セルフサポートの充実で「サービス」「コスト」「クオリティ」のバランスを保った幸せなコールセンターを運営

マイクロソフト(株)

お客様の満足度向上、エージェントのオペレーション環境の改善、「サービス」「コスト」「クオリティ」のバランスを保った健康的なセンター運営を実現しているマイクロソフト(株)。その実現に大きく貢献しているもののひとつは、ナレッジデータに基づく、セルフサポートの充実であった。

製品およびコール数の増加に伴いセルフサポートを充実

 Windows、Officeのほか、開発用ツールから家庭用ソフトウエアまで、幅広い製品を提供しているマイクロソフト。 日本法人の設立は1986年2月。 早いもので今年、20周年を迎えた。
 今日に至るまで、同社製品の普及とユーザーを支えてきたのが、各種コールセンターである。同社のコールセンターは現在、ユーザーの属性別、製品別、有償・無償別に設けられており、今回紹介するカスタマーインフォメーションセンターでは、製品購入前のお客様からの問い合わせを受け付けている。
 各センターでは、品質と生産性のバランスを保ちながら、いかにお客様に良いサービスを提供していくか、長年、意欲的に取り組んでいる。中でも、カスタマーインフォメーションセンターにおいては、ISO9000s規格やマルコム・ボルドリッジ国家経営品質賞を準拠して作成された、カスタマーサービス業務のパフォーマンスを向上させるための改善モデル「COPC-2000 」の手法を取り入れ、客観的な指標に基づいて、「サービス」「コスト」「クオリティ」のバランスを保った、健康的なコールセンターを追求している。
 同センターの開設当初は、まだコール数が少なく、社員が対応に当たっていた。しかし、年々、製品が増加。積極的にPRを行えば行うほど問い合わせが増えていった。また、そのユーザー層は、子どもから社会人、定年退職後のシニア層に至るまで幅広く、対応も一筋縄ではいかない状況になってきた。
 このような製品増、コール増、対応の多様化に対応するには、受付体制の拡充が必須となり、アウトソーシングに切り替えて今日に至っている。さらに、限られた予算内でお客様に満足いただける対応をするために、エージェントの増員と教育の徹底、そしてコールセンターシステムのインターフェースの工夫など、あらゆる角度からパフォーマンスの向上に取り組み、効果を上げている。これらに加えて、お客様の問題を解決するにはさまざまな選択肢が必要と考え、8年ほど前から力を入れてきたのが、セルフサポートの充実だった。お客様から寄せられた問い合わせをナレッジデータとして蓄積。これに基づき、FAQ(Frequently Asked Question)を作成し、Webサイトに掲載している。その数は、現在、数万件に及ぶ。

FAQのクリック数はWebサイトのトップ50入り

 セルフサポートの推進は、一見、企業都合に感じられるかもしれない。しかし、コールセンターに電話がつながりにくい場合や、営業時間外でも問題を解決できるのはもちろん、自己解決を望む人、あるいはそれが可能な人にとってはメリットが大きい。つまり、セルフサポートは、同社とお客様の双方にメリットのある、Win-Winを実現する取り組みなのだ。実際、FAQのクリック数は、同社Webサイトのトップ50に入るほど。同社のWebサイトのページ数は膨大であることを踏まえると、その活用度の高さが実感できる。
 同社では、センターに問い合わせをしてきたお客様の中から承諾を得られた方を対象にアンケートを行い、満足度を調査している。アンケート項目は、「つながりやすさ」「一度の電話で解決できたか」「スピード」「製品に関するご意見・ご要望」「マイクロソフトへのご意見・ご要望」など。一方、セルフサポートの利用者にもWebサイト上で類似のアンケートを実施している。いずれのアンケート結果も詳細は非公表であるが、回を重ねるごとに、数字がアップしているという。毎年、若干の項目変更があるため、単純に比較することはできないが、同社では、センターでの対応、セルフサポートともに、満足しているお客様が多いと見ている。

マイクロソフト1 マイクロソフト2

製品・サービスに関する膨大な情報が網羅されている、同社Webサイトトップページ(http://www.microsoft.com/japan/)(写真左)
同社Webサイト内でもクリック数がトップ50に入るFAQページ「InfoKB」 (http://www.microsoft.com/japan/customer/infokb/Search.aspx)(写真右)

地道なユーザー教育が大きな力に

 FAQの効果はコール数にも表れている。なんと、ピーク時に比べて2分の1に抑えられているのである。FAQがここまで効果を発揮したことの理由として、同社カスタマーサービス統括部 テレコムインフラ・サービスデリバリーチーム オペレーション スぺシャリストの手島伸行氏は、「ユーザー・エデュケーション(ユーザー教育)の効果が大きい」と語る。
 同社では、問い合わせ対応の際、回答内容と同じ情報が掲載されたWebページを案内している。一朝一夕では効果は得られないが、お客様への小さな働きかけが、ゆくゆくは大きな力となって返ってくると考えているのだ。
 また、以前は、ナレッジ・データベースが未整備な環境で対応していたことを考えると、エージェントのオペレーション環境は飛躍的に改善された。だが、ここで注意が必要なのは、ナレッジデータが多すぎることによって迷いが生じないようにすることである。同社では、導入研修およびフォローアップ研修を充実させるとともに、マニュアルを作成して、これに対応している。

幸せなセンター運営は世界レベルでさらに発展

 ナレッジデータの有効活用により、お客様満足度の向上、エージェントの作業負荷の軽減、そして「サービス」「コスト」「クオリティ」のバランスを保った幸せなセンター運営を実現しているマイクロソフト。しかし、「まだまだ改善すべき点はたくさんある」(手島氏)、「CPA(コスト・パー・アクション)の観点から、より良いサービスを追求していくと、新たなチャレンジが生まれる」(カスタマーサービス統括部 サービスレディネスチーム エンゲージメントマネージャ 合田雅子氏)と、さらなるレベルアップに向けて意欲的な姿勢をうかがわせる。
 今後は、各国ごとに設けていたカスタマーサービスのプロセスをワールドワイドで統一。世界規模で俯瞰することで、広報や開発、セールスおよびマーケティングとの連携もよりスムーズに行っていこうと計画中だ。ノウハウを共有して、世界レベルでのさらなる発展を目指す、同社コールセンターの取り組みに注目していきたい。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年3月号の記事