システムを早期導入・整備しリアルタイム・高付加価値なサービスを提供

三井住友カード

三井住友カード(株)は2003年7月、大阪に大規模コンタクトセンター「フォー・ユー・センター」を開設。「What can I do for you today?」をキーワードに、問い合わせへの迅速な回答と顧客データベースに基づくクロスセルを展開している。2005年秋からは、Webコラボレーションサービスを開始。同社の経営理念である「お客様第一主義」を実現する先進的な取り組みが奏功している。

IP化・PBX機能を整備しスムーズな応対を実現

 クレジットカード業界大手の三井住友カード(株)は、顧客起点のサービスを提供する「マーケット・イン」を標榜し、顧客との直接のコンタクトチャネルであるコンタクトセンターやWebサイトで、充実したサービスを提供する体制を整備してきた。中でも、お客様と直接電話で接するコミュニケータが一対一のきめ細やかな応対を行うためには、お客様の利用履歴やどんなDMが送られているかといった情報が不可欠。このため、同社では、センターの機能強化をインフラ・従業員研修の両面から進めてきた。
 2003年7月には、大阪に約900席規模の「フォー・ユー・センター」を新築。従来の東京のセンターと合計で約1,200席規模の体制を構築した。これに先駆け、2003年2月に東京、大阪両本社とデータセンター間をIP化し、拠点間で電話の自動転送や端末の共有化を実現。現在は、コンタクトセンターはもちろん、地方の支店やサービスセンターも含めてIPネットワークで結び、一体化して運営。通話コストを大幅に削減している。
 センターの主な業務は、各種問い合わせに対応するインフォメーション関係、加盟店からの承認取得などのオーソリゼーション、ファイナンス関係、アウトバウンドの4つ。後者の2つは大阪のみの業務だ。
 受電は、PBXの機能のひとつであるBSR(ベスト・サービス・ルーティング)により東西一体運営を実現することで、東西の着電格差を解消している。カードの種類によって電話番号を分けていることに加え、IVRにより会員番号を入力してもらい、顧客を特定。提携カードを複数保有するお客様など、予測される質問内容が多岐にわたる場合は新人コミュニケータへ入電させないなどの配慮をしている。
 センターは、運営企画を行うカスタマーデスク統括部のほか、業務別に4つの部に分かれている。部長、マネージャー、チームリーダー、トレーナー、SV(スーパーバイザー)、ASV(アシスタント・スーパーバイザー)、コミュニケータという構成だ。採用後、コミュニケータは1~3カ月間の初期研修を経てデビューする。同社ではその後のスキルアップを重視し、個々のコミュニケータにカルテを用意。フォロー研修の強化に役立てている。SVが日々の指導を行うほか、ウィークポイントの克服を目的としたワンポイントのフォロー研修を繰り返し行うなどの工夫をしている。「勤務経験を積むに連れ、コミュニケータのスキル格差が徐々に生じてきます。その格差を少しでも是正したいと考えています」と、同社のカスタマーデスク統括部シニアスタッフの臼井賢一氏は語る。また、コミュニケータのモチベーション向上の施策として、3年前から派遣社員を対象として、契約社員・正社員へと続くキャリアアップ制度を実施。現在、約40名が契約社員・正社員へ登用されているという。

CuSISをフル活用し付加価値の高い対応を実現

 コミュニケータが活用しているのが、CTIシステム「CuSIS(カシス)」だ(図表1)。CuSIS画面上で会員番号を入力すると、氏名・住所はもちろん、利用履歴や、何月何日にどのような内容のDMを送付したか、お客様からの電話やeメールでの照会履歴がわかる。さらに、お客様の利用状況に合わせて、優先度の高い(お客様にとってメリットの高い)サービスが最大3つまで画面上に自動的に表示される機能を追加。これを基に、お客様からの用件終了時に、クロスセルを積極的に展開している。

システム図

【図表1】CuSISの操作画面 対応に必要な情報を最短で呼び出せるように工夫されている

 CuSISには、キャンペーン情報などの問い合わせに対するマニュアル機能も備わっている。例えば、キャンペーンを担当する営業や商品企画などの各部署が、フォーマット化されたマニュアルに必要項目を入力。電子マニュアル化以前は、まず各部署が作成した資料を基にセンターで研修を行い、その都度センターから質問された内容を各部署にフィードバックしており、効率が悪かった。そこで、コミュニケータやSVから挙げられた質問を網羅してフォーマットを作成。キャンペーン開始の2週間前にフォーマット上の項目をすべて埋める、というルールを敷いた。コミュニケータにとっても、何ページ目に何の項目があるかがひと目でわかり、リアルタイムでの応対をスムーズかつ効率的に進めることが可能になったという。
 また、同社では2002年から、お客様から寄せられた声をマイニング・蓄積する「Voice Forth(ヴォイス・フォース)」 をWebベースで社内共有化している。センターで、コミュニケータがCuSIS画面の「フリーメッセージ欄」に内容を入力すると、自動的にVoice Forthに蓄積される仕組みだ。 これらの声はCS向上委員会で検討し、対応可能なものから随時サービス改善を図っている。

Vpass、三井住友カードiDなど新サービスに対応 進化するセンターに

 同社では、Webサイト上でのサービス向上にも意欲的に取り組んできた。1999年に開始した業界初のインターネットサービス「Vpass」がそれだ。「Vpass」は、会員番号・暗証番号、事前に登録したID/パスワードで、利用代金明細照会やポイントの景品交換、ファイナンス商品の申し込みなど、顧客が自分の都合の良いときに24時間いつでも利用できるサービス。コンタクトチャネルとして重要度を増している。会員がログインすると、カード利用履歴(レストランの利用が多い、海外旅行の利用が多い、洋服など百貨店での利用が多いなど)から推測される、会員の興味にあわせた情報を表示し、きめ細かなサービス提供を実現している。利便性の高さから、会員のニーズも高い。
 同社では2005年9月から、お客様が閲覧中のWebサイトの画面をコミュニケータが共有し、入力をサポートする「Webコラボレーションサービス」を開始した。これはカード業界では初めての試み。Webサイトを見ながら電話をかけてきたお客様と同じ画面をセンターの端末でも表示、コミュニケータがお客様を適格なページに誘導することができる上、必要事項の入力を代行し、お客様は最後の確定ボタンをクリックするだけで各種手続きを完了することもできる。これにより、これまで画面の途中で入力を断念していた顧客に喜ばれるうえに、潜在層の会員化を促進することが可能になった。
 また、大規模プロジェクトである三井住友カードiDの発行開始に伴い、センターでは専用部隊を設置。今後、サービスの中核としてますます進化していくと予想される。引き続き、先進的な取り組みにより顧客起点のサービスの最先端を行く同社に注目したい。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年3月号の記事