「ケンコーコム」のECサイトは、1日当たりのサイト来訪者数17万人、購入者数4,000人を誇る健康メガショップである。アフィリエイト・プログラムと「ケンブロ」の戦略的連携による徹底した検索エンジンマーケティングを展開。多様な健康ニーズと多種多彩な健康関連商品をインターネットによって効率的にマッチングしている。
需要第一で品揃えを拡充し、7万点を取り扱う
健康関連分野で国内最大級のB to C のECサイト「ケンコーコム」は、1日当たりのサイト来訪者数17万人、購入者数4,000人という健康メガショップである。多様な健康ニーズと多種多彩な健康関連商品をインターネットによって効率的にマッチングし、eコマースを通じて消費者の健康づくりに貢献してきた。
eコマース事業開始当初は、ドラッグストアの売れ筋をネット販売するスキームで取扱商品点数はわずか59商品だったが、業績は低迷。その原因を緻密に分析した結果、ロングテールに理念の体現と商機を見出した。以降、一般に小売業の王道とも言える売れ筋商品の絞り込みではなく、週400点、年2万点を追加するペースで品揃えを拡充し続け、他社に先駆けてロングテールを意図的に築き上げて来たのだ。
現在、同サイトでは、健康食品、医薬品、健康機器など約7万点を取り扱っている。一般的なドラッグストアの店頭取扱商品点数は1万~2万点と言われることから、ケンコーコムの品揃えの豊富さは格段だ。2007年3月期の売上高は65億6,526万円に達しており、アイテムごとに見ると、いわゆる80:20の法則がほぼ成立していると言う。
検索エンジンマーケティングを駆使
約7万点もの品揃えを誇るケンコーコムは、購入ニーズのあいまいな人がフラリと訪れて何を買おうか探すのではなく、検索エンジンで欲しい物を探し、商品ページに直接アクセスしてくるのが特徴だ。そのため、目的をもって商品を探す潜在顧客が必ずケンコーコムにたどり着くよう、検索結果での上位表示による来訪機会の創出を集客の柱としている。同時に、来訪者が商品情報に素早くたどり着けるサイト作りを心掛け、“探していたものが見つかり満足のいく買い物ができる”という経験価値の創出により、リピートを獲得してきた。
豊富な品揃えを誇るケンコーコムへの来訪機会創出を支える施策のひとつが、アフィリエイト・プログラムとブログの戦略的連携による徹底した検索エンジンマーケティングだ。消費者へのリーチ、投資対効果、コンテンツのコントロール、効果測定などの点で優れたアフィリエイト・プログラムを、SEO(Search Engine Optimization)効果を追求するべく自社運営している。一方、アフィリエイト登録者との連携によるトラフィックの誘導促進をはじめ、健康関連の情報を効率的に集約することを目的に開設した、トラックバック式健康情報ポータルサイト「ケンブロ」は、ブロガーによる投稿を巧みに動機付ける。さらにはアフィリエイトサイトからのリンク増によって、検索エンジンにおけるケンコーコムのポジショニング向上に寄与していると考えられている。アフィリエイト登録者数は約6,000名、登録サイト数は7,500サイトに上る (2007年4月現在)。そしてこれらの数字はさらに増加傾向にあるという。
在庫リスクを低減する施策を展開
一般に、幅広い商品ラインアップときめ細かい宅配サービスとはトレードオフになりがちだ。しかし同社は独自に構築した物流の仕組みによって、正確で迅速な配送のみならず、在庫リスクの抑制をも実現している。例えば、2004年に自社で開設した福岡物流センターはEC専用の接点だが、サプライヤー隣接であることが戦略上のポイントだ。同社は買い取り仕入れが基本。そこで、受注予測に基づいてサプライヤーに発注後、隣接倉庫に即時納品してもらうことで、極端に言えば数時間しか在庫しないという、出荷リードタイムの大幅短縮を達成したのである。一方、2006年開設の宇都宮物流センターは、売れ筋上位25点を集中的に扱い、主力である関東の顧客への納期短縮と物流コスト削減を実現している。
こうした独自の物流システムを活用して開始したのが新事業「ドロップシップサービス」だ。ケンコーコムが自社資源を有効活用できる一方で、パートナー事業者は、ケンコーコムの磐石な物流体制によって顧客満足向上や経営の効率化が期待できる。
また、一部のニッチ商品における委託仕入れの導入は、特に“テール部分”の商品における在庫リスク軽減に大きな役割を果たしている。この方式はニッチ商品のみならず、新規パートナーとの取り引きでも採用し、リスクの軽減を図っている。
一方、健康・美容に関心をもつ人々が1日に17万人訪れるという強大な集客力を、メーカーのプロモーションに活用していただこうと、メディア事業の展開も開始した。ケンコーコムユーザーに対する商品PRの場として「商品PRページ」をメーカーに提供するサービスで、商品情報を提供して訴求力を高めたいメーカーと「商品のことをもっと詳しく知りたい」というユーザーニーズとをマッチングし、エンドユーザーのより良い商品選択をも支援している。「ハウス 食物せんいのおいしい水」(ハウス食品)をはじめ、すでに約100商品の商品PRページが作成されている。
2007年4月には、新発売の栄養食品「SOYJOYカロリーコントロール80」(大塚製薬)について、モニター試用の感想をブログに書き、ケンブロにトラックバック投稿してもらうトラックバックコンテストを開催。ケンコーコムを多角的に活用したメディアプロモーションとして、話題性に加えて確かな成果をもたらした。メディア事業の展開は、アフィリエイト登録者数やトラックバック数の増加にも寄与している。
トラックバック式健康ポータル「ケンブロ」
より多くの人の健康ニーズを叶える
売れ筋ランキング上位は、「毎日骨ケアMBP」(大塚製薬)、「DNSプロテインホエイ」(ドーム)など。取り扱いチャネルの少ない商品のほか、対面では買いにくいデリケートな商品の需要が高い傾向があるなど、店頭とは異なる同社独自の売れ筋がある。客単価は、数百円から十数万円まで幅広い。
たった1人でも需要がある限りは取り扱うという商品戦略を徹底しているため、メーカー都合による終売以外、売り上げのいかんにかかわらず、同社自らが取り扱いを中止することは、基本的には行っていない。こうして、まさに「ケンコーコムに行けば健康関連商品はなんでも手に入る」状態や、「一人でも多くの人の健康ニーズを供給側の論理ではなく、ユーザー基点で叶える」環境を作り出しているのだ。この品揃えの豊富さこそが同社の優位性の源泉と言えるだろう。今後も健康関連商品のNo.1プラットフォームとして、商品および情報の拡充を加速させ、本年度末には10万点の取り扱いを目指す。
その際、物流の効率化および在庫率の低減には引き続き手を緩めずに取り組む構えだが、いかに安心して購入いただくかを追求するべく、品質の“厳選”に一層注力するという。特に健康関連商品など、表記に細心の注意が必要な商品については、薬事監査室などで厳しくチェックを行い、法令順守のための体制を整えている。また、医薬品については、顧客視点での情報提供に注力し、ネット販売でも安心・安全に医薬品を購入できるという信頼を積み上げていく考えだ。こうした地道な活動を通して、生活者の医薬品購入チャネルの選択肢を増やしていきたいと言う。
幅広い品揃え、検索エンジンマーケティング、物流システムを戦略的にリンケージさせた独創的なビジネスモデルにより、比類なき強さを誇るケンコーコム。「健康ニーズを叶える」という理念の具現化に向けての今後の取り組みに、業界を超えて熱い視線が注がれている。