美しい動画で日産車の魅力を伝える NISSAN CD-ROM MAGAZINE インター★ロム

日産自動車(株)

最新情報を伝えるホームページ“羅針盤”

 そもそも日産自動車(株)が CD-ROM に着目したのは、ゲームソフトを中心とした CD-ROM がパソコンショップの店頭に並びはじめた 1992 年当時に遡る。CS(顧客満足)の重要性が声高に叫ばれる中、顧客との 2WAY コミュニケーションを図るために、双方向 CATV を活用した“通信機能付き CD-ROM” の採用が検討されていたのである。

 その後数年間にパソコン、およびインターネットは一般家庭に急速な勢いで普及していった。同社では「ラシーン」の発売に合わせ、1994 年 12 月にホームページ「羅針盤」を開設。デジタル・メディアによる顧客とのコミュニケーションはまず“ネットワーク”の部分で実現することになった。「ラシーン」の紹介を目的にスタートした「羅針盤」も徐々に情報メニューを拡大、今日では同社と“日産ファン”を結ぶツールとして重要な機能を果たしている。
 「羅針盤」に掲載されている情報は企業案内、商品紹介のほか、モータースポーツやモーターショーの案内など盛り沢山。この「情報のメガショップ」(デジタルコミュニケーション事業室 副事業室長 永山辰巳氏)には、時とともにさまざまな情報が集積されていく。同社には「10 年前に発売されたブルーバードのカタログがほしい」といった要望が多くのファンから寄せられるが、ホームページは将来的に「このような声に容易に応えられる資料室の役割を果たしていくだろう」と永山氏は語る。
「羅針盤」へのアクセス数は正確にカウントされていないが、月間に数百万といったところ。1995 年 10 月からはホームページ上で希望者に「パスポート」を発行しているが、その保持者は現在、2 万数千人という。名前、住所、E-mail アドレスと、「保有している」「実物を見たい」「できれば買いたい」自動車それぞれの車種などを登録するとパスポートが発行され、クイズや占いコーナーの利用権や随時開催されるコンテストの投票権などが得られるほか、希望すれば「羅針盤」の最新情報を E-mail で送ってもらうことができる仕組みだ。さらに職業、生年月日、年収などを登録して「ゴールドパスポート」を獲得した人の中から抽選で毎月 20 人に、特製マウスパッドなどのプレゼントが当たる。
 パスポートは1年ごとに更新する仕組み。パスポート保持者は男性が約 95%、年齢では 20 ~ 30 代が約 90%を占め、居住地域では関東 1 都 6 県が 60%以上となっている。

ホームページ“羅針盤”のトップページ

ホームページ“羅針盤”のトップページ

“羅針盤”の中でも「インター★ロム」を告知している

“羅針盤”の中でも「インター★ロム」を告知している

CD-ROM で動画を提供

 インターネットの普及は猛烈なスピードで進んでいるとはいうものの、同社の中心顧客層である 30 代以上の男性が家庭で日常的にインターネットに親しんでいるかと言えば、現状はそうではない。また、自動車という商品の特性上、その魅力を知ってもらうためにはスピード感あふれる映像が不可欠。ネットワークで動画を提供するのは、現実的に不可能だ。 
 そこで同社ではインターネットへの 10 時間無料アクセス権付き CD-ROM「NISSAN CD-ROM MAGAZINE インター★ロム」を制作、1997 年 2 月に配布を開始した。コンテンツは「羅針盤」に掲載している情報のダイジェストに、映像やゲームをプラス。全国約 200 社、約 3,000 カ所の販売店の営業担当者を通じて、すでに約 7 万人の顧客・見込客に手渡した。
 「インター★ロム」の目的はあくまでも販売店の営業支援。「羅針盤」と一部コンピュータ関連の雑誌で告知を行ったほかは広告などは一切行わず、また、配布先や配布方法については各販売店に一任している。Vol.1 は各販売店に一定数ずつ割り振ったが、「インター★ロム」が確実にターゲットに届くよう、6 月中に発行予定の Vol.2 からは各販売店の希望に応じた“予約制”を採用する。
 郵便や「羅針盤」への E-mail を通じて届けられた顧客・見込客の反応は、「家のパソコンは今まであまり使っていなかったけれど、おかげ様で家族全員で楽しめました」「もっと遊びの要素が入っていると嬉しい」「これまで発売になったすべての日産車を見たい」などさまざま。同社では販売店に寄せられた情報や、販売店の営業担当者の意見なども、今後機会をとらえて収集していきたい考えだ。
 「インター★ロム」は年 4 回のペースで発行していく予定。「毎回、どれを削るか苦労している状態」(永山氏)というほど、コンテンツは豊富にある。Vol.5 が出る来春には、販促ツールとしての「効果を検証できるだろう」(永山氏)と同社では見ている。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年7月号の記事