2000年、楽天市場で「ストラップヤ」を開設以降、ストラップ専門店としての地位を確立してきた(株)ストラップヤネクスト。多くの人の目に触れることを第一目的に、さまざまなモールに店舗を開設してきた。豊富な品揃えを武器に、リアルの雑貨屋や量販店などに販路を拡大し、躍進を続けている。
ニッチな商材を武器にモールに続々と出店
(株)ストラップヤネクストの誕生は、現在、代表取締役の樋口敦士氏が1997年に個人でアクセサリーの通販を開始したことがきっかけとなっている。1998年5月に法人設立後、1カ月に3万個ほどのストラップを中国で生産・販売していたが、その後、生産をほぼ停止。1999年8月より卸業へと転業し、本格的にストラップ専門のB to Cのサイトを開始した。「当時より、アマゾンや楽天が注目を集めておりましたが、ストラップに絞って販売しているサイトはほとんどありませんでした。さらに、ニッチな商材で競合がなかったことと、仕入れ・販売ルートを持っていたことで、このサイトの運営を決意したのです」と樋口氏は語る。当初から膨大なアイテムを揃えたわけではなく、約100アイテムからのスタートだったそうだ。
その後、2000年には、楽天市場に出店。2003年のYahoo!ショッピング、2004年のビッターズに続き、2007年4月にはアマゾンへの出店を果たした。訪問者の多いモールで認知および実績を上げ、ストラップ専門店としての地位を築いてきたのだ。といっても、最初から多店舗展開を考えていたわけではない。ビジネスを通じて、各モールが豊富な顧客を抱えていることがわかったため、モールへの出店を通して入り口を増やす方針に転換したと言う。
先行した取り組みが奏功し、2004年、2005年と、「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」パソコン・周辺機器ジャンル大賞を受賞。2005年には(株)ディー・エヌ・エーの運営するビッターズで「評判のベストショップ」新人賞に入賞している。
これまでは、「Strapya.com」のトップページにアクセスした訪問者が次のページに飛ぶと、楽天のサーバに進むようになっていたが、2006年6月にはシステム的な改良をはかり、「Strapya.com」のトップページから入った訪問者が同サイト内を回遊できるようにした。現在はケータイサイトを含め10店舗を数える。売上高12億円(2007年4月期)のうち、ネット通販の売り上げは10億円を占める。
仕入れの9割は買い取りで
同社ではサイトによって、商品の見せ方を変えている。楽天市場に最初に出店したのは携帯グッズ専門店。「専門店」という名前にこだわっているのは、ストラップを専門に取り扱っているというブランドイメージ作りを狙っているため。Yahoo!ショッピングにはケータイグッズもあるもののジュエリーなどのファッションアイテムが多く、店舗内になんでもあるイメージだ。
楽天市場では、ジュエリーコーナーのほか雑貨コーナーにも出店。品揃えはほぼ同じだが、店舗によって表現を変えている。例えば雑貨コーナー「にぎわい商店」は、管理人の個性が感じられるセレクトショップとなっている。
お客様には、オリジナルショップではなく、楽天市場、あるいはYahoo!ショッピングというモールで買っているという感覚が強いと樋口氏は見ている。そのため、モールのユーザーからどのように見られているかという視点から、商品の見せ方やコピーなどで訴求の仕方に工夫を加えている。特に、楽天市場では毎日情報を更新しており、さまざまな表現で商品を紹介することにより、モール内で検索されてヒットする確率を上げているそうだ。
現在、自社で制作しているオリジナル商品は5%程度。商品の仕入れ先については、大きく3つの窓口がある。ひとつは、既存取引先からの営業、2つ目は、スタッフが店頭やTVで見かけた商品の仕入れルートを開発するチャネル、3つ目は、新規取引先からの営業だ。それぞれがおおよそ3割ずつの比率となっている。
商品の約9割は買い取りで、残り1割が予約品や受注発注。多くの取引先と継続的に取り引きがあり、その数は1年間で約400社に及ぶ。千葉県柏市にある倉庫(物流センター)は80平方メートルほどの広さだが、回転も早く、商品自体が小さいため手狭にはなっていないと言う。
それぞれのサイトで見せ方を変えている。サイトごとにランキングされる商品も違っている
「strapya.com本店」トップページ(左)/楽天市場店(中)/Yahoo!ショッピング店(右)
リピートオーダー率は4割 2割の売れ筋商品で収益の8割を構成
同社ではサイトで取り扱う商品点数が1万点を超える。ストラップのパーツ(20円~)といった低単価商品がある一方で、18金素材のストラップは数万円、象牙の素材は10万円を超える。数万円単位の商品も、1カ月に数個は売れるという。とは言え、「いろいろな商品があったほうが面白い」というスタンスで、高額商品を数多く販売しようという意識はあまりない。
定番の売れ筋商品は、イニシャルなどの文字を刻むことのできるオリジナルストラップ。ちなみに、キャラクターなどの商品は発売するとすぐに売れるが、1カ月ほどで売れ行きが鈍るそうだ。
ストラップをコレクションしている顧客も多く、リピート率は約4割に上る。特にリピーターには、メールマガジンを見て衝動買いする傾向が見られる。
商品価格は、一般的なストラップで数百円。1回の購入時に複数個を買い求めるケースが多く、商品アイテムの増加に伴い、客単価も以前の1,700円から2,500円と伸びを見せている。売り上げの上位20%の商品が、収益の約80%を占めているという。
購入チャネルの比率は、 PC:ケータイでおよそ7:3。決済方法には、クレジットカードと代引きがあり、各々55%、45%とほぼ半々の比率とのこと。
店舗数の拡大に注力 海外展開も視野に
これまで、同社では主に他社のポータルサイトを活用してECを展開してきたため、サイト訪問者や購入者の分析にはあまり注力しておらず、ひたすらネットビジネス勃興期の勢いに乗ってきたという。
現在では、ECのインフラはある程度成熟したとの認識のもと、店舗販売にも積極的に乗り出している。雑貨店や家電量販店などの販路を確保しており、ネット同様、多くの人の目に触れることで販売機会の増大を狙う。「リアルのマーケットは、ネットに比べれば1店舗当たりの売り上げは少ないが、全体では巨大な市場になる」と樋口氏は確信している。
また、海外ではストラップ市場が未開拓ゆえに収穫も大きいと考えており、海外市場への進出にも意欲的だ。冒頭で述べたように、先ごろ、アマゾン・ジャパンでの販売を開始したが、国外配送は不可であるため、すでに開設している英語版自社サイトに続いて各国語サイトの開設を予定しているという。