ユーザー同士がリアルタイムでコミュニケーション People Space

(株)ピープル・ワールド

パソコン通信、インターネットに続く第三の事業として

 パソコン通信「People」の(株)ピープル・ワールドは、1994 年 7 月のスタート当初から、日本初の GUI(Graphical User Interface)の採用による豊富な画像情報の提供、また、インターネット接続を見込んだシステムを導入するなど、マルチメディア時代の到来を睨んだネットワークの構築を推進してきた。その同社が今、「People」、インターネット接続サービスに次ぐ第三の柱として力を入れているのが、3 次元仮想空間「People Space」である。

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本格的なスタートから約 3 カ月。 今後ますますコンテンツが充実する予定の「PeopleSpace」

 1996 年 10 月に 3 次元空間を落としこんだ CD-ROM の「Ver.1」を、1997 年 4 月には「Ver.2」をリリース。CD-ROM はコンピュータ関連のイベント会場で来場者に手渡したり、パソコン雑誌や同社の株主でもある日本アイ・ビー・エム(株)のパソコンなどに添付、また、「People」会員にダイレクトメールを送り、CD-ROM の請求を促進するなどの方法で、1 号当たり約 100 万枚を配布している。「Ver.2」からは利用に際して 1 日 200 円の“入場料”を設定、本格的な事業として新たなスタートをきった。「People」 120 分と「People Space」10 日で 1,000 円、同じく360 分と 30 日で 2,800 円のおトクなコースもある。CD-ROM は Windows95 専用版だ。
 「People Space」には精巧な 3 次元画像で作られたいつくもの島があり、風景、街並み、行われているイベント内容などは「ほとんど毎日のように」(営業推進担当部長 内田洋輔氏)変化している。CD-ROM にインターネットをプラスすることによって、この“変化”やハプニングに遭遇する楽しみを味わうことができるわけだ。
 利用者はアバター(化身)となって街を散策するのだが、オンラインで接続していると、その時、同様に「People Space」を訪れている人のアバターが見え、その場でチャットを楽しめる。アバターの後を追いかけてくるバーチャル・ペットは時とともに成長する。また「People Space」の中には会員自身が作った家が立ち並ぶ一角があり、そこではパーティや展示会など思い思いのイベントが日々、繰り広げられている。

デジタル・メディアならではのパーソナルな広告展開

 

「People Space」は企業の広告媒体としても利用価値が高い。看板からホームページにジャンプする仕掛けはもちろん、たとえば一定の動きを繰り返す “ファントム”を“歩く広告塔”として活用することによって、「People Space」を訪れる多くのユーザーにプロモーションを図ることができる。商品・サービスに関心を持った人とより深いコミュニケーションがとれるように、たとえばファントムをクリックすると懸賞付きのアンケートのホームページ画面が現れるといった仕掛けを用意することもできる。またある企業では、訪れた人とリアルタイムでパーソナルなコミュニケーションが行えるように、「People Space」上に設置したショールームに、販売員のアバターを配置することを検討中。現在、店舗を設けているのは 30 ~ 40 社、インターネットのホームページとリンクした看板を設置しているところを含めると 60 ~ 70 社が「People Space」に参加している。ちなみに看板設置は 10 万円からと、料金も“お手頃” だ。今後は「People Space」上で、商品・サービスの販売も行っていく予定。
 また同社では、独自のサイバースペースを構築したいという企業のために、企画や技術面でのサポートや、決済業務の代行なども行っている。

利用者同士で盛り上がる「Peoople」会議室

 現在、1 日約 500 人がインターネットにつないで「People Space」にアクセスしている。会員の男女比は約 2:8 で、年代別では 20 ~ 30 代が中心。毎週 1 回、「People Space」を利用するというのが会員の平均像だ。予想に反し、サービス有料化後にアクセス数は大きく増加。特に日中のアクセスが増えていることから、実ユーザーでは女性の割合が約 30%に上っていると同社では見ている。
 「People」には「Enjoy! People Space」という会議室があり、同社から会員に「People Space」の最新情報を届けているほか、会員同士が自由に意見交換をしている。「私のバーチャル・ペットはこんなに可愛いんです」「○○は面白いから行ってみて」など、活発な発言が交わされ、さらに「オフ会では、『あのアバターがあなただったんですか?』というところから話が広がり、ずいぶん盛り上がっているようだ」(内田氏)という。
 同社は 6 月 25 日より、インターネットの WWW ブラウザを用い、同社のホームページからパソコン通信「People」にアクセスできる「People Web サービス」をスタートさせている。パソコン通信とインターネット、またインターネット・プロバイダー間の競争が激化する中、同社はパソコン通信、インターネット双方のコンテンツの充実と、シームレスな利用環境の提供によって、独自のスタンスを確立しようとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年7月号の記事