商品、顧客リスト、オファー 3つのポイントが成果を決める

(株)オークローンマーケティング

綿密なプログラムのもと、アウトバウンド・コールで積極的なプロモーション活動を推し進めるオークローンマーケティング。高い受注率を誇る同社のワークフローの一端と成功の秘訣を紹介する。

綿密に設計されたアウトバウンド・プログラム

 地上波、CS局、ケーブルテレビ局などで24時間365日、テレビショッピング番組「ショップジャパン」を放映する一方、会員組織「ショップジャパンクラブ」を組織してカタログ通販も展開する(株)オークローンマーケティング。同社は現在、インバウンド110席、アウトバウンド300席、計410席のコールセンターを保有している。テレビショッピングの受注をはじめとする自社業務のみならず、他社からの受託業務も担っており、総コール数の3分の1が前者、残りの3分の2が後者となっている。
 ここでは、同社が自社業務として行う、アウトバウンドにフォーカスしてみよう。
 まず、テレビショッピング利用客に関するコールについては、専用ダイヤルを使うと割引価格で購入できる「ショップジャパンクラブ」(会員数13万人/年会費3,500円)会員向けと、非会員向けの2種類がある。会員向けのコールは年1回。会員契約が切れる時期に、「契約を更新しませんか」という誘いの電話をかける。
 また、非会員向けには、以下の3つのケースがある。同社には月間3万~5万件の注文が入るが、①受注してから30日以内に、「お買い上げいただいてありがとうございます」というウェルカムコールを行い、同時にテレビショッピングの売れ筋商品トップ5を紹介する。この際には、必ずテレビで紹介した価格からさらにディスカウントした価格を案内する。②次に、受注後90~120日以内に、保険商品を含む、同社の取扱商品やサービスを案内するコールを行う。③120日以降は「スペシャル・オファー」に入る。顧客の購買履歴を分析した上でクリーニング商品、フィットネス商品、ダイエット商品などの中から的確な商品を特別価格で案内する。
 さらに、ダイエット食品の会員制クラブ「ファターシェ・クラブ」では、ショップジャパンで商品紹介を行って顧客を開拓。まず受注時に「ダイエット食品専用の会に入会なさいませんか」と勧誘し、その後、非会員には購入から30日経過後に再度コールし、入会を促す。会員に対しては、商品購入から90日経過した後、別商品を案内するコールを行い販売促進につなげていく。
 また、「この商品を紹介する番組はいつ放映されるのか」との問い合わせをインバウンドで受けた場合には、紹介した番組が終了した後に「ご覧いただけましたか」と尋ねる。
 以上、アウトバウンドの概要を説明したが、コンタクトジャパン事業部の取締役事業本部長 ハリー A. ヒル氏によると、コールは顧客ひとり当たり年に4回までが原則という。あまり頻繁にかけると、顧客の気持ちを害する恐れがあるためだ。

受注率10%を記録 アウトを支えるキーポイント

 同社のアウトバウンド・コールの受注率は4%から、高い時には10%前後に跳ね上がることもある。成功例としては、スチームだけで汚れを落とす「スチームバギー」が挙げられ、受注率は8%に達した。同社の高い受注率を支えているものは、いったい何なのだろうか。

●アウトの命は商品、リスト、オファー
 まず、「アウトバウンドを成功させるには、①商品、②顧客リスト、③オファーが大切。最後がコミュニケータの資質」とヒル氏は指摘する。顧客の反応がにぶく売り上げが上がらない場合、マネジャーは常にこの3つに誤りがないかをチェックする。すなわち、顧客のニーズに合った的確な商品か、また、その商品を紹介するのにふさわしい顧客リストが使用されているか、また、価格は適切か、という点だ。
 同社ではアウトバウンドにおいては定価での販売は行わない。必ずディスカウントした上でプロモーションをかけるが、定価1万円の商品を8,000円で提示して顧客の反応がにぶい場合には、7,500円の提示を検討。一部のコミュニケータがテスト的に7,500円のプロモーションをかけ、成功すればその価格での販売に踏み切る。それでもダメな場合には、上記3つのポイントを、もう一度検討し直す。
 価格の決定権を現場が持っているのも同社の大きな特徴だろう。もちろん、カタログ表示価格との兼ね合いもあるため、他部署に相談が必要なケースもあるが、ほとんどの場合、現場の様子を見ながら即座に対応できる体制にある。

●業務内容を超えた横の連携を保つ
 次に、「アウトバウンドの成功は、アウト、イン、カスタマーサポートの3つの業務をライン化し、相互に協力し合う体制を整えること」、と同事業部 アウトバウンド第1チーム チームリーダーの稲垣昇司氏は言う。問い合わせを入れた顧客に、番組を見たかどうかを尋ねるアウトバウンドを行う例を先に挙げたが、こうした業務を行えるのも、3つの業務を独立した組織ととらえず、連携プレーを行う体制が築かれているためだ。

●コミュニケータに対し明確に目標を提示
 もちろん、コミュニケータのスキルもアウトバウンド成功の大きなカギとなる。
 同社では、「いらない」と言われることを大前提としてスクリプトを作成する。商品説明も大切だが、その後の応酬話法や、顧客の質問にいかに回答するかを重要視しているのだ。このため、新しいプロモーションに入る際の事前研修では、ロールプレイングを含めた模擬訓練を徹底的に行う。
 コミュニケータのモチベーションについては、「最初の教育で、アウトバウンドの業務内容と目的を明確にすることがポイントになる。成果が上がればこの業務が好きになるので、モチベーションの向上はそれほど難しくない」(同事業部 アウトバウンド第2チーム チームリーダー 青島三枝氏)。インセンティブ・キャンペーンや、チームごとのイベントも行う。アウトバウンドはとかく個人プレーと考えられがちだが、プロモーションを“チーム全体”で成功させる姿勢を打ち出す。
 また、コミュニケータ一人ひとりに目標を設定する。労働時間に見合った売り上げ、それを達成するための応答時間や後処理時間など細部にわたって指示を出す。売り上げが伸び悩んだときには、スーパーバイザー(SV)によるカウンセリングやコーチングを行う。現在、SVひとりに対して2人のリードコミュニケータが付き、各リードコミュニケータのもとで10名のコミュニケータが働く体制。「試行錯誤があったが今はこの体制がベストと考えている」(稲垣氏)。
 アウトバウンドは顧客の反応を見ながらリアルタイムに対応することが可能である。その分、その商品が売れるかどうかの見極めや、テストから実施までのスピードも要求される。この辺りの迅速な対応には、まだ課題が残されているとヒル氏は話している。


月刊『アイ・エム・プレス』2003年2月号の記事