ネットショッピングは企業とお客様の双方にとってメリット大

(株)ファンケル

(株)ファンケルのネットショッピングは、売上高が2001年210%、2002年173%,2003年150%と急拡大している。それは、お客様にとっても同社にとっても、時間と手間とコストを軽減できるメリットが大きいからだ。また、eメールやメールマガジンもフル活用。その効果を最大限に高める取り組みをレポートする。

eメールをダイレクトマーケティングのメディアとして有効活用

 1980年の創業以来、「安全、安心、優しさ」を基本精神に、無添加化粧品や健康食品の通信販売会社として、ユーザーから厚い信頼を得ている(株)ファンケル。現在、通信販売、133の直営店舗での販売、コンビニエンスストアやスーパーマーケットへの卸売に加え、1997年8月からスタートしたネットショッピングを含む、4つの販売チャネルを有効に活用。主力の通信販売では、化粧品の情報誌「ESPOIR」と健康食品の情報誌「元気生活」の2種類を毎月発行している。
 同社の2003年3月期決算では、総売上高900億2,500万円のうち、通信販売が593億3,300万円。これを受注チャネル別に見ると、電話50%、ハガキ18%、Webサイト・eメール18%、FAX・テレメート(音声自動認識)14%の順。Webサイト・eメールによる受注は約63億円で、前年比150%の伸びだ。これを商品別に見ると、化粧品が44%、健康食品が36%となっている。2001年には、化粧品・健康食品部門のネットショッピングで売上高日本一をマーク。2005年の売上目標を100億円に据えている。
 このように、インターネットの利用が日の出の勢いで伸びている理由を、インターネット推進部長の阿野純一氏は、次のように分析する。
 まずは、欲しい商品や情報がすぐに見つかるように、Webサイトを、化粧品をテーマにした「Beauty web」や、健康食品をテーマにした「Healthy web」など、6つのジャンルに分けていること。在庫状況や含有成分もリアルタイムで確認でき、キーワード・商品番号・目的・キャンペーン・新商品などさまざまな切り口から商品や情報を検索する機能も設けている。
 次に、 365日24時間いつでも申し込めるところ。 実際、ネットショッピング利用者の36%が夜21時以降に申し込んでいる。次に多いのが昼の13時頃。OLが昼休みを利用して、携帯電話から申し込めるところが人気を呼んでいるそうだ。
 さらに、同社には購入金額の5%をポイントとしてお客様に還元し、500ポイント以上貯まると、次回の買い物から1ポイント当たり1円ずつ割り引きを受けられる制度がある。これがネットショッピングでは、直営店に買いに行ったり、電話やFAX、ハガキで注文するよりも、少しお得な6%が還元される。
 また、イーバンク銀行に口座を開設しておけば(無料)、代金の支払いの際に、銀行や郵便局に行く時間や手間を省け、口座維持手数料や送金手数料を負担することもなく、自宅で空き時間を使って簡単に振り込むことができる。しかも電子記録が残るので、振込用紙の控えを保管する必要もなく、紛失リスクもない。
 ネットショッピングを利用すると、通販にありがちな注文商品の数、サイズ、色、商品番号の聞き間違え、書き間違え、読み間違えを防げる。その上、商品に対する問い合わせや、意見、苦情など、言いたいことや聞きたいことをいつでもeメールで送受信できるので、時間的な拘束を受けずに済む。
 2000年からは、Webサイト上で会員登録した人に毎月2回、メールマガジンの配信を始めた。現在の登録会員数は50万人。入会費・講読料は無料だ。コンテンツは、ポイント2倍商品や新規発売商品、ネット申込者限定商品や、キャンペーンやプレゼント商品の案内、紹介者と紹介された人双方にお得な友達紹介特典など。お客様にとってメリットがあるだけでなく、同社にとっても、ブランド・イメージの定着、商品特性の詳説、リピーターの増強、新規顧客・見込客の獲得などに役立っている。

