エンターテインメント性溢れるショッピングスタイルが好評

(株)ネットプライス

ユーザー参加型の新しいショッピングスタイル「ギャザリング」が好評を博している(株)ネットプライス。同社は、雑誌・メールマガジン・ラジオなど100以上の媒体と提携し、それぞれの購買層に合ったギャザリング・コンテンツを提供することで、多くの顧客を獲得。年間80万人のユーザー数とともに、50%を超えるリピート率を誇る。また、毎週商品を厳選して入れ替え、常に顧客がアクセスしたくなる仕組み作りを行っている。

「バイイングパワー」を高めることに注力 リピート率は50%を超える

 ショッピング&ギャザリングのサイト「ネットプライス」を展開する(株)ネットプライスは、2000年1月にインターネット上での小売事業を開始して以来、eコマースやモバイルコマースの普及により、2004年9月期には約72億4,948万円の売上高(連結)を達成、飛躍的な成長を遂げている。こうした同社の成長の核となっているのが、ユーザー参加型の新しいショッピングスタイル「ギャザリング」だ。
 ギャザリングとは、参加者、つまり購入者数が増えるほど商品の価格が下がる仕組みのことを言う。例えば、当初9,800円の商品でも、販売個数が10個になると8,800円に、そして20個になると7,800円にまで価格が下がる。価格の動きは商品の人気を示すバロメーターである。購入者にとっては、自分のほしい商品が「いま何個売れていて、いくらなのか」をリアルタイムに楽しんだり、サイトを覗きながら買うタイミングを計れるといったエンターテインメント性も魅力のひとつだ。また同社では、ギャザリングの開催期間を1週間と定め、毎週約700に厳選した旬の商品の販売を行っている。つまり、買いたくなる欲求、お客様の「バイイングパワー」を高めることに注力していると言える。こうした取り組みが、Webサイトへの集客につながっているのである。2004年1月のデータでは、同社のサービスを利用するお客様のリピート率は50%と高い数値を示している。
 ちなみに、携帯電話などのモバイル端末上でのギャザリングサービス「ちびギャザ」の利用者は、20~30代の女性が7割を占め、10~50回というリピーターも年々増えている。同社が提供する商品は、時計、香水、アクセサリー、美容関連商品、バッグをはじめとする各種ブランド品のほか、ワイン・清酒など、嗜好性の高いアイテムも好評を得ている。
 「ちびギャザ」は、2000年9月にiモード上でのサービスを開始。翌2001年7月には、EZWeb、Vodafone live!と合わせて全3キャリアに対応し、現在ではすべてのモバイルキャリアにおける公式サイトとして展開。モバイル単体の総合物販サイトとしては、業界トップクラスの売上実績を記録している。

年間のユーザー数は80万人超、提携媒体数は100以上

 現在、同社のギャザリングに参加するユーザー数は年間80万人を超えている。これだけのユーザー数を確保するためには、Webサイトや携帯電話などのモバイルサイトへの集客が欠かせない。その窓口として機能しているのが、雑誌・メールマガジン・ラジオなどの提携媒体である。
 提携媒体経由によるWebサイトやモバイルサイトへの集客を始めた経緯について、同社執行役員社長室長の伊藤直氏は、「雑誌の中で、最新の商品を紹介するページはあったわけですが、購読者のフラストレーションとして、良い商品、欲しい商品を見つけても、その場では購入できないということがありました。雑誌にその商品を取り扱っているリアル店舗の電話番号が載っていれば良いほうだったのです。しかし、ショッピングというのは“ほしい”と思った時にすぐに購入したいものです。そこで、出版社とわれわれが組むことで、そこに掲載されている商品を専用のモバイルサイト上で、24時間買っていただけるようなサービスを提供しようと考えました」と説明する。
 2001年11月の開始以来、同社では、自社のWebサイト上での展開と合わせて、これら各種提携媒体とのアライアンスを積極的に推進。雑誌では、(株)角川書店、(株)リクルート、(株)主婦の友社といった情報誌を手掛けている出版社などと提携している。例えば、角川書店が発行している『TokyoWalker』などの「Walkerシリーズ」では10~20代の男女向けに、『ChouChou』では女性向けにといったように、各雑誌媒体の読者属性に合わせた提携媒体ごとのWebサイトを作って、同社のギャザリング・コンテンツを提供。そのほか、Web媒体では(株)サイバーエージェントのHTMLメール「MailVision」など約40のメディアと提携している。さらに、モバイルメディアは、「The News」「産経新聞」など10媒体。ラジオでは(株)ニッポン放送などと提携し、モバイルギャザリングを展開している。そのほか、(株)ロッテリアと提携して、ロッテリアの店舗で使用するトレーマットに商品を紹介することで、サイトへの集客促進を図っている。現在、その数は100媒体以上に上る。売上高で見ると、自社サイト分は60%、提携媒体分は40%に達しており、各媒体との提携を始めたことで66%の売上高アップにつながっていると言う。

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(提携媒体のひとつ「R25」専用の「R25ギャザリング」サイト。このように媒体ごとの読者層に合わせたトップページを作ることで、集客につなげている

新たな提携先として東急電鉄と提携し「トレイン・ギャザリング」を実験中

 Webサイトへの集客方法として、媒体との提携をスタートする以前は、インターネットを活用したターゲティング・メールやテキスト広告などを利用していた。伊藤氏は、「初期認知としては広告も大切ですが、広告宣伝費はほとんど使っていません。当社のビジネスモデルは購入者数が増えるほど商品の価格が下がる仕組みなので、お客様同士が誘い合ってサイトに来て購入するケースが多い」と、ギャザリングが大きなフックになって口コミを誘発していると分析する。現在、月間売上10億円のうち広告宣伝費は1~2%だと言う。
 現在、同社では、東京急行電鉄(株)と提携して、東急線全線において、モバイルコマース「トレイン・ギャザリング」と連動した、レべニュー・シェア型交通広告の実験を実施中だ。これは、東急の電車内に掲出される中吊り広告により、鉄道利用者を専用のモバイルコマースサイトへ誘導し、このサイトで行われたショッピングの売り上げの一定率を、広告媒体費として配分するというものだ。ポスターの掲出枚数は、1回当たり中吊り広告(ワイド)1,300カ所(各車両に1枚)。取扱品目としては、ブランド商品、ファッション、雑貨、食品などで、1回当たり35点程度の商品を揃えている。実施期間は、2005年7月8日から約3カ月間。「当社が進めている提携媒体経由の集客というところで、新たに鉄道各社と組んで交通広告を利用することができないかと思い、始めました」(伊藤氏)。同社では、常に新たな提携媒体を探し続けていると言える。
 また、ポイントサービス「とくポイント」(有効期限1年間)を提供することでリピートを誘う、循環型のコミュニケーションを構築し、サイトへの集客を図っている。
 お客様が増えるほど嗜好が多様化し、品揃えも希薄化しがちになるが、同社では、お客様一人ひとりに合わせた商品の提案ができるようなシステム作りに注力している。「男性客が増えてくれば、トップページに女性ものばかり置いていてもフックになりません。ところが男性ものを置いておくと、女性客にはメリットがなくなってしまう。そこのジレンマを克服することができるのがeコマースの特徴だと思うのです」(伊藤氏)。
 今後も、同社ではeコマースの強みを徹底的に掘り下げて、サイトへの集客に結び付ける仕組み作りを推進していく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年9月号の記事