開にも変化が生じているようだ。
 とみたメロンハウスでは今回のキャンペーンを通じて、Webの拡充に注力するルノールの姿勢に感化され、Webのリニューアルを実施。キャンペーンの後に発送した、自社商品として形やマスク模様は不揃いだが味は正規品と変わらない「はねものメロン」の格安価格での提供をオファーする3面圧着ハガキDMでは、受注をWeb経由に限定することで、販売コストの低減を図った。このDMレスポンス率は30%にも及び、サーバが一時パンクする事態に陥った。現在、同社ではさらなるWebの増強に取り組んでいる状況である。
 一方、ルノールでは、今回のキャンペーンをDM展開のトライアルと考えていたが、予想以上の手ごたえがあったことから、今後もWebとDMを組み合わせたメディアミックスの取り組みを継続的に実施していく方針である。
 当然のことながら、DMコラボレーション・キャンペーン自体についても継続実施していく予定であり、今後もさらなる“相互創客”につながる施策を模索していく意向だ。
 なお、前出の吉川景博氏によれば、「北海道には魅力的な商材が数多く存在するが、その魅力の訴求が十分に行われていないケースも多い」とのことであり、フュージョンとDMPAでは、今後もその魅力を広く知らしめるためにDM企画のサポートを行っていく意向だ。特にマッチングのよい商材があれば、今回のようなDMコラボレーション・キャンペーンにも、積極的に取り組んでいく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2009年5月号の記事