行動特性・嗜好性に合わせてお客様を4グループに分類

 阿野氏は、メールマガジンの効用と活用法を次のように語る。無料会員登録を通してお客様の個人データを獲得。購買履歴、メールマガジンの開示率、コンテンツごとのクリック数などからお客様の行動特性・嗜好性を知ることもできる。住所から最寄りの店舗も分かるので、どのお客様にどんなメールマガジンや店舗情報・販促eメールを送るのが最適かが明確に分かり、サービス向上につなげやすい。
 メールマガジンの制作は、eメール・マーケティングの専門会社に委託。毎月中旬には、お買い得商品の説明や新店舗の紹介などのtextメールと、お客様の希望に応じて商品をビジュアル表示したHTMLメールを配信。月末には月刊情報誌が宅配された直後を見計らって、トピックスをtextメールで配信し、新商品やイベント・キャンペーンの紹介、店舗への集客や通販の販促を図っている。
 コンテンツは、「ESPOIR」を講読している化粧品購入者、「元気生活」を講読している健康食品購入者、両誌を送っている多品種高額購入者、ネットショッピングだけの利用者の4グループに顧客を分類して制作。欲しい人に欲しい情報が届くように工夫している。なお、同社では、携帯電話用にメールマガジンのダイジェスト版も配信。こちらの制作は、インターネット推進部が担当している。
 3割を超えるメールマガジンの高開示率を達成している秘訣を阿野氏に聞いたところ、①お客様の興味を引くタイトルを付ける、②タイトルに漢字を4文字以上盛り込まない、③英語やカタカナの多用を控え、ひらがなをベースに平易な言葉で表現する、④トップに一番伝えたい情報をもってくる、⑤全体の分量は多くても2~3ページに留める、⑥ひとつの商品説明文は長くても5行以内に留めるなどを列挙。要するに、お客様が負担に感じない頻度で送り、飽きずに一気に読め、端的に分かるように制作し、連載モノやネット限定のキャンペーン商品の告知など、継続講読したいと思わせる内容を盛り込むことが、メールマガジンの講読率・開示率を高める秘訣と言えよう。
 このほかアンケート調査については、特定のお客様に何度も協力を仰いで不評を買わないように、購買履歴やメールマガジンの開示率、クリック画面、アンケート回答履歴などから対象を5,000件に絞って配信。1週間で30%のレスポンスを獲得した実績を持つ。紙媒体のアンケート調査なら、回収までに1カ月以上要するのが普通。郵送料や印刷代もかかる。それに比べ、低コストでスピーディーに多くの回答を回収できるeメールは、情報収集に最適なツールと言える。
 ネットショッピングは、1件当たりの受注コストが電話やハガキの5分の1で済み、営業時間外も受注できるなど、メリットが大きい。そこで同社では、今後さらに利用率を高めていく方針。そのためにはまず、セキュリティ管理の徹底が大切だ。また、コンビニエンスストアやスーパーマーケットを通して同社の商品を購入したお客様の購買履歴や、直営店舗の昔からのお得意様のeメールアドレスなど、未整備の顧客情報を収集することも重要である。顧客データベースにより多くのお客様のeメールアドレスを入力し、これをOne to Oneコミュニケーション・ツールとして有効活用することが、お客様への最新情報の提供や、サービスの拡充につながる。
 一方、eメールでの問い合わせが増えれば、迅速に回答する体制の整備も課題になる。現在、eメールによる問い合わせには、インターネット相談室で対応。KANAのeメール自動仕分けシステムにより、用件別に担当オペレーターにeメールを転送。ひとつのeメールに複数の質問がある場合、関係セクションを経由するようにセッティングし、担当者のチェック待ちでレスポンスに時間がかかっているeメールは赤色に変わり、警告が発せられる仕組みになっている。
 こうしてeメール・マーケティングの両輪である配信と受信体制を整備し、効果の最大化を図っている。


月刊『アイ・エム・プレス』2004年3月号の記事