都市銀行で初めてキャッシュカードにクレジットカード、そして電子マネーの機能を加えた多機能ICカード「スーパーICカード『東京三菱-VISA』」の取り扱いを開始した(株)東京三菱銀行。IC技術と手のひら静脈認証を導入して安全性を高めると同時に、顧客の利便性向上に努め、リテール業務の拡大を図っている。2005年4月には、カードのラインナップを拡充。本格的なサービス展開へと乗り出した。
かつてない使いやすさを追求した「スーパーICカード『東京三菱-VISA』」
(株)東京三菱銀行では、2004年10月、都市銀行(以下、都銀)初のキャッシュカードとクレジットカード、そして電子マネーの機能を搭載した多機能ICカード「スーパーICカード『東京三菱-VISA』」の取り扱いを開始した。
当初は年会費1万500円(税込み)のゴールドプレミアムの取り扱いを開始したが、認知度が高まった12月ごろから申込件数が急増。1日に1,000枚を超える申し込みが寄せられるほど好評を博した。これを受けて、2005年4月からは、年会費無料の一般カードとキャッシュカードと電子マネーに機能を絞ったICキャッシュカード(2,100円税込み、有効期間5年)をラインナップに加え、本格的なサービス提供を開始している。
同行が都銀初のスーパーICカードを開発した背景には、顧客の利便性を高めるという狙いがあった。従来、機能ごとに分かれていたクレジットカード、キャッシュカードを1枚にまとめ、さらに電子マネー機能も加えることで、現金の出し入れからレストランやコンビニなどでの決済まで、スーパーICカード1枚でできるという、かつてない使いやすさを追求したのである。
年会費無料の一般カード(上)と、ICキャッシュカード(下)
使いやすさの追求が高セキュリティへのニーズを満たす結果に
一方、多機能になればなるほど懸念されるのが、セキュリティである。例えば、レストランなどでクレジットカードを利用する場合、クレジットカードは顧客の手元から離れる。また、顧客が紛失する可能性もある。利便性を追求する一方で、こうした場合でも悪意の第3者に預金を引き出されたり、カードを不正に利用されたりする心配のない、厳重なセキュリティを確保することが多機能カードの実現には不可欠だった。
そこで、着目したのがICカードである。ICカードは、磁気ストライプに比べて多くの情報を記録でき、かつ偽造しにくいという特徴を持つ。高セキュリティと多機能の双方を実現するのはICカードしかなかったとも言えよう。
本人確認には、暗証番号に加えて手のひら静脈による認証を導入した。個人情報保護の重要性に鑑み、手のひら静脈パターンデータはICチップ内に登録し、同行ではデータを持たない仕組みになっている。
現在の技術では、ICチップ内の生体認証データを読み取り、これを偽造・変造することは極めて困難であるとされている。同行では、これまでも盗難・偽造カードによる被害防止に努めてきたが、顧客の利便性を追求したことが、結果的に、磁気ストライプのスキミング被害の増加や、カードの偽造・変造手口の巧妙化に対応したかたちになったと言えよう。
こうして開発された「スーパーICカード『東京三菱-VISA』」のコンセプトは、セキュリティ、コンビニエンス、プレミアムサービスである。厳重なセキュリティに加えて、偽造・盗難・変造によるキャッシュカードや通帳の不正利用時の預金被害に対して補償を付与し(手のひら静脈の登録必須。ゴールドプレミアムの場合、最高1億円、一般カードの場合、最高500万円)、キャッシュカード、クレジットカード、電子マネーをひとつにしてスマートなマネーライフを演出。さらに円・外貨定期金利優遇、旅行傷害保険、会員誌、ETCカード無料発行、健康相談サービスなどといったさまざまな付帯サービスを提供している(一部ゴールドプレミアムのみ)。
優れた利便性と強い安心感でサービスの付加価値を高め、数ある銀行の中から同行を選択してもらうことから、CRMがはじまるのである。
窓口で手のひら静脈パターンを登録している様子。この登録は任意のため、登録しなくても利用することができる(写真左)/スーパーICカード対応のATM。右側に備え付けられているリーダーで静脈パターンを読み取って、本人であることを確認する(写真右)
プレミアムサービスと安心感で顧客の心をつかみさらなる利用促進に努める
同行では、スーパーICカードをリテール業務拡大のための中核商品と位置付け、全店舗で積極的に取り扱っている。PRには、店頭や新聞、テレビなどを活用。冒頭でも触れたが、顧客の反応は上々で、現在も多くの問い合わせや申し込みが寄せられており、手応えを感じているという。
手のひら静脈による本人確認を行うには、あらかじめ手のひら静脈パターンデータを登録する必要がある。登録方法は、申込後に送付されるスーパーICカードと運転免許証やパスポートなど本人であることを確認できる資料と届出印、通帳、旧キャッシュカードを持って窓口へ行き、読取機に手のひらをかざすだけと至って簡単だ。その後は、通常のキャッシュカード、クレジットカード、電子マネーと同様に利用できる。
現在、スーパーICカード対応ATMは、有人店舗には2台以上、店舗外ATMは全台設置済み。着実に利用環境を整えている。これまで大きなトラブルはなく、同行では、真の意味で実用化ができたと自負しているという。
同行では、年間の目標発行枚数は100万枚と大きな数字を掲げているが、インフラの整備が進んだこと、そしてこの4月からカードのラインナップが充実したこともあり、実現可能と見ている。
今後は、より一層プレミアムサービスを充実させてお得感を醸成させる計画。さらに、最新の技術により実現した高いセキュリティがもたらす安心感との相乗効果で、スーパーICカードの利用をさらに拡大し、既存顧客の活性化、新規顧客獲得、預金残高増、手数料収入増などにつなげていきたいとしている。他行に比べて何歩も先を行っているうちに、顧客のハートをしっかりつかみたい考えだ。