食品メーカーは、すべての人々がターゲット。そこでTVCMやキャンペーンなどを通して製品の認知度を高め、幅広い支持を獲得することが重要である。店頭で「○○はないか」とお客様に指名される商品になれば、取り扱う販売代理店も増え、売り上げアップや、販売チャネルとの良好な関係作りが実現できるのだ。
「生茶」「午後の紅茶」などでお馴染みの清涼飲料メーカー、キリンビバレッジ(株)。2002年6月より、冷菓の製造・販売にも乗り出した。その第1弾が、人気ブランド「トロピカーナ」シリーズの1商品として発売した「ソルべ」である。これは、仏語で「果汁のシャーベット」の意。「トロピカーナ」は、フルーツの旨みをギュッと凝縮した濃厚なジューシーさが人気のジュースブランド。この魅力を最大限に活かせるアイスクリーム仕立ての商品開発に2年がかりで取り組み、スプーンを入れた時のクリーミーさ、口に入れた時の繊細で滑らかな食感、従来にない新しい味わいを楽しめるプレミアム志向のシャーベットが誕生した。
商品自体は自信作だったが、食品市場へは初参入のため、まずは関東1都8県で限定発売。認知度を高める方法として、TVCMを流すだけでなく、サンプリングも実施した。メインターゲットの若い女性を魅了するには、実際に食べてもらうのが一番であると考えたからだ。しかし、通常のサンプリングでは参加人数や顧客情報の収集に限界があった。そこで2003年5月、3週間にわたり、am/pmとタイアップして、インターネットによる「ソルベ」のサンプル・プレゼント・キャンペーンを実施。Webサイトに若い女性向けの愛らしい新商品紹介&応募画面を作り、オンライン応募者の中から当選者にハガキを郵送。これをam/pmの店頭に持参した人にソルベを進呈した。
狙い通り、日常PCを使う10代後半~30歳の女性を中心に10万人以上がキャンペーンに応募した。この期間、am/pmでは、ソルベが定番のハーゲンダッツを大きく上回る売り上げを記録。来店と付加購入の促進も図れた。同社にとっては、低コストで冷菓への関心の高い層にサンプリングが行えた上、リピーターの誘引にもつながり、双方にメリットがあった。奇しくも10年ぶりの冷夏に見舞われ、売上目標は達成できなかったが、キャンペーンを通して集めた見込客情報は貴重なデータ。eメールで新製品やイベントの案内を継続的に送るなど、次の展開に活用している。2004年は新たな顧客層の開拓に向け、別戦略を模索中。
冬場の売り上げを伸ばす試みとしては、 2003年12月に、キャップの上に景品を付けて、クリスマスまでの3週間、キャンペーンを実施した。販売店の要望を反映させ、オリジナル性、タイアップ性を重視。サークルKでは若い女性向けにクリスマスグッズをかたどったキャンドルを、ファミリーマートでは老若男女を対象に年末年始に家族で遊べるトランプなどのミニおもちゃを載せて販売した。同キャンペーンは、特定の流通チェーン店でしか買えない点が話題を呼んだ。キャンペーン期間中は取り扱い店舗も大幅に増え、販売数量と配荷率の双方を高める結果となった。
量販店では、ポスターでキャンペーンを予告し、来店を促進。期間中、マネキン販売で、クジを引いた人にその場で景品を渡した。当選者には同社のオリジナルグッズを、外れた人には折畳み式買い物袋を進呈し、お客様が手ぶらで帰らないよう工夫した。
こうした努力の甲斐あって、ソルベの2003年の販売実績は213万6,000個。今後、関東での基盤が固まれば、全国展開や買い物券プレゼント企画の導入も検討していく。2004年の目標は247万2,000個(前年比16%増)。5月にはラインナップが増える予定だ。
パーソナルな買い物客にはコンビニ、ファミリーの買い物客には量販店と、顧客層に合わせてキャンペーン方法を変えるが、いずれもトロピカーナのブランド力を強化し、いかにお客様にファンを増やすかが販売店活性化のカギだという。4月には、キリングループ各社の商品開発部門が横浜の「キリン テクノビレッジ」に集結。今後、販売店対策の連携もありそうだ。