“分かりやすさ”ゆえのセルフサービス

日本電気(株)

「121コンタクトセンター」を開設

 常に日本のパソコン業界をリードしているNECは、2001年10月、これまで全国14カ所に点在していたコールセンターを、東京、大阪、沖縄の3カ所に集約。きめ細かなCRMを実現する総合顧客相談窓口「121(ワン・トゥ・ワン)コンタクトセンター」(以下121CC)を開設した。
 121CC開設の大きな目的のひとつが、顧客データベースに基づくCRMの実践による顧客満足度の向上だ。同社ではこれまでも「パソコンインフォメーションセンター」という顧客相談窓口を運営してきたが、従来は顧客データベースが相談窓口ごとに異なり、アクセスしてきた顧客が対応オペレータが替わる度に、これまでの経緯をいちいち説明せざるを得なかった。しかし121CCでは、顧客の過去のコンタクト・質問等を全窓口共通のデータベースに蓄積することで、どのオペレータでも顧客との会話の経緯を把握することができ、顧客にストレスを感じさせない対応が可能になった。顧客からのコールはIVRの利用により、担当窓口に直接つながる仕組みになっている。また、専門性の高い質問などで、初めに出たオペレータが的確な対応をできない場合、即座に専門のオペレータに電話を転送することもできる。
 稼動は24時間365日。平日、土日の9時から17時は無償、17時から翌日9時までと祝日はダイヤルQ2および同社独自の有償チケット制度などを使った有償での対応となっている。オペレータは3拠点合計で550名。うち450名が電話での対応を行い、残り100名が後方支援に回っている。席数は400。回線数は公表されていない。
 同センターへの月間アクセス数はおよそ15万件。多い時で1日に6,000件のコールがあるという。

自己解決の促進に注力

 コールセンターの充実を図る一方で同社は、顧客の自己解決の促進にも力を入れている。顧客にとっての最大のポイントは、問題をいかにスムーズに解決できるかであり、疑問点が自分だけで解消できるのであれば、それが最良であるとの考えからだ。
 この具体的な取り組みとして同社は、製品販売時に紙媒体のマニュアル「困った時のQ&A」を添付している。これには、「パソコンが起動しない」「フリーズしてしまった」といった代表的なトラブルの対処法が記載されている。さらに、紙媒体マニュアル以外にも電子マニュアル「ぱそガイド」を出荷時にパソコンにプリ・インストール。分かりやすくカテゴライズされたQ&Aをオフ・ラインで確認することができる。またこの中には、「文字だけではよく分からない」という顧客のために「自動操作説明集」という項目が用意されている。これは、この中の実行してみたい項目、例えば、「壁紙を変える」などを選んで、自動操作ボタンを押すと、自動的に設定が完了するというもので、初心者には嬉しい機能だ。
 「ぱそガイド」でも解決できないトラブルはWebを使った確認に進むことになるが、これには2通りの方法がある。ひとつ目は「ぱそガイド」の中の“最新の情報”ボタンを押すことで、パソコンがインターネットに接続され、同社サーバーが自動的にその機種やプリ・インストール・アプリケーションを検索し、それらに最適な情報が送信されるというもの。もうひとつが顧客向けサイト「121ware.com」の「レスキュー」への接続である。

ぱそガイド ぱそガイド_#EA6B

「ぱそガイド」画面

顧客向けサイト「121ware.com」

 「121ware.com」は2000年7月に開設された個人向けコミュニケーションサイトであり、121CCとも連携している。
 「レスキュー」はこの中のサポート・ページ。パソコン初心者にも分かりやすいように、ステップを踏んでトラブルが解決できる仕組みが設けられている。ステップ1では、・パソコンが動かない ・エラーが表示される といった「よくあるお問い合わせ」からその解決法を導くことができる。ステップ2は、ステップ1で解決しない場合の解決方法、ステップ3は、それでも解決しない場合の解決方法が続く。また、上級ユーザー用に、疑問点を自分で記入して検索する欄も設けられている。「レスキュー」へのアクセス数は月間およそ30万件に及ぶ。
 「レスキュー」で解決できない場合には、eメールで質問を送付(有償)したり、121CCに直接電話をかけることになる。この際、キーになるのが、トラブルごとに振られた4ケタの番号である。同社では、eメールや電話経由の質問でも、前出の「困った時のQ&A」、「ぱそガイド」に記載済みのものに関しては、このトラブルの番号を顧客に通知することで、極力自己解決に誘導するようにしている。これは実際の画面が見えない状態で電話で会話をするよりも、顧客が解決法とパソコンの画面を見比べながら解決した方が効率的であるという判断による。専門用語が分からない初心者との会話はかつて最長2時間を要したケースもあるというが、自己解決の推進を開始してからは平均で10分に短縮された。

「レスキュー」

レスキュー」トップページ

人的サービスもさらに充実

 同社ではこの2月より、「121ware.com」内の「@store」において「121コンタクトセンター有償チケット」(5枚、1万円)の販売を開始した。このチケットは1枚で、1件のトラブルが完全に解決するまで使用することができる。さらに今秋の開始をめどに、問い合わせ・受付窓口の一元化を検討。これは、これまで別々であった問い合わせや修理の窓口、またパソコンとそれ以外の機器に関する窓口番号の一元化を進めている。これにより、顧客はどんなときでも取りあえずひとつの番号に電話をかけることで事態を収拾することができるようになる。
 これらのサービスはセルフではなく、オペレータの対応を念頭に計画が進められている。
 以上のように、同社は、セルフサービスに注力しつつもバックの人的サービスにも万全をきたしており、「121コンタクトセンター」、「121ware.com」を中心としたサービス・サポートはますます躍進しそうだ。

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月刊『アイ・エム・プレス』2002年5月号の記事