お好みの5書体を自由にチョイス TTW フルチョイス

(株)リコー

プリペイドのフォント・セット

 フォント(書体)はクリエイティブの良し悪しを決める重要な要素。このところ他のソフト同様に、その多様化、低価格化が進んでいる。店頭のスペースには限りがある。単品ですべてのフォントを並べる余裕はないので、小売側はいきおい、1 つに何十種類もの書体を盛りこんだセット商品の品揃えを強化することになる。しかしこれを買い求めても、実際に使っているのはほんの数種類、というケースは決して少なくない。ユーザーにとっては「本当にほしいものだけでいいから、もっと安く購入したい」のが本音なのだ。
 そこで(株)リコーでは 1996 年 7 月、NTT テレマーケティング(株)の「miTa-KaTTa サービス」を活用したプリペイドのフォント・セット「TTW フルチョイス」を発売した。Windows 版と Macintosh 版の 2 種類があり、価格はいずれも 1 万 5,000 円。 CD-ROM に“鍵”をかけたフォント 72 種類が収録されており、購入者はその中から 5 種類を選択、「miTa-KaTTa センター」にアクセスして“鍵”をあける仕組みである。販売は従来通り、店舗を介して行われるので、既存流通チャネルとの軋轢が生じる心配もない。
 商品は約 10 誌のパソコン関連雑誌に出稿した広告と、「Windows World Expo/Tokyo」「Mac World Expo/Tokyo」などのコンピュータ関連のイベント会場で配布したパンフレットや、マウスパッドに記載して告知。これまで Windows 版と Macintosh 版、そ れぞれ約 4,000 本を出荷した。
 フォントの使用に際しては購入者が自らの意志で「miTa-KaTTa センター」にアクセスする必要があるため、「どのフォントが人気があるのか、手にとるようにわかる」(フォント開発センター 松里和明氏)のはもちろん、顧客データも収集できる。このインタラクティブな販売形態によって、「販売と同時にマーケティングができるのが大きなメリット」(松里氏)だ。

インターネットで安心ショッピング

 NTT テレマーケティング(株)では今年 5 月 9 日、インターネット・ショッピングをサポートする“鍵” サービス「インターネット miTa-KaTTa」をスタートさせたが、(株)リコーはその第 1 号ユーザーとなった。
 インターネットのセキュリティには未解決の問題が多い。(株)リコーが「COMDEX」の会場で来場者を対象に行ったアンケートの結果からも、「インターネット・ショッピングには興味があるが、セキュリティが不安だ」と考える人が大変多いことがわかった。

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「TTW フルチョイス」の画面。トップページには同社のキャラクター、“ティティ子ちゃん”が登場する

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イベント会場で配布するマウスパッドで、URL やサービス内容を告知

 同社では今年 4 月、同社のホームページ(http:// www.ricoh.co.jp/)上でショッピングを開始、約 100 商品を販売しているが、クレジットでの購入者に対してはセキュリティ対策としてクレジットカード番号を別途 FAX などで受け取り、人手で処理した後に商品を発送するという仕組みをとってきた。しかし今後、「商品を今すぐほしい」「すべての手続きをオンラインで済ませたい」という要望が増えていくことは間違いない。そこでセキュリティの不安がない「インターネット miTa-KaTTa」を、今回、購入・決済方法のひとつに加えたというわけだ。
 「インターネット miTa-KaTTa」を利用するには、 CD-ROM と同じく、まず会員登録を行うことが必要。購入の手順は、まず(株)リコーのサーバーからほしい商品を暗号によって“鍵”のかかった状態でダウンロード、さらに「miTa-KaTTa」のサーバーからプログラムをダウンロードして購入申込の手続きをとる。この後、今度は公衆回線で「miTa-KaTTa センター」にアクセス、決済手続きを行い、与信が済むと、センターから暗号を解く“鍵”が送られてくる仕組み。顧客は必要な情報をインターネットから気軽に入手できることに加え、個人情報は暗号化した上で公衆回線を経由して届けられるので安心して利用することができる。このサービスの告知は「TTW フルチョイス」同様、雑誌広告、イベント会場などで行った。
 「インターネット miTa-KaTTa」は顧客の手間や事務処理コスト、手続きにかかる時間の削減というメリットをもたらす。しかし同社の顧客の 60%以上は法人ユーザー。請求書がないと決済処理ができないというような場合には、既存のオンライン・ショッピングを利用してもらっている。またソフトウェアの容量によっては、インターネットでダウンロードするよりもむしろ CD-ROM を届けたほうが便利な場合もある。同社では顧客の事情や商品によって最適な方法を選べるよう、多くの選択肢を用意して顧客ニーズに応えていきたい考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年7月号の記事