1988年、環境NPO「日本リサイクル運動市民の会」の活動を母体に設立されたらでぃっしゅぼーや(株)。同社では以前からインターネットの利用に積極的に取り組んでおり、主にWebによる情報提供や利用者の募集などに活用してきた。2006年11月からは、単品のカタログ「元気くん」について、ネット受注を開始。2007年7月には、オンラインデリカテッセン「PICODELI(ピコデリ)」もオープンし、新たな顧客開拓に注力している。
環境NPOを母体に“環境保全型農産物”の宅配事業を展開
らでぃっしゅぼーや(株)は1988年、環境NPO「日本リサイクル運動市民の会」の活動を母体に設立され、“環境保全型農産物”の会員制宅配事業「らでぃっしゅぼーや」をスタートした。これは「有機・低農薬農産物の生産・消費の輪を広めることは、環境保全活動の一環である」という考えに基づくものであり、当時、安全な食品を食べたいと思っても簡単には入手できなかった中で、誰でも手軽に安全な農産物を手に入れることができるサービスとして、スタート直後から人気を博した。翌1989年には畜産品、水産品、加工食品、さらに環境に配慮した日用品の取り扱いも開始。現在では、年間約4,000アイテムを全国約8万6,000世帯の会員に届けている。
「らでぃっしゅぼーや」事業において商品の中心となっているのは、年間約140種類の野菜や果物を組み合わせた基本セット「ぱれっと」。分量や野菜・果物の配分などを変えた7つのセットが用意されており、さらに、「たまごセットなし」「たまご6個セット」「たまご10個セット」のいずれかを組み合わせた21種類の中から、各会員が野菜・果物の好みや消費量に合わせて選ぶことができるようになっている。配達は週1回。地域ごとに定められた曜日に、東京、神奈川、愛知、大阪、北海道に設けている配送拠点周辺地域については専用車、そのほかの地域についてはヤマト運輸(株)の宅急便により、定期的に配達される。ちなみに専用車の配送軒数は1日平均60~70件程度となっているとのことだ。
「ぱれっと」以外の商品としては、注文品の「元気くん」、定期品の「定番くん」、頒布会方式の「準定期品」がある。
「元気くん」は米や畜産品、水産品、加工食品、日用品など、年間約4,000アイテムの豊富な品揃えの中から必要なものを、「ぱれっと」と一緒に届けられるカタログ『元気くん』から注文する仕組み。例えば、月の1週目に届けられる『元気くん』により商品を選び、2週目の「ぱれっと」配達時に注文すると、3週目の「ぱれっと」配達時に商品が届けられる。
「定番くん」は米や牛乳や豆腐など、よく使う食材を登録しておけば、毎週あるいは隔週など、好みのサイクルで「ぱれっと」と一緒に届けられるというもの。42アイテムが用意されている。「準定期品」は、旬の味覚や地方の逸品などを定期的に届ける頒布会形式の企画。年間で約50企画を用意している。
「らでぃっしゅぼーや」の取扱商品は、すべて同社が独自に制定した環境保全型生産基準「RADIX」を満たすもの。生産者団体をはじめとする取引先とも積極的な交流を行うことにより、品質の高い商品を取り揃えている。品質保持のため、生産に通常以上のコストがかかるケースも多いことから、価格水準は市販品と比べて若干高めであるが、会員の理解は得られているようだ。なお、月間平均利用額は2万円前後になっている。
食の安全に対する関心の高まりの中で会員増加ペースが加速
「らでぃっしゅぼーや」会員は2007年11月現在、約8万6,000世帯。近年、食の安全に対する関心が高まる中、会員増加ペースが加速している。
会員募集の中心となっているのは、新聞折込みチラシ。2004年から開始した4週間の「お試しサービス」を訴求しており、新規会員は同サービスを利用後、その大半が本格的な利用に移行している。新聞折込みチラシ以外では、ポスティング、TVCM、アフィリエイト広告などを利用。そのほか、既存会員による紹介なども活発に行われている。なお、新規会員のプロフィールとしては、妊娠や出産を機に入会する30~40代のファミリー層や、経済的に余裕ができた団塊の世代の世帯が多い。
会員との交流にも力を入れている。月刊の会員情報誌『おはなしSalad(サラダ)』や週1回配信のメールマガジン(講読登録会員:約2万名)などで、生産者情報等を発信。さらに、年に40~50回、産地交流会を実施して、生産者と会員のリアルな場での交流も促進している。会員の参加意識も高く、大規模イベントでは数千名が参加するケースもあるそうだ。また、横浜と神戸にはスタジオを設けており、食育教室、ベビーマッサージ、ヨガ、アロマテラピー講座など、食や健康にかかわるイベントを随時実施し、会員や一般生活者とのコミュニケーションを図っている。
「らでぃっしゅぼーや」のメンバーズサイト
インターネットの即時性活用が課題
同社では以前からインターネットの利用に積極的に取り組んでおり、主にWebによる情報提供などに活用してきたが、2006年11月からは、「元気くん」におけるネット受注を開始した。これは、特にインターネットから入会した会員においてネット受注を求める声が多かったことに対応したもの。「元気くん」の受注では、OCR注文用紙によるものが大半であり、ネット受注は電話受注とともにこれを補完するものとして位置付けられている。現在、注文個数ベースで約8%がネット受注によるものとなっており、徐々に増加する傾向にある。ちなみに、電話受注は注文個数ベースで約15%。なお、ネット受注開始当初では、OCR注文用紙とネットの双方から注文があった場合の処理などについて、やや混乱することもあったが、開始から1年以上を経て、注文データベースの整備などが進み、現状では円滑な運用が行われている。
さらに、2007年9月には、オンラインデリカテッセン「PICODELI(ピコデリ)」もオープンした。これは「らでぃっしゅぼーや」事業で培ったノウハウやインフラを活用しながら、主に働く女性をターゲットに無添加の調理済み食品(冷凍)やスキンケアグッズなどの雑貨を宅配するというもの。注文はネットのみで24時間受け付けており、注文から最短で2日後(一部地域を除く)に、宅急便により商品が届く仕組み。宅配日時の指定も可能だ。商品ラインアップは、食品約170アイテム、雑貨20~30アイテムに上る。
将来的には、インターネットの即時性をいかに活用していくかが課題となっている。
例えば、「らでぃっしゅぼーや」の主要取扱商品である農産品は“自然の恵み”であり、生産者と連携して計画的な生産を進めているものの、天候状況などにより、1週間程度のずれは避けられないこともある。このような状況を、インターネットを通じてリアルタイムで会員に伝え、理解を深めるとともに、収穫と注文のタイミングを近付けることで、より新鮮な商品の配達につなげていく意向だ。